パンプキン・パンプキン

「ハロウィンが終わったと思ったらすぐにクリスマスなのねぇ・・」
近くの商店街に買い物に来ていた蘭世は思わずそう呟いた。
かぼちゃ模様があっという間に赤と緑に早変わり。
「そうしてすぐにお正月なのよね。」
そう小さく続けるといつものスーパーへと足を向けた。

「さて・・っと」
荷物を抱えて帰宅した蘭世は夕食の準備に取り掛かった。
「え〜っと・・・・」
必要な分以外を冷蔵庫に片付けると手際よく料理を進めて行く。
流れるような動きでてきぱきと、そしてゆっくりとよい香りが家中に広がっていく。

がちゃんと鍵が開く音がして俊がリビングへと入ってきた。
「ただいま。・・・・いいにおいだな。」
「お帰りなさい!!!今日はおなべなの、ちょっと寒かったでしょ?」
「ああ、いいな。じゃ先に風呂入ってくるよ。」
「うん、ちょうどいいくらいじゃないかな、あ、洗濯物だしておいてね。」
「わかった。」

何気ない日常。
二人でいる幸せ。

やっと二人で手に入れたそれは穏やかに過ぎていく・・・

「・・でこれは?」
「かぼちゃ鍋・・・」
「??」
困ったような表情で蘭世は俊に答えた。
「かぼちゃ鍋って・・・」
「ほら・・ハロウィンでかぼちゃくりぬいたの作ったでしょ。そのとき中身は別にとっておいたの。」
「・・・でこれか?」
鍋の中には鶏肉の団子と同じくらいの大きさのかぼちゃ色の団子。
「栄養あるし、おいしいんだけど・・」
「そりゃわかるがな、ちょっと多すぎだ。」
「・・・・うん・・これで終わり・・」
「・・ったく・・」
「・・来年はもうちょっと少なくするから・・」
申し訳なさそうにする蘭世を見て、俊はまずは箸を出す。
「旨いんだが・・・さすがに毎日は飽きそうだ・・・頼むな。」
「うん、ごめんなさい。」
ここ1週間くらい毎日かぼちゃ責めにあっていたからのせりふだった。
そしてなまじ目先や味も変えられるものだから食べられたもののこれ以上は勘弁して欲しいと思っている俊であった。
蘭世もまたやりすぎの感はあったものの、悪くするのもいやだったというこの双方向性で毎日かぼちゃと相成ったわけだった。
「でも、鍋にすると旨いな、これ。」
「そう?よかった・・・・今年はつい楽しくてやりすぎちゃったの・・・みんなも楽しそうだったし。」
「まぁ確かにな。」

ハロウィンの夜、ジャックオーランタンをつけ仮装パーティをやったのだ。
というより基本的には蘭世は正装だったりしたのだがそれでもこの日だからこその格好であったことは間違いは無かった。
たまにはこんな騒ぎもいいなと盛り上がったりもした。
子供が出来たらまた違った形でもやりたいねなどと話したりー

「なぁ、そういえばあのときの衣装ってどうした?」
「ん?明日にでもクリーニング出さなきゃだわ、今日持っていくの忘れちゃったの。」
「あ、そうなのか。」
湯気の中はふはふと二人鍋を囲む。
「これどうやってつくってんだ?」
かぼちゃを持ち上げながら俊が蘭世のたずねる。
「かぼちゃってもっと柔らかくなってしまうんじゃねぇか?」
「ああ、それはね片栗粉を入れて餅みたいにしてあるの、そのまま焼いてもおいしいよ。」
「へぇ・・・」
「栄養もあるし私結構好きなの。」
「しかしまぁいろいろと作ったな、普通に煮物から揚げ物からスープから、こんなのまで。お前のことだおやつも作ったんだろ?」
「え・・・・あはははは。うん、かぼちゃのプリン作って鈴世たちにあげちゃった・・・食べたかった?」
「いや、それはいいけど。」
「鍋だと野菜もたくさん食べられるから・・その・・・俊の身体にもいいかなぁっては思ったりした・・」
「ああ、そうだな。」
たわいの無い食卓の会話が何よりもうれしい。
一人じゃない、二人でいることの幸せ。
「ご馳走様。」
「おなかいっぱい・・やっぱり作りすぎちゃったかも。」
「来年は加減しろよ、本当に。」
「は〜い。」
にこにこと蘭世は後片付けを済ます。
そんな水音が聞こえてくるリビングで俊は思いをはせる。

・・・・いいな・・・・

母親と二人で暮らしていたころも幸せだった。
でもそれとは違う、幸せがココにあった。
愛されるだけじゃない、愛して守る幸せ。
ようやく手に入れたものは決してもう、壊れることは無いと信じられる時間を超えてきた。

鼻歌を歌いながらキッチンを動き回っている蘭世がもしリビングの俊を見たなら今まで見たことも無いような表情が見れたことだっただろう・・・

「さて・・っと。お風呂入ってくるね〜先休んでて〜。」
片づけを終えた蘭世は俊にそういいおくとバスルームへと消えた。

トントントン・・・と階段を上ってくる足音。
寝室の椅子にのんびりと座って俊はボクシングの雑誌を眺めていた。
部屋に入ってくると蘭世は椅子の傍まで寄ってきて一緒に中身を覘いてみた。
「ライバル選手の情報とかも載ってるの?」
「ああ、次回の対戦カードとかな、俺の試合もたまに載るし。」
「スクラップはしてあるのよ、俊の分は。」
「・・・・あ〜・・・まぁいいけど。ほかの人に見せるなよ。」
「え〜なんで〜・・・ん〜・・でも神谷さんとか鈴世とかならよいかなぁ・・?」
「その辺ならな、ま、許容範囲だな。」
「楽しいの、切り抜いて張ってって・・」
「まぁ、ほどほどにな・・・・ってそういえばハロウィンの時のってアレお前の正装か?」
「え?あ、うんそうだねぇ・・めったに着ないんだけど。」
「吸血鬼の正装ってやっぱりマントなんだなと改めてみたよ。」
「まぁイベントだから仮装っていえば仮装なんだけど、たまには着ないとなぁってメンテナンスにもなるしね。」
「俺の正装はなぁ・・・・もう二度と着ねぇぞ、あんなやつは。」
「あはは・・・あ〜・・・戴冠式の時のね、」
「なぁ、マントめったに出さないならこういうときぐらいしかみれねぇし。クリーニング出す前にもう1回見せてくれよ。てか俺が着るには小さいだろうけどさ。」
「いいよ、明日には出してまたしば〜〜らくお片づけ予定だし。」
ごそごそとクローゼットを探すとばさっと重たげなマントを取り出した。

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル