「・・・いつもこんなこと、してんのか?」
「なにが?」
滴り落ちる水滴を拭きながら、次元はわずかに首を曲げた。
それはかしげているようにも、ただ、髪を拭くだけの行為にも見える。
「・・・こんな風に、男を誘ってんのか?」
「別にいつもじゃないさ」
タオルを首にかけたまま、うっそりと笑う。
重くたれた髪が、額にまとわり付くのをうっとおしそうに掻き揚げながら。
「たまにさ・・・おんなじ料理ばっか食ってると飽きるときがあるってだけ」
それはちがうだろう・・・
ぼんやりと銭形は考える。
確かに、決まった相手がいて、浮気をする場合なんかに男はそんな言い訳をする。
だが、普通は女ばっかりとしてて飽きたから男とする・・・って言うことにはならない気がする。
それをどうやって突っ込んでやればいいのか、うまく言葉が見つからない。
「何が気になる?病気?」
いや、相手がお前だということだ・・・・
というか、自分がどうしてここにいるかということが一番気になる・・・・
「別にそんなことじゃない」
「じゃあ、何?」
「・・・いや」
「いやなら帰れば?」
別に気にしている様子もなくそういわれ、銭形はためらった。
「・・・そうしたら・・・お前はどうするんだ?」
「さぁ・・」
「別の・・相手でも探すのか?」
「わかんねぇ。気分しだい」
「・・・いまは?」
「ん?」
「俺と・・・寝る気分なのか?」
「別に、あんたとってわけでもないかな」
ゆっくりと近づいてきた。
息がかかるほど間近に、その顔を見た。
目をそらすことも出来ずに、そのどこか甘さの残るタバコの香りをかぐ。
「・・でも、男の気分・・・かな」
ふっ・・と唇に柔らかいものが触れる。
わずかな間。
「・・・・・」
笑いを含んだ目が覗き込んでくる。
心の中まで。
大きな手が、そっと頬を撫でてくる。
その手はそのまま、首筋を伝わり、まだ服を着たままの体をなぞってくる。
「・・・・・・」
瞳をあわせたまま。
動けずにいる。
ぺろりと、鼻の頭を舐められた。
「お、おい」
「・・ふ・っ・」
細めた目。
小さな笑みを浮かべている。
すっとそらされた視線。
そのままその唇が、首筋に触れるのを感じた。
「・・・」
産毛の上を動いていくような乾いた唇。
くすぐるような柔らかい毛の感触。
厚い息を首筋に感じながら、相手の手が、自分のネクタイを緩めるのを感じる。
服の上から体を撫でる手。
その手が、そのまま下に下がる。
ズボンのふくらみの上を撫でる手。
服の上からでも分かる、大きな厚い手。
ふっ・・と体が寒くなる。
目を開けると、次元のさめた瞳と目が合った。
「・・・なんだ?」
「やめた」
「は?」
「やる気なくした」
次元は冷たくそういうと、さっさと服を着始めた。
「お、おい!」
あわてる銭形のことなど気にも留めずに、服を着こんで行く。
多分、この最後のほうが、私の気持ちのような気がします。
っていうか・・・・
何がしたいのやら・・・