始めに誘ってきたのは、あいつだった。
いつもの通りに、捕り物に失敗して上司に叱責されて・・・
自棄酒を飲んでいた俺のそばにいつの間にかいたのだ。
そのときの俺は、すでにその店で何軒目かもわからないほどによっていた。
そして、なぜあいつがそこにいるのかすらもわからないままに、絡んでいたと思う。
足元もおぼつかないほどに酔った俺は、あいつに肩を貸してもらいながら、その店を出た。

【家まで送るよ】

そういってくれたあいつに、しつこく絡み続け、ねちねちと上司に言われたいやみを言い続ける。
捕まらないあいつの相棒のことをだ。

【・・・・俺ならつかまってやってもいいぜ】

あんまりにもしつこい俺のくどくどとした話がいやになったのか、あいつがそういった。

【・・・・ただし、ベットの中でなら・・だぜ?】

笑いながら、そう言われ・・・・
多分、俺の話をさえぎるために言っただけなんだろう。
だが、俺はその話に乗った。
驚いているやつの肩をがっしりと掴み、そのまま手じかにあったホテルへと連れ込む。
ああ・・・ひどく酔ってたからできた事だ。
何しろ俺は、本当にノーマルな男なんだから。
いくら、最近女とご無沙汰だからといって、代わりに手近な男と・・なんてことは考えもしないれっきとしたまっとうな男だ。
今考えても、そのときの俺はおかしかったとしか思えない。

【・・・マジかよ・・・】

部屋に入るなり、やつの体を抱きすくめ、その唇を奪った。
奇妙なほどに酒とタバコの染み付いた口をむさぼり、そのままベットへと押し倒す。

【待てよ、待ってくれよ!】
【・・・誘ったのはお前だろうが】

俺はやつの服をむしるように脱がせる。
その間もやつの体を探りながら・・・・
今を持っても信じられない。
俺はそのときなんでそんなことをできたのか。

【待ってくれよ!いくらなんでも、手順ってもんがあんだろうがよ!】
【知るか!】

ズボンと下着を一緒に引き摺り下ろし、その体を押さえ込む。
やつは思いっきり、俺の体を跳ね除けた。

【落ち着けよ!】
【うるせぇ!捕まってやるって言ったのはてめぇだぞ!】
【そうじゃねぇよ!あんた、男の抱き方知ってんのかよ!】

その言葉に、さすがの俺も動きを止めた。
その程度の理性は残っていたらしい。

【・・・】
【・・・・ったくよぉ・・・】

やつは苦笑いして・・・
そして、俺の服に手をかける。

【・・・おい】
【心配すんなよ。ちゃんとやり方教えてやるから】

そういって、ズボンのチャックをはずす。
そういえば、着替えたのは何日前だ・・・
そんなことをぼんやりと考えていた俺のもんを、やつはためらいもせずに咥えた。
ぬめりとした暖かいものに含まれ、俺のものは一気に元気になった。
苦しそうに眉をしかめながら、俺のものを咥えるやつの表情に俺は高ぶる。
自分で慰めることすら、最近ご無沙汰だった俺は、程なくやつの口で頂点を迎えた。
久しぶりの快感に、俺は体中を震わせながら、たっぷりとその感覚を楽しんだ。
しばらくしてやつは俺のものから口を放し、そばにあったティッシュに口の中のものを吐き出した。

【たまってたねぇ・・】

笑いを含んだ声。
俺はなんだか酔いが覚める様な気がした。と同時に、わずかな理性が戻ってくる。

【・・・あ・・すまん・・】

うろたえる俺を見て、やつが笑う。

【誘ったのは、俺なんだろ?】
【い・・いや、だが・・】
【・・・もっといい気持ちにさせてやるよ・・・】

そう囁きながら、俺の腕の中に飛び込んできた体を思わず受け止める。
硬くなった自分と同じ器官を足に感じ、俺の気持ちは一気に萎える。

【・・・・お・・おい・・】
【あんたは何にもしなくていいさ・・】



その日、俺はやつを何回抱いたか覚えちゃいない。
はっきりいえるのは、それは俺にとって初めて知った快感だった。
いくら、女とご無沙汰だったとはいえ、こんなにも男に快感を覚えることが出来るとは思ってなかった。
朝目が覚めると、やつの姿はすでになかった。
おぼろげに覚えているその快楽と、やつの乱れる姿。
それは奇妙なほどに俺の中できれいなものとして残っていた。


やつから電話がかかってきたのは、それから一週間以上がたってのことだった。
聞いたこともない電話番号。
【・・・はい?】
【よう】

短い単なる呼びかけの声でも、やつだとわかる。
不意に心臓が跳ね上がる気がした。

【・・・・ああ】
【逢える?】
【いま?】
【そう】

短い単語だけの会話。
俺はためらいながらも・・・頷いていた。
電話口の向こうのあいつに見えるはずもないのに。

【・・・・・・どう?】

再び問いかけられ、俺は自分が声を出していなかったことに気付く。

【いい】
【・・・・・・この間んとこでいい?】
【・・・・ああ】

それが何を意味するのかわかっていた。
だからこそ俺は頷いていた。

【待ってる】

電話が切れる。
それと同時に俺は立ち上がっていた。
この間のホテル・・・俺は覚えているのだろうか。
おぼろげな記憶を頼りに、その場所を求める。
まだ明るい日の下で見るホテルはごく普通のビジネスホテルだった。
こんなところで、あんなことをしたのか・・・・
その事実にいまさら赤面する。
部屋番号までは覚えていない。
俺はフロントで、次元の部屋を聞いた。
俺が来ることはいってあったのか、部屋番号を素直に教えてもらえる。
エレベーターを待つ間、妙に気恥ずかしかった。
自分が何をしに、誰に会いに行くのかわかっていたから。
俺が部屋の前に立つ前に、扉が開いた。

【・・・早いな】

そんな笑いを含んだ声。
いつもどおりのスタイルの男に、俺は安堵ともなんとも言えないものを覚える。
足を速め、やつを押しのけるように部屋に入った。
部屋の真ん中で俺は立ちすくむ。
やつは扉を背に、じっと俺を見ていた。

【・・・・久しぶりだな】
【ああ】
【俺の番号は・・】
【あんたが寝てるときに】
【・・・そうか】

それだけ無防備な姿を晒したわけだ。
ゆっくりとやつが近づいてくる。
俺はなぜかそのまま後ずさりをした。
やつの手が、軽く俺の肩に触れる。
ほんのちょっとだけ押されただけなのに、俺はそのままストン・・とベットの上に腰を落とした。
座り込んだ俺の膝の上に、やつが乗る。
思い・・・
そして奇妙なまでに熱い。

【・・・来ると思わなかった】
【・・なんでだ】

やつのごつい指先が、俺のほほを撫でる。
ざらりとした指紋が、痛い。

【いま・・・素面だからだ】
【・・・・】

そうなのか?
俺は・・・いや・・多分酔ってる。

やつの指先が、俺のネクタイを緩める。
そしてそのまま首筋に顔をうずめる。
乾いた唇と、ふわりとした髭の感触が奇妙なまでにくすぐったい。
ぬめりとした舌が、肌に触れる。
やつはそうしながら、自らの服を脱ぐ。
タイを緩め、シャツのボタンをはずす。
片手で俺の首筋にしがみつきながら、器用にジャケットとシャツを腕からすべり落とす。
強くやつの匂いがした。
汗ばんだ男の匂い。
ある意味かぎなれた・・だがわずかに甘いものの混じったにおい。
眼の下にあるあらわになった肌は、ごつく毛深い。
そして、それを目にしておきながら、俺は興奮していた。
やつの手が、そんな俺のものをズボン越しに触れてくる。

【・・・】

深いため息。
だがそれは熱くそして湿っている。
指先が、器用に動く。
俺の形をなぞるように、そして確かめるように。

【・・・・・よかった】
【・・・何がだ】
【・・・・】

やつは答えない。
そしてただ、俺の服を更に脱がせた。
指先が、俺のむき出しになった肌に触れる。
乾いたざらりとした感触。
肌の上を走る指先は、俺の筋肉でも確かめているかのようだった。
滑り降りるように、やつが体を落とす。
俺の足元にそのままひざまずく。
見上げる目。
媚を含み潤んだ瞳。
半裸の肌が、女以上になまめかしく見えたのはなぜだろう。
やつの手が、俺のズボンにかかる。
ベルトをはずし、ボタンをはずす。
チャックを下げる音はなぜか俺の耳にひどく大きく入った。
下着を下げると飛び出す俺のもの。
興奮しきって・・・・刺激を待っている。
やつは片手でそれを掴み、そして俺を見る。
まるでこのおもちゃで遊んでもいいのかどうか確認しているかのような目で。
俺はただやつを見ていただけだった。
やつはそのままうっとりと、俺のものに唇を這わせる。
乾いた唇でなぞるように。
かさかさとした刺激が、敏感になっていた俺のものに強く感じる。
厚い舌が、ねとりとそれを舐めあげる。

