『ひでぼんの書』

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第2部第8話

警告:今回の作品は猟奇&残酷な表現が多々含まれていますので、耐性の無い方は読み飛ばす事をお勧めします。御了承下さい。

「まぁ……あなたが日野さんですかぁ」
「ははははは、初めまして〜!!」
 水晶の柱が幻想的な光を放つ暗黒世界の中、“つぁとぅぐあ”さんの『にへら〜』とした微笑みに対して、日野さんは僕の背中に隠れながら、ガクガク震えっぱなしだった。
 春の日差しもさわやかなある日のこと、突然、今後の事を相談したいと日野さんが遊びに来たんだ。
 いや、遊びに来たというと少し御幣があるかな。一応は今後の事をちゃんと話し合ったし……
……ほとんど先日の龍田川さんの件について再確認しただけだけど。
 ちなみに、彼女と“くとぅぐあ”さんとの関係は極めて良好らしい。それがどんな意味で『良好』なのかは、少し気になる所だけどね。
 で、その後、日野さんはなぜか『私も“つぁとぅぐあ”様に会いたいです〜!!』って熱心にお願いしてきたので、供物を捧げに行くついでに、こうして案内しているんだけど……
「やっぱり『接触者』さんだけありましてぇ……美味しそうですねぇ」
「ひ、ひ、ひぇええええ〜!!!」
 ……この人、一体何しに来たのだろう?

「――あら、この子が“くとぅぐあ”神との『接触者』さんですのね」
「ひいぃ――!?」
 突然、背後から美しくも妖しい声をかけられて、今度は僕も本気で驚いた。日野さんに至っては、驚愕のあまり僕の後ろと前のどちらに身を隠せば良いのか分からないらしく、僕の周りををぐるぐる回っている。
 いや、その声の主は聞いた瞬間に“あとらっく=なちゃ”さんだと分かったんだけど、驚いたのはその格好だ。
 その妖艶で美し過ぎる肢体を隠しているのは、漆黒のセーラー服じゃなかった。白い半袖の体操着に、紺色のブルマという、一昔前の体育授業中の女子高生といった姿格好なんだ。
「……なぜ、そんな服を?」
「セーラー服は“でぃーぷわん”達に破られてしまって、仕方なく換えの服を……あまり見つめないで下さいな」
 ほんの少しだけ頬を赤く染めて、“あとらっく=なちゃ”さんは体操着の裾を下に引っ張っろうとしていた。サイズが少し小さいらしく、さっきから隠そうとしている形の良いおへそは丸見えだし、意外に大きい胸とお尻のラインもはっきり浮かんでいる。
 普段の黒いセーラー服姿とはあまりにギャップのある姿に、僕はあんぐり口を開けて見惚れていた。
「それにしても、本当に美味しそうな子ですこと」
「“くとぅぐあ”ちゃんの匂いが美味しそうですねぇ」
「ひえぇええええええ〜ん!!」
 日野さんの絹をズタズタに裂くような乙女の悲鳴に目が醒めたけど、“つぁとぅぐあ”さんと“あとらっく=なちゃ”さんに舌なめずりされながら両手を掴まれている彼女を見て、同じ『接触者』である僕にとっても、日野さんの立場は決して他人事じゃないんだなぁ……と、僕は今更ながら深く深く傾いた。
「傾いてないで助けてくださ〜〜〜い!!」

