秋の夜長 14
ほの暗い寝室に、二人の息遣いだけ。
・・・・蘭世・・・・
誰よりも大事な宝物を腕の中に抱きしめ、俊は満足していた。
蘭世の心臓の鼓動が自分の中へ届く、おそらく自分の鼓動も蘭世に届いていることだろう。
ゆるゆると蘭世の体から力が抜け、呼吸が深くゆっくりと落ち着いてきている。
眠りかけているようだ。
俊もそれ以上手をださず、自分も一緒にその眠りの中へ引き込まれるように意識を手放した。
幾ばくかたったころ、蘭世はふと目を開いた。
「・・・あ・・・・」
蘭世の中に俊の分身が埋め込まれたままになっている。
それを抜こうと思ったときに、俊が片目をぼんやり開けた。
「どうした?」
蘭世はうつむき加減で言いよどんだが、俊の方が先に気がついた。
俊は蘭世を抱きしめたまま仰向けになる。勢い、俊の上に蘭世は乗せられた形になってしまった。
「・・やっ・・・・」
恥ずかしげに俊の胸元に顔を埋めると、蘭世の黒髪がぱさりと俊の上半身を覆う。
俊の指先が、敏感な蘭世の背中をすべる。
「・・あ・・やぁ・・・・・・・」
ピクンと反応し、蘭世の体が震える。蘭世の胎内で俊の分身が勢いを増した。
「いいか・・?・・」
俊が小さく、蘭世に問いかけた。返事に躊躇する蘭世をよそに俊の腰が蘭世を下から突き上げた。
「ああん!!・・んん・・・」
眠っている間、意識せずいたぶられていたような状態の蘭世である。
少しの動きでも顕著に快楽を引き寄せる。
下から見上げる蘭世の乳房を俊は優しく揉みあげる。
「・・はぁん・・ああ・ん・・・・んん・・・はぁ・・ん・・・・」
髪の先が俊の顔をくすぐる。その微妙な感触は俊の快感を高めていく。
「・・・蘭世・・・・!・・・・」
「・・・ああ・・・・やぁ・・・だめぇ・・・・・・」
大きな波が二人を押し流した。
俊は自分の上から蘭世を降ろし、腕の中へしまいこみ、そのまますぐに眠ってしまった。
呼吸を落ち着かせた蘭世が、ゆっくりと俊の腕の中から抜け出そうとするが、しっかりと抱きかかえられ動くことさえ不可能だ。
蘭世はわずかに動く腕を俊に添える。
・・・しあわせ・・・よ・・・・私・・・だって・・・
痛いほどの愛情を全身で受け止め、蘭世は何かを感じ取った。
・・・・もしかしたら・・・
ぼんやりと考えながら、蘭世は再度深い眠りに落ちていった。

数週間後、蘭世は俊に驚きの告白をすることになる。
赤ちゃんができたの・・・と。


後日談
「・・・あ・・・の・・これ・・・」
「なぁに?」
母の喜びに満ち溢れている蘭世の笑顔に骨抜きになった俊は蘭世へ毎日プレゼントを買ってくる。
おいしいと評判のお菓子だったり、夕食の準備をしなくてよいようにお惣菜だったりと
その内容は他愛のないものが多かったが、クリスマスのこの日は違っていた。
きれいにラッピングされた小箱。
とても軽いものだった。
中には華奢なプラチナのブレスレット。蘭世の好みそうなデザインだ。
「・・・あ・・その・・・なんだ・・・」
赤くなりながら俊は言う。
「・・・・あり・・がとうな・・・・・」
・・・・俺達の子供・・・
俊が蘭世の左手首にそれをつけてやると蘭世は困ったような表情を俊に向けた。
「私・・何にも用意してないよ。」
「・・・いいんだ・・・もらったから・・・・」
「え?」
「抱えてるだろう。そこに。」
指差す先は蘭世の腹部。
飛び切りの笑顔を俊に向けて蘭世はうなずいた。

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