【・・ふ・ぁ・・】

思わず口から、たまらず声が漏れる。
その声に反応したかのように、やつの舌は更に激しく俺のものにまとわり付く。
絡みつき、吸い上げ・・・
俺は瞬く間に頂点に押し上げられた。
思わずやつの頭を押し掴み、更に喉元深くへと、押し込む。
奇妙な動きをするその暖かい箇所にたまらず俺は精を吐き出した。

【・・ぅ・・・っ】

苦しげにもがく体を押さえつけ、自らのものをその喉深くに吐き出す。
俺がやっと手を緩めると、やつはまるで、窒息でもしそうなほどに激しく咳き込んでいた。

【・・・・すまん】

あまりに苦しげな様子に、さすがに罪悪感がこみ上げる。

【・・いや・・・ごめん】

咳き込み、なみだ目になりながら、俺を見る。

【・・・あんまり・・・飲むの・・】

そうつぶやき、また咳き込んだ。
おれはどうしていいのかわからずに、ただぼうっとしていた。
やっと落ち着いたらしいやつは、ゆっくりと立ち上がる。
そしてそのまま、服を脱いだ。
ああ・・今度は下もだ。
さすがに俺は目をそむけた。
自分と同じ器官を目にして・・・わかっているはずなのに、やつが男だと再認識する。

【・・・ひでぇな・・】

やつはそういって、俺の膝にまたまたがってきた。

【・・・すまん】

思わず謝る。
だが、どうしても、やつのものを見る気もふれる気もしてこない。

【・・・・・いいけどね】

やつの唇が再び、俺の首筋に触れてくる。
今度は湿り、柔らかな感触で。
そして、俺の吐き出した青臭い匂いを撒き散らしながら。
やつの手は俺の体中を這い回る。
湿った指先が俺の体を確認するかのように。
俺の唇に触れたのはやつの指。

【・・・・・・舐めて】

そんな言葉。
差し出された日本の指先は硝煙の香りがするようだった。
ごつごつとした奇妙な位置に豆のある指。
唇を割って俺の口腔に侵入してくる。
俺はためらいながら、その指先に舌を這わせた。

【・・・ん・・】

奇妙なことに、それだけでやつは興奮するようだった。
指先を舐め、舌を這わせてやるだけで・・・やつは体を揺らしていた。

【・・・ん・・・・】

やつの手が、俺の背中にわずかに爪を立てる。
俺の腹に触れるやつのものが、びくびくとしているのがわかる。
ぬるりと俺の口から、唾液を引きながら指先が抜けていく。
なぜか口元が寂しくなり、唇を舐めた。
やつは俺の唾液でぬれた指先を一舐めし、そしてそれを自分の後ろに這わせた。

【・・はっ・・】

何をしているのか・・・
わかっているようでいてよく俺はわからない。
やつはそうしながら、俺にしがみつき、肩口に顔をうずめる。
体がびくびくと跳ねているのがわかる。
かすかに上げる喘ぎと吐息が熱く俺の耳にかかる。
おれはどうしていいのかよくわからないままに、その体を抱きしめるようにしていた。

「・・・あっ・・ふ・・・」

そのままゆっくり押し倒される。
上から、やつが俺のことを覗き込む。
俺の肩に手をかけ、ゆっくりと体を移動させる。
その表情・・・
自覚のないままに、俺のものは立ち上がり、そしてそんな俺を確認するかのようにやつの指先が触れる。
すべるように、その指が俺のものをなぜる。

【・・・・くっ・・】

いつの間にか、やつの唇にはゴムの袋が銜えられていた。
器用にそれを開けると、なれたしぐさで俺のものにかぶせる。
そしてそのままに、やつは腰を落としてきた。

【あ・・っ】

狭い器官が抵抗するかのように、それでも俺を受け入れる。
ねじ込まれていく俺のもの。
狭い器官は悲鳴を上げるかのように、俺に抵抗する。
それが、たまらなく俺を刺激する。

【・・ぅ・・っ】

それでも俺のものはすべてがその暖かい場所に迎え入れられる。

【・・ぁ・・っ・・】

締め付けてる。
絡み付いてくる。
その感覚は、女では与えてもらえない快感だった。
やつの苦しげな、切なげな表情。
それが俺の中の男としての征服感を満足させる。
荒い息を吐きながら、やつは、ゆっくりと動き始める。
わずかに、だが、そんな動きでさえ、俺のものはきつく絞り上げられ、たまらない快感に浸れる。
両手で必死で自分の体を支えいるやつの腕が崩れ落ちそうで、俺はその体を支えてやる。
汗ばんだ肌は熱くて、触れてやれば、そこが燃えそうなほどだった。
やつの唇からは、小さな喘ぎが漏れ続けている。
ゆっくりだった動きが少しずつ早くなっていく。
そして、俺はその強い快楽に溺れていく。
声が激しくなる。
かすれ声が俺の興奮を更に高める。
やつは自らのものをしごき始めた。
そうすると、更に俺のものはきつく締め付けられ、思わずうめき声を上げる。

【あ・・・ぁ・・っぃ・・っ】

体の揺れが激しくなる。
そしてそれは俺を一気に高みへと押し上げた・・・・・・


それから・・・
やつと会うようになった。
教えた覚えのない電話に呼び出しの電話が入る。
俺は止めればいいのにのこのことそこへ行く。
やつは待っていて・・
俺はやつを抱く。
ああ、もう、今は酔っちゃいない。
それでも、俺はやつを抱き続けている。
ノーマルだと信じていた俺の嗜好は間違っていたらしい。
硬くてごつくて毛深いやつの体をむさぼり、快楽を得る。
自分と同じもんに触れるのはまだ抵抗があったが、それも少しずつ慣れてきている。
こんなことはいけないことだ・・あらゆる意味で。
そう理性ではわかっていても止められなかった。
やつからの連絡は不定期だった。
一月も連絡がないかと思えば、週に何度も連絡が来たりした。
そのたびに、俺は断りもせずに会いにいく。

【仕事か?】
【ん?】
【・・間が開いたからさ】
【・・・・・いろいろあんだよ、俺にもな】

そういう男に、俺は別のやつの影を見ていた。
ああ・・・俺にはわかって痛んだ。
やつは別に誰かいるって。
やつ自身は気付いてないような箇所に残されているのだ・・・別の男の所有痕が。
それでも・・・やつが俺に逢いたがるということに、俺はうぬぼれてもいいのだろうか・・・
そして・・・
いつの間にか・・・・
俺はやつとしか寝なくなってた。



久しぶりの電話があった。
いつもの場所で・・・というメール。
俺はうずくものを抑えながら、待ち合わせ場所に急ぐ。
いつものなら、先に来ているはずのやつが、珍しくいなかった。
約束の時間の五分前。
これから食事でもして・・・それでもたっぷりと時間はある。
俺ははやる気持ちを抑えながら、やつを待っていた。
不安になったのは、約束の時間を十分過ぎてからだ。
時間に正確な男にしては珍しい。
何かあったのか・・・・
俺は電話をしようかしまいか考えていた。
電話を手の中でもてあそびながら、やつの番号を呼び出してみる。
かけるな・・・といわれている。
何をしているときかわからないから・・・そういって。
・・・それは多分、他の誰かといるときなんだろう・・
どうする・・・・かければきっとやつは怒る。

「よっ」

後ろから不意に肩を叩かれた。
俺は本当に椅子から飛び上がった。
その声に聞き覚えがあったからだ。

「る・・」

振り向きかけた俺の肩にその細いあごを乗せながら、ルパンが俺の携帯を覗き込んでいた。

「ルパン!お前、何で・・・」
「ふふん・・どこに電話かけようとしてるのさ」

その言葉に俺はあわてて、携帯を閉じた。
もう遅かった。
登録されている携帯番号。
それをみただけで、ルパンには誰だかわかるだろう・・・・一番見慣れているはずだから。

