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・・・・・・はぁ・・・・
ここのところの俊は時々蘭世にわからないようにため息をつく。
一緒に暮らしてまだわずかであるが、日に日に蘭世への気持ちが 高まっていく。それもあらぬ方向に・・・
・・・新婚旅行中に何とかしようと思ってたんだがな・・・
異国の地で、気分も高調しているだろうところでいろんな事を 試みるつもりだったのだがあろうことかあっという間にトンボ帰り だったのだ。
・・・それはいいさ・・しかし・・・
その後二人の関係はと・・言えば、
「ただいま・・」
「お帰りなさい!!ご飯にする?お風呂にする?」
(・・・やるって言えねぇよな・・・・)
「風呂入ってくるわ・・・」
「うん!!」
あいかわらずの蘭世であり、それはそれでかわいい。しかしやはりそこは 男である俊の欲望というものもあるのだ。
もちろん夜の生活を蘭世は拒む事はしない。が、まだまだようやく痛みがなく なった程度のもので快感が・・・と言うところまでは、いっていない。
俊にしてみればもう少し・・と思っている所なのだ。
と言うわけでまた、小さくため息をつく。
「どうするかな・・・・・?」
天を仰いで俊はふとあることに思い当たった。
・・・そういや明日は休みか・・・・
久しぶりのオフ、二人は買い出しにいこうと相談していたのだ。
・・・・まぁ・・ちっとぐらい遅くなってもいいだろう・・・
と俊は1人でそう考えた。
そんなことを考えながら入浴していたので、俊はのぼせかけてしまった。
すこしふらつきながらでもポーカーフェイスで台所へくると 鼻歌を歌いながら蘭世は夕餉の支度をしていた。
「おい?」
「きゃっ?!なに真壁くん?」
「水取りに来たんだけど・・」
「あ、ごめんなさいちょっと待ってね」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し俊に手渡す。
「はい、どうぞ、もうすぐ準備出来るからね」
「サンキュ」
・・・ああ、びっくりした・・・突然なんだもん・・・
胸の鼓動を気づかれないように蘭世は準備を続けた。
そんな蘭世をながめながら俊は今夜の事を考えていた。
そして
「なあ、酒でも飲むか?明日休みだし」
「え〜大丈夫?明日買い物に行く予定よ?」
「大丈夫だろ?少しだけだ。おまえもつきあえよ」
「少しだけよ。もう」
食卓に暖かい料理が並び始める。蘭世は毎日こうして俊の為に時間を合わせて 準備をしてくれる。その心遣いがとてもうれしかった。
「今日のは自信作なのよ?」
「へぇ?」
・・・・毎日うめぇけどな・・・
言葉にはしないもののそうは思っている俊であった。
「ほら、グラスだせよ」
「あ、有り難う・・・少しにしてね・・」
「ああ・・」
・・・・少しぐらい酔ってくれよ・・
そんな願いを込めながら俊は蘭世のグラスに注いだ。
「・・ねぇ・・・?」
「・・どうした?・・」
「酔ってるのかなぁ・・・・?眠くなって来ちゃった・・・」
「・・・大丈夫か・・?風呂でも入って酔いさましてこいよ」
「・・・うん・・・」
バスルームへ消えていく蘭世を見送ると俊は夕食の後かたづけを簡単にした。
・・・あの状態なら大丈夫だろう・・・風呂で酔いも落ち着くだろうに・・・
・・あんまり酔いすぎているとなぁ・・・・
そんな俊のよこしまな思いが通じたかの様に蘭世はほろ酔いの状態で お風呂からあがってきた。 |