「違うよ。」
そうはっきり告げる。
「聞きたいんだ。」
「何を?」
梢は振り返った。
視線がぶつかる。
「どうして?」
貴之はそう、梢に問うた。
梢は息を呑み、そして微笑む。
「どうしてと貴方が聞くの?ってこれはいつも貴之が私に言うせりふだね。」
「何故俺なんだ?梢。」
「貴之、だからだよ。そんなの。私にはその答えしかないよ。」
貴之は黙り込む。
「・・・貴之。彼女のこと愛しているんでしょ?大事でしょ?」
「大事だよ。」
「そういう人は他人にそんな気を使って話ししなくてもいいよ。忘れられない大事な女性でしょ・・・」
「忘れないよ・・・・忘れられないし、そんな必要は無い。」
「忘れようとしたってそんなことは出来ない。そんなことをするのは間違えている。」
梢には言葉が無かった。
何故、こんな風にほかの人への愛の告白を私は聞かなくてはならないのか。
心の奥底にふさいだ思いが苦痛の声を上げる。
愛されたかったと、そう彼に愛されたかったという貪欲な感情が。
アイサレナカッタジブンー
アイサレタカノジョー
エイエンニカレノー
ナゼー
ワタシハカレニアイサレナカッター
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