 それから2日後の夜だった……あの事件が起こったのは。
 数日間続いていた雨も止み、久しぶりに静かな夜の帳をベッドの中で楽しんでいた僕は、ふと、窓の外から差し込む蒼い光に気付いた。
 この光には見覚えがある。いや、僕にとって決して忘れられないだろう、世界一美しい蒼光――
 “ばいあくへー”さんの輝きだ。
「先日はお世話になりました! “ばいあくへー”さんですね?」
『……そうよ』
 でも――僕は、その声に魂の底から戦慄した。
 あのおぞましい声が、“ばいあくへー”さんの声だと言うのか。
 記憶とは全く違うその声を、しかし“ばいあくへー”さんの物だと認識できたのは、彼女特有の『悲しさ』を、その響きの中になぜか感じたからだ。
「“ばいあ――」
『……来ないで』
 窓を開けようとした僕の手を止めたのは、彼女にそう言われたからじゃない。
 月光を背に受けて、薄手のカーテン越しに浮かぶ彼女のシルエットは――どんな悪夢でも見れないだろう、恐ろしい怪物のものだった。触手と肉腫の塊を、機械で造られたスズメバチの装甲で覆い隠したような……シルエットだけでは、これ以上は描写できない。でも、もしこのカーテンが開いていて、今の彼女をまともに見てしまったら、僕は間違い無く発狂していただろう……それだけは断言できる。
 恐怖と戦慄、絶望と嫌悪感に支配されて、指1本動かせない僕に、
『……あなたにだけは、見られたくないの』
 “ばいあくへー”さんのシルエットは、不気味に、恐ろしく、おぞましく――そして悲しそうに語りかけた。

『……雲井様が、近日中にあなたを抹殺しようとしている』
「え?」
『……私はその計画をあなたに伝えに来たの』
「…………」
 かけなしの勇気を総動員して、僕は“ばいあくへー”さんのシルエットをまっすぐに見据えた。
「ちょっといいですか? 以前から疑問だったんですけど……ええと、“ばいあくへー”さんは立場上は僕の敵ですよね。それなのに、なぜ僕を助けてくれるんですか?」
 数秒間の沈黙が、なぜかひどく長く感じられた。
『……私は雲井様に仕えるために、感情や情緒、人格、思考パターンが地球人類と完全に同一するように調整されているの』
「あのぅ、答えになっていないような――」
『……そんな事はどうでもいいから、私の情報を早く受け取って。もう、あまり自由に動ける時間が無いの』
 台詞と同時に、窓がほんの少しだけ開いて――
「ひっ!?」
 悲鳴を上げるのも当然だ。ぼたぼたと腐汁を垂らす、肉と機械が融合したような触手が僕の方に伸びてきたんだから。
「こここここ、これをどうしろと?」
『……触るだけでいいわ。それであなたの脳に直接情報が入力されるから』
 恐る恐る、僕はグロテスクな触手に指先を当てた。ぐじゅっと身の毛もよだつ感触が伝わってくる。でも、僕が指先を離さなかったのは、“ばいあくへー”さんを全面的に信用しているからだ。
 しかし――僕の脳裏に浮かんだ映像は、彼女の話とも、僕の想像とも、全く違う恐るべき内容だったんだ――

 ちょうど満月が天頂に差しかかった深夜。
 郊外にある、小さなコンビニのアルバイト店員は、他に誰も客がいないことをいい事に、休憩室で雑誌を読んでいたのだが――
「……あの……す、すいません」
 レジからのか細い声に、慌てて彼は飛び出して、
「はい、いらっしゃ――」
 顎が外れんばかりに絶句した。
 月の光が具現化したように美しい、蒼髪の美少女が、ぶるぶる震えながらレジの前に立っていたのである――それも、一糸纏わぬ全裸姿で!!
 御伽噺の妖精のようにスレンダーなプロポーション。きらきら輝く青い長髪。処女雪よりも白くミルクよりも柔らかな肌……そして、乳首とクリトリス、ラビアに食い込む毒々しいピアス。柔肌に刻まれた蛇の如き鞭の痕。秘所からぽたぽた垂れる、愛液とザーメンの滴。
 “ばいあくへー”だった。
 機械の翼は根元から毟り取られて、蒼い半透明の羽衣すら纏っていない。店員の視線から目を反らそうとする、その絶世の美貌は羞恥に打ち震えていた。雲井の要望により、人間と同じ感情を持つ彼女は、人間と同じ羞恥心を持っているのだ。
「……缶コーヒーを5本下さい……ホットで」
 今にも消え去りそうな声に、店員は茫然自失と値段を告げた。初めは絶句していたその瞳は、徐々に惚けてきて、今では明確な情欲の光を宿している。
「……お金は無いんです」
「そそ、そ、それじゃあ、売るわけには……」
「……お願いします……その代わり、私の…身体で……」
 その言葉と同時に、店員の理性は虚空の中に消滅した。

