not 新婚 but lovers? 1
「うん、いい天気。休みはこうでなくっちゃね。」
リビングのカーテンを開くとそこには真夏の太陽。
タイミング良く洗濯機がブザーを鳴らす。
「はいはい。」
ぱたぱたとスリッパで小気味よい足音を立てながら蘭世は忙しく立ち動く。

ポフポフ、ばたばた・・・・・
耳元の布が軽くたたかれる音で眼が覚めた。
「きゃっきゃっ」
意識が覚醒すると同時に同じように耳元で何かの声。
「・・・・・ぁあ・・・」
ぷくぷくっとした頬を膨らませながらご機嫌よさげに手足をばたつかせるー卓、5ヶ月を少し過ぎたとこ。
「・・・てあいつどこいったんだ?おい。」
ベッドの上に起き上がり、今だうごめくその小さな物体を手だけであやしながら視線を部屋の中にめぐらす。
階下から小さく足音。
「置いてったのか、これ。」
と俊はよっと慣れた手つきで息子を抱き上げる。
「きゃー!!」
と一段と嬉しそうな声を上げながら卓は暴れた。
「・・まったく、誰に似たんだか・・・ほら、行くぞ。」
部屋を出ると少しむっとした空気が夏の朝をうかがわせる。
「あ、起きたの?おはよう。」
「起きたのって・・・こいつが・・・」
「あら?卓。よく眠っていたのよ?」
「朝から元気よく騒いでいたぜ。」
「お父さんが隣にいたからね〜。」
そう言ってにっこりと微笑みかけると合わせ鏡のように卓も笑う。
「うん、ご機嫌だね〜。ね、洗濯物干してしまうね、そしたらごはんにしましょ。」
「ああ。」
リビングのソファで俊は卓を抱きながら新聞を広げた。
「あ〜あ〜」
がさごそいう紙が珍しいのか卓は手で新聞をつかもうとする。
うまくかわしながらのんびりと過ごす親子三人の夏の風景ー
窓を開け放ったそこには夏とはいえまだ朝早いせいかいい風が吹き抜けた。
「あー今日も暑くなりそうだなぁ・・・」
と誰に言うでもなく俊は一人つぶやく。
どこ吹く風といわんばかりに卓は俊の膝の上で暴れまくる。
「・・まったくなぁ・・・」
と苦笑交じりに自分の息子と向き合う。
「ご飯よ、あなた。」
「ああ。」
ダイニングテーブルに食事の支度を整えると蘭世が卓に手を伸ばす。
「おいで、卓もご飯にしましょう?」
「あー。」
卓を抱きかかえると蘭世は俊に柔らかな笑顔を向けた。
「先食べてて?私卓に先にあげるから。」
「ああ・・・」
と行きかけ、ふと蘭世を見た。
蘭世はソファに腰掛け部屋着の前を少しだけはだける。
と俊の視線に気がついた。
「だめ!」
恥ずかしげに身体を捩り俊の視線から乳房を隠すように卓に飲ませ始める。
さながらその姿は聖母の姿とはよく言ったものでー
俊はダイニングに腰掛ける。
チンという音とともにトースターから程よく焼けたパンが飛び出す。
自分の分と判っているから代わりに蘭世の分を入れるとタイマーをセットする。
整えられた食卓においしそうな香りが広がっていく。
自分の分とその後焼きあがった蘭世の分のパンにバターを塗ると俊はやおら食べ始めた。
そう時間をおかず蘭世がダイニングにやってくる。
「それほど、おなかすいてないみたいね〜卓。朝方眼を覚ました時少し飲んでいたから。」
「そうか。」
「あ、有難う。私の分。」
「さめねぇうちに食え。」
「うん、いただきま〜す。」
うつらうつらしている卓を横抱きにしながら器用に食事を取る蘭世を見て俊はさっさと食べ終わるとひょいと卓を抱き上げる。
「ゆっくり食ってろ。」
「あ、ありがと。」
そんなさりげない家族の肖像ー

