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君は野に咲く華のようで |
9 |
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「はっ・・・ぁ・・・ん・・んん・・・・あぅ・・・ん・・」
「・・・くっ・・・ああ・・・」 |
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求められないと思った。
応えられない自分を呪った。
すべてを引き裂いてしまいたいと願った。
彼女は、僕だけのものじゃないから。
僕は彼女だけのものでありたいのに。
彼女も、僕だけのものにしたかったから。
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そんなこと、ただ、願えばよかったのに。
素直に。
答えは最初からすべて2人にあったのに。
こうして。
好きといえば。
愛していると叫べば。
見てくれと、求めれば、よかっただけなのに。
もう・・・・
身体をぶつけ合い、快楽を漂い、互いが互いの中に熔けていく。
何も見えなかった。
2人だけしか見えなかった。
触れる指のその感触すら互いの快感を高める。
つながれた手が想いを伝える。
交わした口付けで、身体の芯から燃え立つのがわかる。
つながったすべての部分で、快楽を貪っているのがわかる。
蜜があふれ、滾った肉棒に絡み、熱さを増し、さらに深遠をえぐる。
全身が狂ったように互いを求めて、もっとと叫ぶ。
何度も、何度でも高みを目指すだけ。
意識を手放しそうになりながら、それすら惜しむように互いを覚えた。
互いを感じた。
どうしてかわからない不安の中で。
ただ、2人だけが熱さの中での真実だった。
「れ・・・いぃ・・・」
「澪・・・・・」
切なげに2人の息が途切れた瞬間、その快楽は他の誰も知らないものになった・・・・ |
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君は僕を好きでいてくれた。
君は僕を愛し始めていた。
僕は君を愛しすぎていた。
壊して、もっと、僕だけのものにしたくて。
君の心に僕だけしかいなくなって欲しくて。
・・・・・・そんなことは出来はしないと、心の奥底で知っていながら。
僕は僕の心にはうそはつけなかった。
僕は僕だけに真実を伝えてきた。
そんな方法は間違っていると、警笛を鳴らし続けて。
そんなことはないと押し殺して。
僕は彼女を壊したかった。
彼女の愛を僕のものだけにしたくて。
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貴方は私を愛してくれていた。
貴方は私だけを愛してくれている。
私は貴方を好きでいた。
いつまでも、いつかは貴方とと・・・
ほんの少しだけ勇気が足りなかった。
関係を壊すのが怖くて。
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すれ違った瞬間に、道は別れた。
本当はたった一言
貴方に
貴女に
伝えればよかったのに。
たった一言を。
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翌朝、傍らに怜はいなかった。
そして、大学にも。
姿を消した、その消息すらつかめない。
でも知っていた。
・・・・・私は彼を愛しているから。
いつまでも待っていることが出来る。
同じ場所で、ただたたずんで。
春が来れば、同じ場所に必ず咲く、その野の華のように。
Fin
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