「お相手が来なくて残念だねぇ」

その茶化したような言葉に俺は黙る。
いつもなら出てくる決まりの言葉すら言うことが出来ずに、俺は固まったままルパンの言葉を待っていた。
ルパンは俺の肩にあごを乗せたまま、軽いキスを俺の頬にした。

「一緒に来てもらっちゃおっかなぁ」
「・・・・ど・・どこにだ」
「んんっ?言う必要ってあるの?」

必要ないだろう・・・
俺は付いていくことしか出来ないんだから・・
ずしりとしていた重さが肩から消える。
軽い様子で立ち上がったルパンは、すでに俺に後ろを向けていた。
警戒心のまったくない後姿。そんな背中はみたことがなかった。
まるで付いてくるのが当然といった感じに軽快に歩いていく姿をぼんやりと眺めた。
椅子に張り付いてしまったかのように、腰が重い。
店のすぐそばに止めてあった車にやつは乗り込む。
いつもとは違う大衆車。
ハンドルを握ったルパンが、不思議そうに俺を見た。
大きなよく動く目が、俺を見ている。
きらきらと光りながら・・・・
ナイフのように、恫喝する。
のろのろと俺は立ち上がり、車に向う。
扉はひどく冷たく重い。
それでもやっとの思いで助手席に座った。

「・・・いこっか」

楽しげな口笛が聞こえた。
陽気にハンドルを握る男。
そして俺の運命までも、陽気にその手に握っている。
車は静かに走る。
珍しく安全運転をする気分らしい。

「・・・どこにいく?」

自分の声とは思えないようなひび割れた声。

「俺のアジト」
「お前たちの?」
「ううん、俺の。個人的にね・・女の子といろんな事するときに使ってる場所」

何か・・・いやなものが走った。

「・・・・・何でそんなところに」
「いろいろ都合がいいから」
「都合が・・・いい?」
「そう。どんなことをしててもだーれも来ないような場所だから」

口元だけで笑う。
俺は更に深く椅子に座り込んだ。








見た目は古ぼけていて廃屋と化している別荘だった。
ルパンはなれたしぐさで鍵を開け、中に入る。
信じられないことに、中はきれいに整えられていた。

「・・・・ここが・・・お前の・・・アジトか?」
「そう。女の子とやばいことするときに使ってるんだ」
「・・・・それじゃあ、汚れる暇もねぇか」
「いやぁ、汚れるよ。別のもんでね」

軽く肩をすくめたルパンは、にんまりと笑いながら、俺の周りをぐるりと回る。
まるで俺という男の存在を確認するかのように。
そして、俺の中に、別の男のことを捜すかのように。

「・・・ふーん・・こうしてみるとさ」
「なんだ?」
「銭さんって結構いい男だよね」

いまさらわかったのかよ・・・
そういおうかいわまいか考える。
ルパンの白い指先が俺の服にかかる。

「何をする!?」
「脱いで欲しいなって思ってさ」
「・・・・・馬鹿か貴様」
「あん?」
「何で貴様の前で、脱がなきゃいけない」

ちょっと驚いたように眼を開いたルパンは、くつくつとのどの奥で笑った。

「俺以外の前でなら脱げるわけ?」
「風呂場と女の前でならな」
「・・・・俺の゛女゛の前では?」

奇妙な棘が俺の心臓を突き刺した。

「・・・・・どういう意味だ・・・」
「脱いでよ、銭さん。無理矢理って言うの結構好きなんだけどさ、自分も痛い思いをしてまでってのは、いやなんでね」

真っ赤な唇が釣り上がる。

「・・・いやだといったら?」
「一張羅なんじゃないの?その服。だめになってもいいなら、俺も無理矢理するけれど?」

軽い調子で。
だがいつもと違う口調で。
ルパンは俺に命令した。

・・・・俺に、拒絶する術はない・・・・


すべてを脱ぎ終えた俺を、まるで検分するかのように見ながら、ルパンは椅子を勧める。
みただけで怪しげな椅子だ。

「・・いい」
「座ってよ。俺あんまり体力使う気分じゃないんだもん」
「どういう・・」
「いいからさ」

強引に座らされた椅子は、案の定、拘束具付だった。
両手は肘掛に固定され、足もそれぞれにくくりつけられる。

「さて・・じゃ、お話しましょっか」

そうして拘束された俺の前に、椅子を持ってきたルパンが、にっこり笑って座った。

「・・・・・お前と話したいことなんてないがな」
「ここまで付いてきてそれはないんじゃない?」
「うるせぇ・・」

思わず顔を背けた俺に、くつくつという笑い声だけが耳に入る。
いやな笑いだった。

「まず聞くけどさ・・あそこには何でいたの?」
「ああん?」
「次元に呼び出された・・・違う?」
「違うな」

即答する。
認めるわけにはいかない。
ああ・・・そうだ。

「へぇ・・違うんだ」
「ああ。たまたまだ」
「ならさ・・・誰に電話するつもりだった?何のために?ん?」
「お前には関係ない」
「・・・・・なんかやだなぁ・・・」

ルパンはじっと俺のことを見つめながら、つぶやいた。

「・・・まるでさぁ・・・あいつの事かばってるみたいじゃん」
「・・・知らんな」

俺の言葉にルパンは笑う。

「あのさぁ・・知ってた?次元が俺の゛女゛だって」

その言葉は俺に突き刺さる。
それは感じていたことだった。
いや・・やつに俺以外の決まった相手がいるって事を感じていたんだ。
誰だかは・・考えないようにしていたが。

「・・・・ふーん・・・気づいてたわけだ。その顔だと」
「そんな気持ちの悪い話は聞きたくないな」
「気持ち悪い?よく言うよ。自分だっておんなじ事してたくせに」
「知らんといっているだろう!」
「いいや、知ってるはずだよ。だって次元の電話を使ってあんたを呼び出したのは俺なんだからね」

その言葉に固まる。

「どうもここんとこ、やつの様子がおかしいからね。風呂に入ってる隙に電話を見てみたわけ」
「・・・・仲間のすることじゃねぇな」
「じゃ、こういえば納得するわけ?俺の゛女゛が浮気をしてるみたいだったから携帯をチェックした」

俺の゛おんな゛

その言葉が俺に突き刺さる。

「で、一番よくかけてる電話にかけてみたわけ」
「・・・・・」
「あんたよりも次元のほうが、ちゃんとしてたよ。あんたの名前も仕事仲間の名前を使ってたしね」

無防備な俺に比べてか・・

「誰が来るのかと思ってたらさ・・びっくりしたよ。まさかあんただとは思わなかったからね」
「だから違うといってるだろう」
「往生際が悪いんだね、銭さん」

ルパンの白い指先が俺のほほを撫でる。

「ここまで着いてきておいて・・・」
「お前らのアジトを確認するために決まってる」
「・・・ふーん・・」

ゆっくりとその指先は、俺の唇をなぞり、そのままあごをすべる。

「あいつ上手だったでしょ」
「・・・何がだ?」
「いろんなこと。もちろん、ベットの中でのことだけど」
「知らないといってる!」
「ごまかさなくてもいいよ。俺があいつのことはしっかりと仕込んで合ったからね。たっぷりと楽しめたでしょ」
「・・・・・なら、今度楽しませてもらおうか。お前のお勧めなんだろう」

ぱん・・・

という乾いた音が聞こえた。
それは俺の頬から鳴っていた。

「ごまかすのもいい加減にしてよ。俺もさすがにいらいらしてくる」
「・・・・ふん、まるでやきもちを焼いて何にも見えなくなってる寝取られ亭主って感じだな」

もう一度、おんなじ音がした。
口の中に鉄さびの味を感じる。
白くて細い指が、まるで舞うかのように俺の体にまとわり付く。
俺の萎え切ったものをからかうように指先でつつく。

「ふーん・・ずいぶんと立派なもんもってんじゃん」
「さわんじゃねぇ!」
「次元が夢中になるわけだよ」

そういってルパンは俺のものを指先でからかい続ける。
それはかなり上手な動きだとしか言いようがない。
久しぶりのその刺激に俺のものは見る見るうちにでかくなった。

「・・・くぅ・・」
「たまってるんだね・・・・最近次元に会ってないからかなぁ」

そんな風にからかわれながら、俺は高みへと上がっていく。
だが・・・
その寸前にやつの指は刺激を止めた。

「・・ぅ・っ・」
「さぁて・・・いっつも次元とはどんなことをするのか教えてもらっちゃおっかなぁ・・」
「言う・・ことなんぞ・・ねぇ・・」

ルパンは笑う。
そして、再び、俺の体を刺激し・・・寸前でとめる。
その戯れが繰り返される。
俺は必死で、抵抗した。ああ・・そりゃあそりゃあ必死でだ。
懇願の言葉がもれそうになるのを唇を噛んでとめた。
だが、どんなにがんばったところで、ルパンは許しちゃくれない。
やつは俺と次元とのことに確信を持っていたから・・・・
ルパンのくすぐるような指先と唇に、翻弄され続けた。
そして・・・・

「ふーん・・そっかぁ・・次元からね」
「・・あ・・ああ・・」
「えらいえらい。よく言ってくれたね」

ルパンは俺に口付けをすると、あふれる蜜を指先に救い先端にまぶす。

「ぁ・・ふ・・・っ・・」
「・・・んんっ・・いい声。次元に負けてないよ」
「・・・っ・・っ・ぁ・・・っ・・」
「ちゃんと・・ご褒美上げるからね」

あの細い体のどこにそんな力があるのか・・・
俺はルパンに抱きかかえられ、ベットに放り出された。
いつの間に服を脱がされたのかもわからないまま・・・
俺は体を引き裂かれた。


「これはね、ここんとこにつけるやつ」

ルパンは楽しそうに、俺の前にいろいろなおもちゃを並べる。
カラフルでグロテスクなものがずらりと。
いま、ルパンの持っているのは、奇妙な筒のようなものだった。
俺は首に鎖をつけられ、後ろ手に縛られている。
逃げないように・・・
ルパンは俺の怯えて萎えているものを摘み上げる。

「ここに入れるとね、こいつは立たなくなっちゃうの」
「・・立たなく・・?」
「そ、つらいよぉ、朝とかね」

とてもとても楽しそうだった。

「どんなに気持ちよくっても・・・立つこともできないからさぁ」

そういいながら、やつは、俺のものをその筒の中に押し込める。

「・・ぁ・・っ・・・」
「あんたがどれぐらい我慢できるのか楽しみだよね」
「・・・ぅ・っ・」
「ちなみにこれは、次元も大好きだったよ。こいつをつけると、すごくいい子になるんだ」

チュッと音を立てて、俺のほほに口づけをしながら・・ルパンは俺の後ろを探った。

「あ・・っ」
「時間はたっぷりとあるからね・・・・あんたを俺好みにする・・・」



俺はもう、縛られたりしていない。
ああ・・体を縛る必要なんてなくなったからだ。
俺は裸のまま、ルパンの足元に膝ま付き、最後の奉仕をしていた。
最後・・・それはこの別荘での最後の日というだけだった。

あんたの有給は一週間にしてあるからさ・・・

どういう手を使ったのか・・・
俺は有給中ということになっているらしい。
明日から仕事に行かなければいけないから・・・
これからいつでも呼び出されると思うが・・・
ルパンの吐き出したものを最後の一滴まで吸い上げる。
男のものを加えることなど考えたこともなかった。
だというのにこれがうまいと感じるようになったのが不思議だ・・・

「・・・・ふーん・・・」

ルパンの手の中にあるのは、俺の携帯。
中の履歴を見て、ルパンは面白そうに笑っている。

「次元、次元、次元・・・」

呼ばれる名前。
すでに懐かしいとまで感じるほどに。

「・・・・・・・まったく・・・ねぇ・・・あいつと来た日には、俺が目を離すとすぐにこれだもん」

ルパンの白い指先が、携帯のボタンをいじっている。

「はい」

履歴の消された携帯。
俺はのろのろと服を身に付け立ち上がる。
奇妙なほどに・・・この場が、この男が・・・・・名残惜しい・・・



家に帰ると、すえたようなかびた匂いが充満していた。
一週間以上窓を開けていなかったから・・
俺はため息をつきながら、そっと窓を開けた。
とたんになった携帯。
発信者は・・・次元。