 ガチャガチャとあわただしくベルトを外し、ズボンとパンツを膝まで下ろす。そのペニスは店員自身にも信じられないくらい大きく勃起していた。
「か、か、金はオレが出してやる! だから……わかるだろ? 早くしろよ!!」
「……はい」
 “ばいあくへー”は悲しそうな表情のまま、店員の足元に膝をついて、ギンギンにそそりたつペニスに手を当てた。細く美しい指先がペニスに触れただけで、店員は呻き声を漏らした。シャフトと陰嚢をマッサージするように手でしごき、その小さな口には大き過ぎるペニスを、一生懸命口に含む。
「うおぉおお!!」
 彼は獣のような雄叫びを上げた。それくらい気持ちいい口内だったのである。どんな人間にも不可能な『人外の快楽』――それは男の正気を失わせるには充分過ぎた。
「……んぶぅ!?」
 男は乱暴に蒼髪を掴み、容赦無くペニスを突き入れた。フェラとはとてもいえない猛烈なイラマチオ。激しく前後に頭をシェイクされて、“ばいあくへー”は苦悶の涙を流した。太いペニスが食道にまで突き刺さり、呼吸すらできない。
「だ、出すぞ!! 飲めっ!!」
「……んふぅううう!!」
 奥の奥まで“ばいあくへー”の口にペニスを差し込んだまま、店員は凄まじい勢いで射精した。喉の奥に直接ザーメンを叩きつけられて、むせかえるのを必死に我慢する“ばいあくへー”の大きく開いた唇の端から、飲みきれなかった白濁液がゴボゴボと溢れ出す。店員は射精の快感に浸りながら、ゆっくりとペニスを抜き出した。
「……んはぁ……うえぇ」
 3分ぶりに呼吸ができた“ばいあくへー”は、大量のザーメンを嫌悪感に震えながらごくりと飲み込んだ。酸素不足で頭の中がガンガンする。人間形態の彼女は、肉体的にも人間とほとんど変わらないのである。このやっかいで残酷な身体も、雲井のリクエストだ。
「こ、こ、これでコーヒー1本分だ……に、2本目行くぞ!!」
「……はぐぅ!」
 まだ1・2回しか呼吸していない内に、再び店員はペニスを“ばいあくへー”の白濁液を垂らす口に挿入した。
 こいつのフェラは最高だ。1回や2回ではとても満足できない。
 必死になってイラマチオに耐える“ばいあくへー”の瞳から、涙がとめどなく流れ落ちた。
「……んふぅううう――!!」

 数十分後、5回ものフェラチオで最後の1滴まで精液を出し尽くした店員は、床に腰を降ろしながらはぁはぁと荒い息を吐いていた。足元には、チアノーゼ寸前にまでイラマチオを強制されて、もはや精魂尽き果てたようにぐったりと床に伏す“ばいあくへー”がいる。
 その目の前に、5本の缶コーヒーが放り投げられた。
「ほら、さっさとそれ持って帰れよ。客や店長に見られたら冗談じゃ済まされねぇ」
「……はい……ありがとうございます」
 “ばいあくへー”は小さく傾くと、よろよろと身体を起こした。四つん這いになって足を開き、いわゆる『雌豹のポーズ』を取る。ぱっくり開いた秘所は、少女のものとは思えないくらい熟して、女の匂いを醸し出していた。その姿勢のまま、彼女は熱い缶コーヒーの1本を手に取って――
「……んはぁ!!」
 店員は目を向いた。何と“ばいあくへー”は缶コーヒーを缶のままヴァギナに挿入したのである。その小さな性器には大き過ぎるだろう缶コーヒーによって、膣内は完全に塞がれてしまった。
「……あああ…あ……熱い…熱ぃいい……!!」
 手で持つ事も困難なくらい熱い缶コーヒーだ。“ばいあくへー”の性器は火傷しても不思議ではないだろう。しかし、彼女は苦悶の表情を浮かべながらも、新たな1本を今度はアナルに挿入し始めた。許容限界以上に大きな缶コーヒーに、アナルは限界まで伸びきっている。それでもゴリゴリと捻じ入れるに缶コーヒーを押し込んで、何とか無理矢理挿入する。そして、次は3本目を膣口に――

