The Wind of Andalucia    〜 inherit love 〜

4. 癒えない傷



帆に緩やかな風を受けて、GM号は海原を進む。
後にうっすらとみえていた、アラバスタの島影も見えなくなり、海軍の追跡を振り切った。

甲板にクルー達のぼやきが舞う中、ニコ・ロビンが姿を見せた。

クルー達の反応はそれぞれで、それがまた、とても彼ららしかった。


は、少し離れた位置から、ロビンの視界に入らぬ様に、様子を伺う。
ナミにビビにも、ラブコックぶりを発揮するのを見続けて、慣れているはずなのに、
ロビンにメロメロになり、壊れているサンジを、疎ましく思った。
疎ましく想う自分の気持ちにも、戸惑っていた。


「あらっ、そこに隠れてるのは、殿下?お久しぶりでございます」
ロビンがを目に留め、うやうやしくお辞儀をした。

「ニコ・ロビン」
”きっ!”と、きつい眼差しを投げ掛けた。

「「「「「殿下!!!!!!」」」」」
クルー達の視線はに注がれ、一斉に、驚きの声を張り上げた。

「なんだ!?お前ら、知り合いか??」
ルフィだけは、あいも変わらずきょとんして、尋ねた。

「ええ、あなた方は知らなかったの?この方はアンダルシア王国の王子、バーリー・キア・殿下よ」
クルー達のとぼけっぶりに、苦笑を交えつつ答える。

「ほぅ、どこぞのぐる眉王国のプリンスとは、えれェ違いだな」
日頃から、の言動に違うモノを感じていたゾロが、ぼそりと呟く。

「ブッ飛ばすぞ!!てめェ!!!」

「私は、もはや国を捨てた身。一人の人として生きるつもりだ。で結構」
殿下という言葉に、王宮での日々が思い出され、
口の中に、苦いものが込み上げてきて、切り捨てるように言った。

「国を捨てたって、お前……、国へ帰るつもりで、乗ってんじゃねェのか?」
ゾロに蹴りいれ5秒前のサンジの耳に、飛び込んだの口調に、ただならぬものを感じ
サンジの足はずっこけ、思わず、口を挟んだ。

「……いずれは帰るが、今はその時期では無い!」
バルドーの顔が脳裏に浮かぶが、苦味のほうが勝り、は有無を言わせぬ口調で、切り返す。

「で、二人は何で、知り合いなわけ?」
殿下と聞き、金の匂いを嗅ぎつけたのか、ナミの眼が、キラリンと眩しい光を放つ。

「光ってるナミさんも、素敵だあぁぁ〜〜〜〜」
哀しい男の性、サンジはついナミに反応して、ハートの煙をとばした。

「アホか、てめェ」
ぼそりと、ゾロは呟く。

「ナミの眼が、ベリーだぁぁぁ〜〜」
「ぎゃ〜〜〜〜〜」
と、うるさいウソップとチョッパー。

「私が10才の時、家庭教師として、雇われた女だ」
サンジのラブコックぶりに、ますます苦いものが込み上げ、吐き捨てるように、言った。

「そう、そして暗殺者としてもね」
ロビンは、にこやかに微笑んだ。

「「「「「「暗殺者!!!!」」」」」」

「ちょっと、待った!!!って事は、国では命を狙われていたって事か?」
ウソップが、長っ鼻をくいっと上げながら、聞く。

「まぁ、そう言う事ね。あっさりと、バルドーに阻止されたけど」
ロビンが、大した事でもないように、言った。

「何で、命狙われんだ???」
ルフィが、首をかしげながら、聞く。

「話せば、長くなるのだが……。私は、アンダルシア王国の第一位王位継承権を持つ身だ。
 現王ラーズグリフ王には、私より2才上のライル王子がいて、ライルを、世継ぎに
 望むライル派の重臣の一人が、暗殺を企んだと、いうところなのだが、……」
生い立ちなど説明したくないのだが、言い出したら聞かないルフィである。
は、諦めて、話し始めた。

「けんしょうって、あれか?肉が当たるやつか?」
ルフィが、変な事を呟く。

「オイ!そりゃ、懸賞!!」
と、ウソップのツッコミが入ったが、誰も聞いていない。

「ちょっと、待って!現王の子が、正統な王位継承者ではないの?」
ナミが、尋ねた。

「ああ……。複雑な話で、遡ると、前王ラーズ王には、正妻フレイヤ王妃の他に愛妾がいて、
 愛妾の子が現王ラーズグリフ王、フレイヤ王妃の子が、私の母王女なのだ。
 つまり、ライル王子は、私のイトコにあたる」
は、淡々と、感情を交えず、他人事のように説明していく。




                                     前々王
                                       |
     愛妾ーーーーーー前王ラーズーーーーーーーーフレイヤ皇太后
              |              |
   ○ーーー現王ラーズグリフ      ーーーーー○
      |                           |
     ライル(第二位王位継承権)  暗殺計画  →(第一位王位継承権)




「図解すると、こうかしら、航海士さん」
ロビンが簡単な図を書いた。

「さすが、ロビン姉さん」

「王女に王位継承権は無いので、ラーズグリフ王に王位は譲られ、
 また……ラーズグリフ王は、正統な王家の血筋では無いので、私に…廻ってきたのだ。
 ライル派の重臣と、私の重臣との間では、争いが絶えなかった」
少し言いよどみながら、説明した。

「って事は、つまりだ、のおばあさんのフレイヤさんが、を皇太子に決めたつ〜こったなっ?」
サンジが、タバコに火をつけながら言う。

「そういう事ね」
ナミは、の言葉の裏にあるものを考えていた。

「よっぽど、ばあさん、が可愛かったんだな」
ウソップが、何の気なしに言った。

「はっ!!まさか!!」
そ知らぬ方向を見ていたの肩がぴくりとあがり、瞳に影が色濃く映り
今までに、見せた事のない怒りを交え、吐き捨てるように言った。


何時、どんな時でも冷静に、一歩退いた態度を崩さなかったの仮面が崩れたことに驚き、
クルー達の視線がに集まり、どういう事なのかと、言葉を待つ。




「私は………。私は……駒の一つにしか…すぎない……」
ウソップの言葉に、強い反発を覚えた自分に驚きながら、自国での日々を思い出し
哀しげな顔で、誰とも視線を合わせず、自嘲気味に呟いた。

「もう、いい。私の話は、やめだ」
これ以上、話していたなら、泣いてしまいそうで、思い出したくなくて、
すっと、一線を引くように、身をひるがえし、は男部屋に閉じこもった。



「どういう事なのかしら?」

「まっ!いいんじゃねェのか。誰だって一つや二つ、言いたくねェ事あんだろうよ」
俺には興味がないとばかりに、ゾロは昼寝の体勢になった。

「ちょっと、あんた!!が心配じゃないの?」
”ぎろっ”と、ナミは、ゾロを睨んだ。

「あぁん、てめェが、を気にすんのは、金のせいだろうが。俺を巻き込むな!!」
昼寝体勢のまま、軽くあしらった。

「オイ!!クソはらまき!!!ナミさんになんて事、言うんだ!!」

「あぁん、ぐる眉プリンスにゃ、関係ねェだろうが!!!」

「んだと、やんのか!コラッ!!」
サンジの踵が、ゾロの頭のあった場所にめり込む。

「上等だ!!」
ゾロは、するりとかわした。

どたばたと、取っ組み合いのケンカをする二人。

「ルフィ、どう思う?」

「腹減った。肉〜〜〜〜〜〜喰いてぇ〜〜〜」

どん!がん!ごん!と、三発鉄拳を落とし、ナミは、ロビンに「どうしたらいいかしら」と、視線を投げた。



「ナミ、俺はに悪いこと言っちまったかな」
ウソップが、がっくりっと肩を落し、チョッパーに慰められている。

「あぁ、ばっちり、急所直撃だな」
何だか、むかつきが納まらないサンジが、ウソップにトドメの言葉を投げた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!ーーーーーーーー俺がーーー悪かったぁぁぁ」
走って行こうとするウソップを受けとめるルフィ。

「しっしっしっ!気にすんな!!!」
晴れやかな笑顔を見せる。

「悪ぃ、ウソップ。気にすんな」
サンジは、ちょっと、やつ当たりだったことに気がついて、謝る。

「ロビン、あなた何か知ってる?」

「ええ……」

「ナミ!詮索すんな!」
ルフィが、真剣な声で言う。逆光でナミには見えない表情。

「言いたくなりゃ、自分で言うさ。ほっといてやるのも一つの手だ」
日頃のの態度に、感ずるもののあるゾロ。

「あぁ、まだ、時期じゃねェんだろうよ。ナミさん、あいつは拗ねてるガキですから」
珍しくゾロに賛同し、ナミを気遣い、軽く、ポーカーフェイスで言いながら    
心では、ほっとく気のないサンジ。

「それもそうね」
ルフィのめったに見せない真剣な声に、はっとし、サンジの言葉に、自分自身が心の傷を
抱えていた頃の事を思い出し、ナミは笑った。

サンジの言葉の奥に、ほっとく気が、さらさら無い事にも、気付き
     まっ、サンジくんに、まかしとけば、大丈夫ね。んふふ、楽しみ。
と、一人ほくそえんだ。



離れた位置で、話を聞いていたチョッパーがサンジの袖を引いた。

「おれ…おれ……の気持ち、ちょっと、分かるよ」
哀しげな瞳の中に、昔の自分を、動物のカンで感じたチョッパー。

は……まだ、傷が癒えてないんだ。おれ、分かるんだ」
サンジなら何とかしてくれると思い、真剣な純真な瞳で、訴える。

「チョッパー、大丈夫だ。まかしとけ」
サンジはチョッパーだけに聞こえるように呟き、”にっ”と笑った。



  

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