距離と吐息 3
俊は耳を携帯に押し付けながら、蘭世の様子を窺う。
想像だけでは飽き足らず、意識を蘭世の部屋へと向け始める。俊の能力であれば可能だ。
ぼんやりと見えてくる彼女の部屋、ベッドの上のブランケットが盛り上がっているのがわかる。
その下へと眼をこらす。
「・・・ま・・・か・・べ・・・くん・・・」
蘭世が切なげに声を上げる。その表情は熱を帯びて俊を誘うよう。
(なんだ?)
「・・お・・・お願・・・い・・・」
(どうしたんだ?)
興奮を抑えながら俊は答えた。
「・・あ・・・・あの・・・ね・・・」
・・・言えない!!・・・抜きたい・・なんて・・・・
(なんだ・・?)
蘭世の心の声は受話器を通して聞こえてくるほど大きい。俊はそ知らぬふりをして言う。
「・・あ・・・」
(もっと、激しく出し入れしてみな・・・)
「え・・・ええ?・・・あ・・」
(・・俺がしている・・・みたい・・だろう?)
俊のその言葉に蘭世の背筋にびりっと電流が走る。
・・真壁・・くん・・が・・?・・
そう思った瞬間に、蘭世の奥からなにか熱い想いが込みあげてくる。
・・・真壁・・くん・・真壁・・くん・・・
脳裏に浮かぶのは、切れ切れの記憶。

抱きしめられた手の大きさ。
胸の厚さ。
つながれた唇、絡ませた舌先。
身体に触れる、骨ばった、それでいて繊細な指。
伝わる鼓動。
隙間に混ざる熱い吐息。
そのときしか呼ばない、自分の名前。

・・・・・・蘭世・・・・・・・

自身の指がまるで自分ではないかのように動き始める。

意識して動かしてはいない。

身体が覚えさせられた記憶をたどるように。

「は・・ぁぁ・・・ああん・・・ま・・・かべ・・・・・くぅ・・・ん・・・」
蘭世の声が一気に甘さと切なさを増す。
その声は携帯と意識を通して俊を突き抜けた。

遠く離れた距離で、聞こえないはずの音が聞こえてくるようなそんな熱い吐息。

(・・・もっと・・はやく・・動かせ・・・)

囁くように指令を与える。
蘭世はもはやそれに抗うことなく、さらに激しく指を動かす。

「ぁぁぁああ!!!ま・・かべ・・・くん・・私・・・わ・・・たし・・・・」

声が感極まってくる、俊は押さえがとうとう利かなくなった。

「はぁぁぁんんん!!!!!!!」
蘭世が自身の指で一気に絶頂に達したとき、俊は蘭世の部屋に思わずテレポートしていた。

ブランケットの中で荒い息を弾ませ、脱力感に襲われている蘭世。
俊は有無を言わせずブランケットを剥がすと、明かりの下に蘭世の身体をさらけさせる。

「きゃっ・・・・」
声だけは上がるものの絶頂感により身体が動かない蘭世を俊は組み敷く。
俊はまずは蘭世の両足を掴むと左右に大きく広げた。
そこは引くつき、それに呼応してとろとろと蜜をこぼしていた。
「すげぇな・・・」
意識化ではなく実際に自分で確かめる。
「いやっ・・・みないで・・・」
蘭世が恥ずかしげに眼を伏せた。俊は指先をその蜜に絡ませる。
とろりと熱いそれを塗り広げるように蘭世のそこを嬲り始める。
「ひ・・あ・・・ああん・・・・」
敏感な芽の部分に触れるたび、余韻に身体を奪われている蘭世はびくんと跳ね上がる。
そして奥から新しい蜜があふれてくる。
「ああん・・・ん・・・」
蘭世の唇から喘ぎが漏れる。俊は蘭世のその部分に舌を這わせる。ぬめった舌が蘭世のそこを縦横無尽に動き回る。
「ふぁ・・ああ・・・んん・・ん・・・・」
逃げないよう腿を押さえつけ、俊は存分に蘭世のそこを味わう。
「やぁぁ!!や・・あああ・・・・」
いやいやと蘭世は自由になる上半身を捩る。相反するような秘部に俊は言い放つ。
「欲しいか?」
十分すぎるほど分身は高ぶり、熱く蘭世を望んでいるのに、優位に立ちたい『自分』がそこにいる。
俊は自覚していながら蘭世を責める。
「・・・・」
答えられない代わりに、そこが引くついた。
もはや限界だった、互いに。
俊は自身を蘭世のそこにあてがうと、一気に挿入する。
「ぁぁぁああ!!!!」
蘭世の喘ぎが部屋に響き渡る、その一突きで蘭世は再度の絶頂を迎える。
それでも落ちるのは許さないというように俊はさらに激しく突いた。
胎内は俊のそれに絡みつくように蠢き、奥へ奥へと引き込もうとするのがわかる。
断続的にこぼれる蘭世の喘ぎが、俊を刺激する。

「あ・・・あ・・・・も・・・あ・・だ・・め・・・・やぁぁぁぁ!!」
蘭世の限界が近づく、俊ももはや限界であった。
「・・いい・・ぜ・・・・お・・れも・・・」
俊は蘭世にそうつぶやいた。
「ぁぁぁあああ!!!!」
蘭世が絶頂の細い叫びをあげると同時に俊もまた自身を解放した・・・・。

・・・・半ば失神した蘭世に丁寧にブランケットをかけてやる俊。
その寝顔にそっとキスをして俊は重い腰を引きずりながら、もといたホテルにテレポートしていった・・・

PPPPPPPP・・
翌朝小さな電子音で目覚めた蘭世は枕もとの携帯を取り出す。
”起きれたか?”
俊のメール、昨夜の狂態を思い出し、ぼんっと真っ赤になったことを俊は知らない。

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