「……んぁあああ……だめぇ…入らな……ぃい……!!」
 十数分後、ヴァギナに2本、アヌスに1本缶コーヒーを挿入した状態で、“ばいあくへー”は苦痛と絶望に打ち震えていた。最後の2本は前と後ろに1本ずつ、3分の1ぐらいは挿入しているのだが、これ以上はどうしても入らないのだ。いや、ここまで中に収められた事が、人外の存在である事を考慮しても奇跡に近いだろう。
「おい、早くしろって言ってるだろ!!」
 店員が苛立ちながらも、サディスティックな嘲笑を“ばいあくへー”に向けていた。彼女の痴態はこれ以上ないくらい滑稽で淫猥なショーだ。ならば、見物料代わりに少し手伝ってやってもいいだろう。
「……でもぉ……無理、むりなんで…すぅ」
「それならこうしてやるよ!!」
 店員は一欠片の遠慮も無く、全力で“ばいあくへー”の缶コーヒーにつま先蹴りを叩き込んだ。
「……ぁああああああぁあ――!!!」

「……はぁ…はぁ……はぁああ……ぁあ……」
 点滅する街灯が逆に不気味は雰囲気を醸し出す裏通りを、“ばいあくへー”がよろめきながら歩いていた。1歩進めば壁に寄りかかり、2歩進めば腰が砕けそうになる。無理もないだろう。彼女の膣には3本、アヌスには2本もの缶コーヒーが挿入された状態で歩行しているのだから。しかし、こうして運ぶのも雲井の命令なのだ。逆らう事は絶対に許されない。
「……んあぁ…だめぇ……もう、歩けな…ぃ」
 “ばいあくへー”の可憐な美貌は苦痛と恥辱に歪み、悲しそうな瞳からは涙がとめどなく流れ落ちていた。痛い。苦しい。恥ずかしい。そして、悲しい――それは、“はすたー”神に仕える『奉仕種族』として存在している自分にとっては、今まで想像もできなかった感覚だった。あの男が人間の心など与えなければ、たとえ今の数万倍の責め苦を与えられても、こんな思いはしなくてもよかったのに……
「よう姉ちゃん、すげえ格好してるな」
「へへへ、変質者って奴か?」
 後ろからの下卑た男達の声に、“ばいあくへー”はビクっと小さな身体を震わせた。恐れていた事態が、また起こったのだ。
 ゆっくりと振り返った彼女の前には、いかにもといった風体のチンピラ達が、舌なめずりしながらにじり寄ってきている。
「……や、やめて……くださ…い」
「遠慮すんなよ。俺達と楽しもうぜ、変態さんよォ」