食事を終え後片付けを蘭世がしているうちに卓は俊の腕の中ですっかり眠ってしまっていた。
「あら・・・」
「おう。」
「寝るところ準備しなくちゃね・・・」
といったところに呼び鈴が鳴った。
「は〜い・・」
蘭世が扉を開けるとそこには鈴世が立っていた。
「姉さん。おはよう。」
「・・どうしたの、鈴世。こんな朝早く。」
「お母さんとお父さんがね、卓連れてきてって。」
「え〜〜〜??今から?後で準備したらつれて・・・」
「ううん。卓だけ預かっておいでって言われたの。」
「え?」
「たまには面倒が見たい!ってお母さんから。」
「・・・・でも・・・」
「どうした?」
俊が卓を抱いたまま顔を見せた。
「おはようございます。卓寝てるの?」
「ああ、今丁度な。」
「じゃ、今のうちに連れて行くね。」
「?」
「ちょ・・・鈴世?」
ささっと玄関を上がると困惑顔の俊の腕から卓をそっと抱き上げると小声で耳うちする。
「?」
「今日姉さんお誕生日でしょ?兄さんと二人っきりでデートしておいでよ。」
「・・・・・・」
俊はにこっと微笑む鈴世を見つめ返す。
「じゃ、卓つれてくね〜〜」
「・・・あ・・・ああ・・」
「鈴世!」
「夕方まで訪問禁止ってお母さんからの伝言だよ〜!!」
と慣れた手つきで鈴世は卓を抱きながら歩き出す。
「も・・もう・・・お母さんってば・・・」
「・・・まぁ・・・いいけどな。」
「いきなりなんだから!」
「せっかくだ。ゆっくりさせてもらおうか。」
「?」
「何かしたいこと、あるか?」
「何で?」
「鈴世のやつ、一言言っていったぞ。お前今日誕生日だろってな。」
「・・・あ!・・・」
蘭世が思わず俊を見つめた。
「さぁて、どうするかな・・・・」
と、少々手持ち無沙汰になった両手で蘭世を抱き上げる。
「きゃっ!な・・何?」
「やっぱり卓に比べると重いな。」
にやりとしながら俊は蘭世を見る。
「あ!当たり前!!でしょ!!!もぉ、降ろして。」
その言葉を黙殺すると俊はひょうひょうとしながらそのままリビングへと入る。
「ちょ・・・」
蘭世は困り果てたように俊の腕の中でもがくにもがけない状態。
「さぁて・・と。」
抱きかかえたまま俊はソファに腰掛ける。
「ね・・ねぇ・・・・」
「どうしようかね。」
「俊!」
ねめつけるように少々怒ったような表情で蘭世は俊は見る。
その瞳に自らが写っているのを見つけると俊は蘭世の後頭部を抱き寄せ口付けた。
「んん!・・」
・・・久しぶりだな・・・・
俊はふと、そう感じた。
卓が産まれてからというもの二人の生活はそれ一色になり、お互いにこうしてゆっくり見つめあう暇すらなかったことをいまさらのように思う。
それは蘭世も同じだったようでー触れていた体温が一気に上がった。
唇を離し、あらためて互いを見つめ合うともう一度、今度はお互いに唇を寄せていく。
軽く口付けるとは離れ、離れては名残惜しそうに見つめあい、そして再度唇を合わせると互いに舌を絡ませ吐息が洩れるほど。
数え切れないほど、キスを繰り返す二人。
何度交わしても足りないほどー

どれほどの時間そうしていただろうか・・・・・

ふと、我に返ると二人ともが視線を外に向ける。
だいぶ陽も高くなりつつあった。
「あ・・・えと・・・」
そうして視線を戻すと俊が照れくさそうに
「久しぶりに、メシでも食いに行くか?卓がいるとファミレスくらいしか行けねぇからな。」
そんな言葉に蘭世は頬を染めながら嬉しそうに頷いた。

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