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彼はそう言って、私の零れ落ちたそれを逆になぞる。
「やめ・・・・て・・・」
自身の自覚したくない、それに私は足を閉じようと躍起になるがベッドのスプリングに阻まれた。
その中での彼の吐息がふぅっと後れ毛を流す。
「はっ・・・・」
思わずのけぞった私の首筋に彼の唇が押し当てられる。
熱が伝わる。・・・私の。
「・・・・熱いね・・・どうして・・?」
理由なぞ言うに及ばないこと。
顔を上向きにされた私の唇に、彼の唇が重なる。
今度は、先ほどよりも深く。
口内をうごめく舌。
私を誘うような動き。
一度唇を離す彼。指が唾液に光る唇に触れる。
膝が震える。
身体を支えることが出来ない・・・・。
がくりとまるで人形が操り手をなくしたように私は腰を落とした。
「おや・・・・」
彼は驚いたように声を上げた。手が離れる。
私は声の方を向く。彼の動きがわからない。
何か、動いているようには感じられた。
ばさっと言う音がした。
なんだろうと思う間もなく、私のあごが持ち上げられる。
「唇・・・開いて・・舌をだして・・・・・・」
再度なぞる指先に恐る恐る唇を開け舌先をのぞかせると、今度は勢いよく舌に吸い付かれ、ふさがれる。
「んん・・ん・・・ん−・・・・」
繋がった隙間から唾液がこぼれるのも気にならないほどの強い絡ませに、私は我を忘れた。
もどかしげに後ろ手に結ばれたネクタイを解こうとする。
解けるなんて思っていないのは百も承知だというのに。
彼はその私の腕を優しく包む。その暖かい手に私の何かが溶けていく。
ゆっくりと細い糸を引きながら彼の唇が離れていく。
「・・は・・・ぁ・・・んん・・・」
「わかる・・?すごくいやらしい顔しているよ・・」
彼の手が私の目隠しを外す。眼に写るのは優しい瞳。
「・・やぁ・・・・・」
彼の眼の中の自分のそれに私は眼を伏せた。
逃さないというように彼は顎を自分に向けさせる。
「・・本当の・・・貴女だ・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・言いなさい・・・してほしいと・・・」
諭す様な、有無を言わさないような、そんな響きが私の中でリフレインする。
彼の指、瞳、唇。
そのすべてが自分に向かっていることに私はなぜか、わからない何かを覚える。
「・・・・・・・・・・・あ・・・」
足の間をとろりと零れ落ちるなにか・・熱い・・もの・・・
私の唇は私の意志とはまったく無関係に言葉を発しはじめる。
「・・・・も・・・・と・・・・」
「・・・何を?」
「し・・・・て・・・」
「俺に・・?」
「お・・・・願い・・」
「・・・・・」
「望むのは・・・貴女だね・・・・?・・」
こくんと頷く。
・・だめ・・・・やめて・・・・・
ふさいだ理性がもたげるものの身体は既に走り出している。
・・・・戻らなきゃ・・・・私・・・
モウモドレナイノニ・・・・・・・
彼は私を寝かせると緩やかにその唇を私の首筋へと流れるように落としていく。
先ほどとは違う、熱さが、私を燃やし始める。
その炎は、燃えさかる炎であって、とろ火のごとくあぶる炎であって。
両方で私を狂わせて行く。
乳房の裾野まで降りてきた唇が今度は頂点を目指して、何度も何度もキスを繰り返す。
あとに残るのは、熱だけの口付け。
・・触れて・・ほしい・・・
私の強烈な願いをあざ笑うかのように彼の唇は頂点を避け、また、反対側の裾野、腹部に向かって降りていく。
「や・・ぁ・・・・・」
思わずついて出る、懇願のそれでいて否定の声。
彼の唇が動きを止める。
「やめてほしい?」
彼は意味深に私に問いかけた。伏せていた眼と見上げる彼の眼が交錯する。
私は目を閉じ、首を・・・・・左右に振っていた。 |