 悲鳴も出せずに、“ばいあくへー”は薄汚い路地裏に押し倒された。
「……いやぁ…!! やめてぇ……かはぁ…!!」
 四方八方から伸ばされるごつい男の手で、“ばいあくへー”は全身を滅茶苦茶にまさぐられた。愛撫なんて生易しいものではない。薄い乳房を握り潰し、細目の太ももをねじり、脂肪の無い腹に爪を立てる――これはレイプというより肉食動物に捕食される哀れな小鹿を連想させた。
「おい見ろよ。こいつマ○コとケツに缶コーヒーなんて入れてるぜ」
「マジかよ……本物の変態って奴だな」
「邪魔だ邪魔、とっとと取り出せよ」
「……んあぁ…ダメ! 取らないで――むぐぅ!?」
 か細い抗議の声を上げる口は、勃起したペニスで塞がれた。せっかく苦労して入れた缶コーヒーを、フィストファックの要領で無理矢理引きずり出される。その激痛に悶絶する“ばいあくへー”の中から、最後の1本が取り出されて、一息つく間もなく男達のペニスが入れ替わりに性器とアヌスに挿入された。
「はぐぅううう……!!」

 数十分後――
「へへへ、よかったぜ姉ちゃん」
「缶コーヒーも御馳走様っと」
 笑いながら男達が去った路地裏には、全身白濁液塗れとなった“ばいあくへー”が、声も出せずに大の字で横たわっていた。徹底的に陵辱され尽くしたヴァギナとアナルからは、赤と白のマーブル模様となったザーメンがとめどなくあふれている。魂が抜けたように惚けた彼女の顔の側には、飲み干されたコーヒーの空き缶が転がっていた。これで、また買い直す――いや、奉仕と引き換えに譲り受ける事をやり直されなければならなくなった。同じコンビニに行く事は許されない。必然的に雲井の自宅からどんどん離れた場所にあるコンビニに行かなければならないが、それはこうして今の自分の姿を誰かに目撃されて、陵辱される確率が増す事も意味していた。
 しかし――“ばいあくへー”はよろよろと立ち上がった。
 それでも行かなければならない。なぜなら、それが『奉仕種族』としての彼女の宿命だからだ。
 ……結局、“ばいあくへー”は、それから18回同じ事を繰り返す事となった……

「缶コーヒー5本買うだけで一昼夜かけるとは、いい度胸だな。“ばいあくへー”よ」
「……申しわけ…ああっ!……ありま…うぐぅぅぅ」
 色とりどりの油性マジックペンを弄びながら冷酷な青年――雲井 明は“ばいあくへー”の側にゆっくりと歩み寄った。
 ここは雲井の自宅、地下にある『拷問部屋』――元々は暴力団の末端の1人に過ぎなかった雲井は、“はすたー”神の『接触者』としての力を手に入れた後、その力をフルに活用して瞬く間に組織の頂点に昇り詰めたのだ。この邸宅も、本来はかつての自分が所属していた暴力団のボス――とうの昔に犬のクソにしてやった――の物だったのである。今いる『拷問部屋』も、暴力団時代のそれをそのまま再利用したものだ。
 拷問される側に心理的圧迫感を与えるように計算されたその部屋は、不気味なまでに薄暗く、壁一面には古今東西、あらゆる種類の責め具が展示品のように並べられていた。それら責め具はもちろん全て本物で、効果も保証付きだ。全部あの部屋の真ん中で悶えている女で試してみたのだから間違い無い。こういう時、不死身の身体は本当に都合がいい――雲井は邪悪に唇を歪ませた。
「……んぁあああああ!! だめぇ……あぐぅ!!」
 そんな拷問部屋の真っ只中で、“ばいあくへー”は奇怪なオブジェと化していた。
 両手は後ろ手に縛られて、両足は長めの鎖で石畳の床に繋がれているのだが、なんと床から2本の赤錆びた鉄柱が長く伸びていて、その頂点で“ばいあくへー”が股間を串刺しにされているのだ。大人の手首ほども太い2本の鉄柱は、それぞれ彼女の膣とアヌスに深々と突き刺さり、自分自身の体重でゆっくりと、しかし確実にずぶずぶと突き刺さっていく。限界以上に拡張されたヴァギナとアヌスからは、鮮血がとめどなく流れ落ちていた。

