Sleeping 1
棘の森に守られて眠る、彼女の名前は
Sleeping Beauty。
彼女を救い出せるのは、王子様のキスだけ。

そんな物語を思い出す。
俊の前で昏々と眠りつづける蘭世。

何度口付けただろう。
何度呼びかけただろう。
ぴくりとも反応を示さず、ただ、横たわる。

ぬくもりだけはその手の中にあるけれど。


「ふふふ・・・」
「・・んだよ?」
いつまでもにやけている蘭世にちょっと呆れたように声をかける。
「嬉しいの。」
手を前に合わせるようにして、小首をかしげながら蘭世は俊を下から覗き込む。
「何が?」
そっけなく答える俊に、しょげることなく蘭世は続けた。
「こんな風に、二人で、出かけられることが。」
二人にはいろいろなことが多く起こりすぎた、ようやく魔界のいざこざが収まり、アロンが王位を継いだ。
そして俊と蘭世は未来へ向けて二人歩き出したところであった。
あの水辺での約束の口付け。
過去の人々に祝福され、現在の人々に見守られながら始めた落ち着いた日々。
そんなありふれた日常が二人にとってのささやかで、貴重な時間だった。
「・・・・そうだな・・」
分かりすぎるほど分かるその想いだが、あまりにまっすぐな気持ちをぶつけられると元来の性格が表に出てくる俊は、どうしても無愛想になる。
勢い、言葉も少なくなりがちだ。それでもその想いは互いにそこに通じ合う何かを形作る。
そっと手が触れる、慌てて引っ込めようとする蘭世。
「別に・・・いいぜ。」
そっぽを向きながら俊は言う。嬉しそうにその指に自分のを絡ませる。
何気ない、二人の久しぶりのデートの一コマでしかなかったはず。
そんな帰り道
「ねぇ、今日のお店の料理おいしかったね。」
「そうだなぁ・・・」
「今度お弁当に入れてもいい?」
「作れんのか?」
「失礼ねぇ、出来るわよ・・・・たぶん。」
「期待しねぇで待ってるよ。」
「ん、もう!」
ちょっとだけふくれた振りをする蘭世。そんな蘭世を木陰に隠し、樹にもたれさせるとその唇をひょいと奪う。
日に日に長くなっていく、触れ合っている時間。
そこから流れ込んでくる想い、気持ち、すべて。
そっと腕を俊の背中に回す。
ちょっとだけ、いつもより進んだキスをしてみる。唇を開き、舌先で蘭世の唇をつつく。その感覚にほおをさらに赤くしながら小さく隙間を開けてくる。その隙間に舌先を忍び込ませ同じく小さく開いた歯列の隙間から蘭世の舌を絡め取る。
「ん・・・ん――・・」
熱い吐息―どちらのか分からないけど―が互いの距離を縮める。
蘭世の腰を抱き寄せ、少しでも近くに、身体を寄せる。そして、離れる。
「帰るか。」
「うん・・・」
まだ、火照った頬を両手で包み込み、俊を見つめる。
「どうした?」
「・・・・え・・・・///もう、知らない!」
・・・恥ずかしいんだってば・・・・・
キスするたびに自分の身体の奥に感じる何か。
もっと触れて欲しい、抱きしめて欲しい。そう思う自分がとてもいやらしく罪悪感に捕らわれてしまう。そんな自分が時々嫌いになる。
「ほら。」
蘭世に手を伸ばしてくれる俊、その手に触れるととても安心する。
その手に守られている幸せ。
夕日が二人の影を長く伸ばす、道すがらその影が寄り添って角を曲がる。
「じゃ、また明日学校で。」
「ああ。」
繋いでいた手を離す瞬間、寂しさがよぎるのは私だけ?
そんな問いかけをしたくなるほどあっけなく手を解く俊に蘭世は軽く手を振った。片手を挙げてそれに答えると俊はアパートの方角へ歩いていく。
・・・また明日まで会えない・・・
毎日学校で会えるのに、それでもずっと一緒にいたいと思う女心。でも笑顔で見送らないと彼が困ることを知っている。
「ただいまー!お母さん。」
ドアを開け帰宅する蘭世を家族が出迎えた。

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