結婚式の夜には?
りーんごーん・・・
教会に鳴り響くウェディングベル、風に舞う花吹雪、宙を飛ぶブライダルブーケ。
誰よりも輝いている本日の主役達。
「おめでとう!!」
「おめでとう!!」
招待客が口々に祝福の声をかける。
花嫁は涙ぐみ、花婿はそんな花嫁をやさしく見つめる。
幸せな時間はあっという間に過ぎて・・・

「早かったな、今日は。」
「そうね・・・」
一流ホテルのスイートルーム、友人一同からの贈り物で結婚式当日の夜ここをプレゼントされたのだ。
「なんだか・・夢みたい・・・」
大きく開いた窓から眼下に広がる夜景を眺める二人。
「夢じゃないさ・・」
俊がそっと蘭世の肩に手を回す。その手に自分の手を重ねて蘭世は幸せの真っ只中にいた。
「しっかし疲れたな・・・」
「そうよね・・・大変だったものね。」
「風呂入ってくるよ。おまえはいいのか?」
「えっ・・・ああああ・・あとで入るから・・」
「そうか・・」
バスルームに消える俊、心臓を押さえながら蘭世はうつむいたままであった。
・・・・どうしよう・・どうしよう・・・
初めての二人の夜、蘭世のかばんの中には友人一同と書かれた箱の中のベビードールが入っている。真っ白なレースで装飾が施された清純で品のあるもので、いかにも蘭世に似合うもので、それを見たとき蘭世はびっくりすると同時にうれしかった。
・・でも・・・これ・・・着るの・・?・・
「おい!」
「・ななな・・なに?真壁くん。」
「空いたぜ。」
「あ、ありがとうじゃ・・・」
蘭世は両手にそれを抱えて小走りにバスルームへ入っていった。
バスタブになみなみと湯がたたえられ、蘭世のためにかバスフォームが置いてあった。
バラの香り・・蘭世は服を脱ぐと身を沈めた・・・

・・・・どうしたもんかな・・・?・・・
バスローブ1枚の俊は考えがまとまらずにいた。
蘭世を大事に思うあまり、結局これまでキスどまりの二人である、そしてようやくこの日がやってきた。俊にしてみればどうしてよいやら見当がつかなくなっていた。
・・・ったく・・・あいつもな・・・
あの胸、細い腰、流れる黒髪。どれをとっても俊の感情をかき乱す。今までは理性で何とか押さえられてきたが、今夜どれだけ押さえられるかは自信がなかった。
「よし」
俊はバスルームのドアに手をかけた。

かちゃ・・・
蘭世の耳がかすかな音を捕らえた。
「誰?」
「いいか?」
「え・・・ええええええ!!ままままきゃべくん・・・・」
バスタブは泡で覆われていた。
「見えないようになってんだろ?」
「そうだけど・・・もうすぐあがるから・・・」
「そうか・・・じゃあっちにいるよ」
ドアが閉まる音、蘭世は大きく息をするとそおっとドアを確かめ、バスタブから上がった。

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