 しかし、この責め苦はそれだけでは終わらない。なんと鉄柱の根元には、青白い炎を吹き出すガスバーナーが設置されていて、炎の先端で鉄柱を炙っているのである。炎が直接当たっている個所は完全に赤熱化し、その面積は徐々に増加していった。“ばいあくへー”の秘所から流れ落ちる血も、鉄柱の途中で蒸気と化して消えてしまう。その臨界点は少しずつ彼女に接近しているのだ。
「……あはぁああうぐぅううううぁああああ――!!! 熱っ! 熱い!! あついぃいいいい――!!!」
「動くんじゃねぇ。せっかくパーティーの為に化粧してやってんだからよ」
 灼熱地獄に串刺し状態のまま悶える“ばいあくへー”の身体に、雲井は様々な色の油性マジックペンで落書きしていた。『雌犬』『チンポ入れて』『肉便器』『変態』『ザーメン注入口』『公衆便所』『発情中』……様々な淫語を“ばいあくへー”の身体に書いていったが、ふと手を止めて、
「マジックじゃそのうち消えちまうなぁ……よし」
 ピストルに似た奇妙な道具――機械式の刺青彫り機を取り出した。
 ガガガガガガガガガ――!!
「……きゃぁあああああああああ――!!!」
 全身に淫語の刺青を彫られる“ばいあくへー”の絶叫が、薄闇の拷問部屋に長く長く轟いた……

「……ふぐぅ…ふぐぅうううう……ぅうう」
 ギャグボールの奥から、くぐもった声が漏れた。
「もたもたしてんじゃねぇ。パーティーに遅れちまうだろうが」
 舌打ちした雲井は、『手綱』に火をつけて、“ばいあくへー”の背中の上に放った。
 ぱぱぱん!!
「……うぅぐっ!!」
 刺青が醜く彫られた“ばいあくへー”の背中に落ちた『手綱』――爆竹の破裂に、彼女は背中を仰け反らせて苦悶を全身で表現している。
 深夜――人気の全く無い住宅街の通りを、全裸で四つん這いとなった“ばいあくへー”が、苦痛と恥辱の行進を続けていた。身に付けている物は、ギャグボールに首輪、そしてヴァギナとアヌスに突き刺さった極太バイブだけだ。その極太バイブからは長い鎖が後ろに伸びて、車輪も付いていない大きな木箱と、その上に腰掛ける雲井を引きずりながら運んでいる。己の体重の倍以上あるだろう重量の木箱と雲井を引きずる“ばいあくへー”は、全身に脂汗を浮かべて、涙とよだれと愛液を垂れ流しながら、地獄の行進を続けていた。

 ぱぱぱん!!
「……ふぐぅう!!」
 少しでも這う速度が遅れたり、重い木箱と雲井を引くバイブが抜けると、『手綱』代わりの爆竹が身体の上で爆破する。今や“ばいあくへー”の背中は血みどろの火傷で覆われていた。
「なんだ、住宅街なのにあちこちゴミが落ちてて汚ぇなぁ……おい、ゴミ掃除するぞ。全部食え」
「…………」
 流石に“ばいあくへー”も聞き間違いと思った。その足の動きが一瞬止まる。
 ぱぱぱん!!
「……はぁうぐぅぅぅ」
「2度も言わせるな。パーティー会場までの道程、道に落ちてるゴミをお前が全部食いながら進むんだよ」
 “ばいあくへー”は言われた通りにした。どうせ拒否権は無いのだ。彼女は涙を流しながら、道に捨てられた紙くずを口で拾い、雲井の命令でよく咀嚼して飲み込んだ。落ち葉やビニールの切れ端、腐った魚の骨に雑草、空き缶や小石ですら苦労しながら飲み込む。
 そして、ついに目的地であるパーティー会場『緑化公園』に辿りつく寸前――
 電柱の側のダンボール箱に、捨てられたらしい子猫が数匹、か弱い鳴き声を上げて――
「よかったじゃねえか、久しぶりにザーメン以外のタンパク質を補充できるな」
「……いやぁああああああああ――!!!」

