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先日までのじりじり焼け付くような日差しがいつしか和らぎ、朝晩に吹く風は肌に心地よく、涼しささえも感じられるようになった晩夏のころ。
冷え込むことがあるとはいえまだ、昼間はまだ夏の気配が満載である。
「・・なぁ・・?・・」
台所で片付け物をしている蘭世に俊が声をかけた。
「なぁに?」
手を止めず、目線だけをこちらに向けて蘭世は答えた。
「明日から・・・出かけないか?少し遅いが夏休み取ったんだ」
「ほんと!!!・・・でも何にも用意していないよ?私」
「いいさ、行きがけに準備しよう」
「わかったわ、着替えだけ準備するね」
「そうしてくれ」
照れ隠しか、俊は傍らに置いてあった新聞をばさっと広げ顔を隠した。
蘭世はうれしさを隠し切れず、鼻歌を歌いながら片付けの残りをした。
いままでに俊から誘うことなど殆ど無かったからだ。だからなおさらにうれしい。
俊は新聞の隙間からちらっと蘭世をみて、
・・・・こんなに喜ぶたぁ・・・・
今まで自分は蘭世を誘っていなかったかと自問自答していた。
「じゃ、準備してくるね」
「・・ああ・・・」
小気味よい足音を立てて蘭世が階段を上っていくのを見送った。
「・・・そうねぇ・・・あれも・・これも・・もっていきたいな・・あ、そうそうこれ似あうのよねぇ・・これもぉ・・・・うーんと・・それから・・と・・・」
「そんなにいれてかばん閉まるのか?」
「え?あ、ほんとだどうしよう・・・」
「ったく・・」
「だぁっ・・てぇ・・・・お出かけするのうれしくてぇ・・・」
「わかったから。かばんもう一個もってこいよ」
「そうする!!!」
その後二人で悪戦苦闘しながら、パッキングを済ませると、早々にベッドに入り眠りについた。
・・・・本当はこんな感じのこいつを抱きたいんだがな・・・・
それは明日からのお楽しみと言うふうに自分を納得させ俊は眼を閉じた。
翌日、朝ご飯も早々に俊の運転する黒のフェアレディに乗り二人は出発した。
「どこ行く予定なの?俊」
「どこにするかな・・・・?」
「そうねぇ・・・・」
そういいながら俊のハンドルはある目標を持って動いていた。
しばらく高速に乗り、そしてインターを降りると何かに向かい走りつづけた。
急カーブをいくつか通り抜け、ある瞬間一瞬にして視界が開けた。
「・・・わ・・・ぁ・・・・こ・・こ・・・」
眼下に広がる真青な海。
見晴らしのよい場所に車をとめる。蘭世は外に見える風景に心を奪われ
俊の腕が怪しい動きを見せていることに気が付かない。
「ねぇ、俊?」
蘭世がふと俊のほうへ体を向けた時、俊はその蘭世の唇に自身の唇を重ね、
舌を絡め取った。
「んん・・・ん・・・・」
蘭世は俊が教え込んだように反応し、快楽を内部から湧き上がらせる。
海風にあたって冷えたほおが熱を帯びてくる。
蘭世の唇は甘く、俊を捕らえて離さない。いくら奪っても毎回違う味がする。
少しの息苦しさとすべてを押し流してしまう感情がつながった部分から二人の体に流れ込む。
俊の指先は蘭世のあごから首のラインに沿ってゆるゆると動き、蘭世はそのたびにぴくんと体をふるわせる。
唇をはずそうとするもそんなことは俊が許すはずも無い。
俊の舌先は蘭世の口腔内をあますことなく犯しつづける。
声も出せず、ただ、荒い息遣いが車内にながれ、そしてそれは潮の音にかき消され誰にも聞こえない。
今感じるのは二人の中に聞こえる、淫靡なさざなみだけ・・・・。 |