Happy Birthday(蘭世ちゃんお誕生日おめでとう記念) 1

カチンと小さく音を立ててグラスを合わせる。その中には淡いピンク色のシャンパン。
「・・・おめでとう。」
「有難う、真壁くん。」
今日は蘭世の20歳のバースディ。俊はそっけない振りをしながらもちょっとだけいいレストランを予約していた。
「ここ、来て見たかったんだ。」
「そうか?」
・・・そりゃまぁ・・な・・・
心が読めるって便利だなとこっそり思っていたのは内緒だが。
一品一品、いいタイミングで運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながら、アルコールが二人の心の距離を
少しづつ近づけていく。
デザートは小さいホールケーキに「Happy Birthday」の文字と2本のキャンドル。
「うわぁ・・・」
「切ってやるよ。ほら。」
文字の方を蘭世に取り分けると、残りをさらに3分の1に切ったものを自分は取る。
「え・・・」
「甘いのは苦手なんだよ。残りは持って帰れよ。」
「いいの?」
「ああ。」
そう言って店の人にその旨を頼んでいる俊をうっとりと見とれる蘭世。
・・・ああ、真壁くんが私のために・・・・・
とろんとした眼で見つめる蘭世の視線。俊が気が付いていないわけないのにあえてそのことに触れない。
「おいしいか?」
「うん、あんまり甘みが強くないからきっと真壁くんでも大丈夫だよ。」
蘭世は乗っかっているイチゴをひょいと俊の口元に差し出す。俊は一瞬止まったのちあきらめてそれを
食べた。
デザートに合う食後酒を飲み終えるころにはもう、蘭世は少し酔っ払い気味だった。

「おいしかったねぁ〜〜」
「そりゃ良かった。」
蘭世はふらっとしながら歩き始めようとしたので慌てて俊がその腕を支える。
「へへ・・・」
腕に自分の腕を絡め、蘭世は俊を見上げる。その瞳は酔いで潤みを帯び俊を誘うように。
「え・・江藤?」
「このまま、帰りたくないなぁ・・・」
もちろん蘭世に他意はない、ただ、その幸せな時間がもう少し欲しいだけ。俊は動揺しながら
「馬鹿。」
額を軽く押す。蘭世の表情が一瞬ふくれたのち笑顔に変わる。
「だってぇ〜〜嬉しいんだもん。」
・・・・俺の気もしらねぇで・・・
俊は腕を振りほどくことなくそのまま喧騒の街を歩く。ただ、二人幸せな空気に包まれる。
「あ!真壁さんだ!」
「ほんとだ!でも・・・」
ファンらしき女性が少し離れたところでそんなことを話しているのが聞こえてくる。
「でも、きっと違うよ。」
「でもでもあんな風に・・・」
その女性が二人の傍に駆け寄ってきて
「真壁さん!ファンなんです!握手してください。」
二人とも手を差し出すが俊は
「今プライベートなんで・・」
「え、あ・・すいません。あの・・・その人は?」
無遠慮に聞いてくる。
「あ・・・・・」
俊は答えに窮し、それでも一拍おいてこう答えた。
「婚約者・・・です。」
蘭世の顔が見る間に赤くなり、うつむいてしまう。
・・・真壁くんが、こんな風に言ってくれるなんて・・・・
嬉しさでどうにかなってしまいそうな蘭世に気が付くと
「じゃ・・・」
そう言って俊は蘭世を伴って逃げ出す。
「真壁くん・・・いいの?」
「別に・・・かまわねぇよ。」
蘭世は俊の腕にさらにぎゅっとつかまる。俊は腕に感じる蘭世の胸のふくらみに戸惑う。
・・・こいつ・・・
俊は今日の最終目的地へと歩みを早めた。
「真壁くん?」
「ん?」
「どこいくの?」
答えない俊、ただやさしく笑うだけ。蘭世はそれ以上追求出来なかった。
街をそぞろ歩きながら、二人が着いた先はシティホテルだった。俊は予約を入れていたらしい。
フロントで手続きをする俊の横に立っている蘭世は恥ずかしくてうつむきっぱなし。
「ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」
フロントの人がそう言って二人をエレベーターホールへと送り出す。

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