「……ひっく…えぐ……うぅぅ」
「いつまでも泣いてんじゃねぇ!!」
 緑化公園の外れに位置する公衆便所――その男子トイレの中で、異様な光景が繰り広げられていた。刺青と外傷で化粧された蒼髪の美少女――“ばいあくへー”が、乳首とクリトリスを貫通するリングピアスに鋼線を結ばれて、天井から高さ1mの位置に水平に吊るされているのだ。全体重がかかる乳首とクリトリスは限界まで伸ばされて、今にもピアスごと引き千切れそうだった。
 だが、まだこんな苦痛など序の口もいいところだ。
「この便所には少し細工がしてあってな、中でまる1日を過ごしても、外では1時間も経過しねぇんだ。おまけに、中にいれば人間は水も食事も睡眠すらも必要無い。そのかわり、お前は逆に無限再生能力が働かなくなるんだ。不死性はそのままだがな。『旧支配者』直々の細工だ。何者も解除できねぇ」
 独り言のような解説に、果たして何の意味があるのだろうか?
 “ばいあくへー”が苦痛の中で疑問を抱く間に、公衆便所の周囲にぞろぞろと人の気配が集まって来た。それは――
「おう、やっと来たか。もう始まってますぜ」
 一目で暴力団関係者と分かる者達、脂ぎった性犯罪者予備軍、垢まみれの浮浪者……誰もが情欲に狂った雄の視線で、続々と公衆便所に押し入り、“ばいあくへー”の周りに群がってくる。
「裏社会やネットで集めた、お前の陵辱志望者だ……さて皆さん、道具はたっぷり用意してありますぜ。好きに嬲ってくれ」
 蹴り倒した木箱から、バイブに蝋燭、鞭にローター、針に浣腸器、ナイフに有刺鉄線、スタンガン、etc……様々な責め具が転がり出た。下劣な男達は1人1人それを手に取り――“ばいあくへー”に一斉に襲いかかった!!

「……やぁあああ!! んはぁ!!や、やめてぇ……んくぅ!!」
 濡れてもいない性器に極太バイブが叩き込まれて、“ばいあくへー”は吊るされたまま仰け反った。アヌスに突き刺さった浣腸器状のカテーテルから、大量の水道水が直接流される。蝋燭の火で直接柔肌を炙り、溶けたハンダを振りかけた。棘だらけの有刺鉄線を身体に巻き、戦闘用の鉄鞭を容赦無く打ちつける。ハンドパンチャーでラビアや舌に穴を開けて、面白半分にナイフで肌を切り刻む。苦痛のあまり“ばいあくへー”が気絶すると、すかさず高出力のスタンガンが無理矢理覚醒させる……もはやこれは陵辱ではなかった。拷問の範疇も超えている。これは『処刑』だった。
「なぁ、こいつは便所なんだよな?」
「もちろん、そう本人の身体に書いてあるじゃねぇか」
「それじゃあ、遠慮無く……」
 浮浪者らしい男の1人が、恥垢まみれのペニスを“ばいあくへー”の悲鳴を上げ続ける口に挿入した。そのまましばらくしゃぶらせて、喉の奥に差し込んだら一気に――
「……んぶぅうううう!?けほっ!」
 浮浪者は“ばいあくへー”の口の中に放尿したのだ。食道に直接流し込まれた小便を、彼女は抵抗も許されずに全て嚥下するしかなかった。

