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夜明けのよせて返す波の音が幸せのリズムを刻む・・・・
白い光だけがそこを包む。
こんな時間がやってくるなんて・・・
あの日・・・あの瞬間を忘れることはない、彼女のすべてを守れたことが自分の誇りであった。そして今、ここに彼女がいる。
「・・・・鈴世くーん!!待った?」
小走りになるみがやってくる。明日はなるみの誕生日、今日から一緒に出かけようと待ち合わせをしていたのだった。
「いや、今来たところだよ、それよりあんまり無茶しないでよ、」
「もう!!大丈夫よ!!」
鈴世はなるみをやさしく見つめる。切ないような苦しいようなそんな眼で。
「大丈夫よ・・・鈴世くん・・」
眼を伏せながら答える。
「行こうか?」
なるみの肩を抱きながら鈴世は歩き出した。
JALPAKの扉、江藤家の地下にある秘密の扉で二人はこれから出かけるところである。
今回鈴世が選んだ先は南国の楽園タヒチであった。
「わぁ・・・・」
二人は言葉を失う。鈴世は小さいころ来たことがあったはずだがそのときとはまるで違う風景に見えた。
「こっちだよ、なるみ、コテージ予約してあるんだ」
二人並んで、その手はしっかりとつながれたまま歩いていく。
陽気なタヒチニアンが愛らしいカップルに賞賛の言葉を投げかける。
恥ずかしげに顔を赤らめる二人であったが決して手は離さなかった。
「ウェルカム!!」
フランス領でありながら、観光客が多いのであろう、英語がある程度通用するので二人とも言葉に不自由することはない。
簡単にチェックインを済ませるとパレオの女性が二人を桟橋へと誘った。
そこはまさに地上最後の楽園といわれる所以そのものに二人の眼前に広がった。
桟橋の所々にパンの入ったバケツが下がっている。
これは何かと問い掛ける二人に女性はそれは海にいる魚達にあげてくださいという。
少しだけそのパンを取り桟橋をすすむとそこに二人のための小さな水上コテージがあった。
部屋には海からの潮風が吹きぬけ、中央のガラステーブルの下にはすぐ南太平洋が広がっている。
ベットの上にはハート型に花びらが飾られている。
案内の女性が下がるとすぐにノックの音が聞こえた。ウェルカムドリンクのサービス。
至れり尽せりに二人は戸惑いながらもうれしかった。
「なるみ、着替えて海に行ってみようか?」
「え?私水着持ってないよ、だって鈴世くんどこ行くか話してくれなかったじゃない」
「はい」
鈴世はなるみに袋を差し出した。
「ね・・・姉さんに選んでもらったから・・・」
赤くなって鈴世は言う。それは落ち着いた色のパレオ付きのビキニであった。
「ありがとう」
「そっちつかいなよ、僕はこっちで着替えてしまうから」
手短に二人とも着替えてしまうと鈴世はなるみをバルコニーへ誘った。
「こっちからもいけるんだよ」
バルコニーの端から海へ降りるステップがあった。
透き通る海の中にカラフルな魚達が誘うように泳いでいる。
二人は日が傾くまで飽きることなく海と戯れていた・・・ |