「ふぅ、すっきりしたぜ」
 最後の一滴まで放尿して、紙代わりに彼女の美しい蒼髪でペニスを拭く。浮浪者の顔は歪んだ満足感に支配されていた。
「へへっ、面白ぇ事するな」
「じゃあ、俺も……」
「……い、いやぁああ……むぐぅ!!」
 男達は次々に“ばいあくへー”の咥内へと放尿していった。見る間もなく“ばいあくへー”の腹部が妊婦のように膨らんでいく。その内部は全て残酷な男達の排泄物なのだろう。
 “ばいあくへー”は、本当に『便所』にされていた。
「おい、面白そうな物を見つけたぜ」
「なんだそりゃ?」
 この大人数では一度に全ての男が彼女を責められない。そんな順番待ちをしていた男の1人が、公衆便所の近くで行われていた工事現場から、物騒な道具を失敬してきたのだ……個人用の小型削岩機を。
「こいつをどうする気だ?」
「へへへ……まぁ、見てな」
 男は先端のドリル部分にバイブを取り付けて、“ばいあくへー”のヴァギナに軽く挿入した。そのままスイッチを入れると――
 ドガガガガガガガガ――!!!
「……きゃぁああああああああああああ!!!」
 岩をも砕く高速回転と高速ピストンが、“ばいあくへー”の秘所を滅茶苦茶に粉砕した。飛び散る鮮血と肉片がスーツを赤く汚し、軽く舌打ちしてから、
「それじゃあ、たっぷり楽しんでくれよ……裏切り者への罰をな」
 雲井は悠然と去って行った……

 1ヶ月後――
「ぐわっ!!……ひでぇ匂いだ。本当に便所代わりにされたみてぇだな」
 再び公衆便所を訪れた雲井は、まずその凄まじい悪臭に顔をしかめた。ブランド物のハンカチで鼻を塞ぎ、意を決して中に入ると――
「……ぁ…………ぅ……ぁ………」
「へぇ、そんな状態でもまだ生きていられるんだな。さすが人外の存在は違うぜ」
 雲井は『腐肉』を靴先で軽く突ついた。
「安心しな、お前はまだ楽にしてやらねぇよ。次は戦闘用に改造して――」

「うわぁああああああ!!!」
『……っ!?』
 絶叫と同時に、僕の指先から触手が離れた。あまりに惨たらしい光景を『直接』目撃したショックで、全身の震えが止まらない。心臓は今にも爆発しそうなくらい激しく脈動して、恐怖のあまり体温が急速に低下していくのがわかった。
 ほんの1秒にも満たない時間、僕は“ばいあくへー”さんの触手に触れた。その一瞬の間に、今までの光景が僕の頭の中に雪崩れ込んできたんだ。
 あんなショッキングな映像を見せるなんて……どういうつもりなんだろう?
「……わぅん?」
「……御主人様、何事でしょうカ?」
 “てぃんだろす”が目を擦りながらベッドの下から這い出てきて、ドア越しに“しょごす”さんが声をかけて来た。僕の悲鳴はよほど大きかったらしい。
『……おかしいわ、あんな映像を見せるつもりは……データが書き直されている!?』
 “ばいあくへー”さんの動揺した声は、この事態が彼女にとっても予想外だった事を現していた。
「……“ばいあくへー”さん、今の光景は、まさか――」
 恐る恐る尋ねた僕に、“ばいあくへー”さんは悲しみに満ちた声で返答しようと――
『……あれは――』
「その裏切り者に対する制裁だ。つい先日実行された、な」
「!?」
 その時、“ばいあくへー”さんのいるベランダとは反対側の壁が、轟音と共にいきなり崩れ落ちた。
 そして、その向こうには――
「久しぶりだな、赤松よォ」
「ごごごごご、ごめんなさい〜!!!」
 嘲笑の形に唇を歪めた雲井氏と、その背後でぐるぐる巻きに拘束されて涙を流す日野さん。そして、カットジーンズが眩しいロッカースタイルの美女――“らーん=てごす”さんと、銀の仮面で顔半分を隠した、虹色マントの怪人――“ひぷのす”さんが!!
「さぁ、パーティーを始めようか」

 続く


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