「・・・・・もしもし・・」
『やっとでた』

笑い声。

『どうしたんだい?急に有給までとって連絡取れなくなるなんて』
「・・・・海外のほうで、仕事をしてたんだよ」
『そうか、で、今からどうだい?』

ずきん・・・
とした。

「・・・・いまは・・・無理だ。帰ってきたばかりでな・・」
『・・そうか・・うん、わかった』

寂しそうな声に胸が痛む。
だが・・・俺はもう、やつを抱けない。
多分・・・




ルパンから電話があった。

『銭さん、今度の土日はお休みでしょ?久しぶりにゆっくりしようよ』

呼び出されたのは、俺の知らなかったやつのアジト。
細かく道を教えてもらい、俺はそこに向った。
玄関のチャイムを鳴らす必要はないといわれていた。
俺はそのまま素直に扉を開けて中に入る。
靴のまま中に入り、わずかに音の聞こえてくる扉を開けた。
一番初めに目に入ったのは、テレビ。
何かよくわからないバラエティ番組。
かすかに頭の覗く大きなソファ。
そして・・・入ってきた俺を見て、動きを止めた次元。

「・・ぜ、銭形?!」

驚く声。そして立ち上がり、当然のように腰に手を当てる。

「ああ、いいのいいの、次元ちゃん」
「・・え?」
「俺が呼んだの、銭さん」
「・・・な・・・何?」

次元が驚いたように、俺とルパンの顔をあわただしく見つめる。
うろたえ、よくわからないというように。

「銭さん、頼んでたものは?」
「これだろう」

俺は手に持っていたボストンバックを、ルパンの寛いでいるテーブルの上に置いた。
ルパンはちょっとだけそれに目をやると、あごをしゃくった。
その促すしぐさに俺はそのチャックを開ける。
出てきたものはさまざまグロテスクなおもちゃ。
かつて俺も見させられたあれだ。
一つ一つ、それがテーブルに並べられる都度に次元の顔色がなくなっていく。

「・・・ル・・・ルパン・・・」
「ちゃーんと、頼んだもんは買ってきたみたいだね」
「・・・ああ」

次元がずるずるとその場にしゃがみこむ。
ルパンはおもちゃを手に取り、面白そうに眺めながら次元に差し出す。

「ほら、次元ちゃんのために買ってきてもらったんだよ?どれがいい?」

引きつった顔。
俺とルパンを見比べ、口をパクパクとさせいてる。

「・・・なん・・で」
「あっはぁ、これなんてどう?次元ちゃんの好みじゃない?」

ウィン・・・っという、奇妙な音とともに、持っていたおもちゃが奇妙な動きをする。
その動きをうっとりとしたようにルパンは眺め、次元の目の前に突き出す。

「ほら、俺がかまってあげれなくて寂しいときは、これで遊んでればいい」
「・・ル・・」
「ね、それともこっちのほうがいい?ぜーんぶ、次元にあげるよ」

いやいやをするように次元は首を振る。
ルパンの細い指先が、次元の太い手首を掴む。
次元は・・・動けずに、引きずられるようにルパンの足元に崩れこむ。
その目の前に突き出されるグロテスクなもの。
目をそむける次元のあごを掴み、その口元にルパンはそのおもちゃをねじ込む。

「・・・まーったくさ」

涙すら浮かべながら、口元でいやな動きをするものを何とか吐き出そうとする次元のあごを掴んだまま、その顔を覗き込む。

「いつも言ってるでしょう?寂しいからって、あんまり浮気はだめだよって」
「・・・ふっ・・ふっ・・」
「次元ちゃんはさ、ただでさえ誰かに頼りたいタイプなんだから。おんなじ人と浮気してりゃ、本気になっちゃうでしょ」

口元からよだれをだらだらとたらしながら、首を振り続ける。

「浮気は許すけど、本気は許さないって言ってるでしょ」

ほほを伝わる涙を優しく舐め上げながら、そのおもちゃを更に喉元深くに押し込む。

「・・ふ・っ・ぅ・・っ・ぅ・・・」

何とかそれを吐き出そうと、うめいているのがわかる。
そして助けを求める瞳で俺を見ていることも。
俺は動けない。
ちらりとそんな俺を見て、ルパンはゆっくりと次元の口から、そのおもちゃを引き抜いた。
ぬらぬらと光りながら抜かれたそれ。糸を引きながら引きずり出されたそれは俺の息を荒くさせた。
荒い息を吐きながら、肩を揺らしている次元を優しくルパンは抱きしめる。
わずかな抵抗。
だが求められるがままに唇を合わせ、舌を絡める。
その口元から、くちゅくちゅという水音が聞こえてくる。
俺はただ、その場に突っ立ってそんな二人を見つめていた。

「・・・ル・・・ルパン・・・」
「いってごらん・・・次元、お前は誰のもの?」

震える唇。
次元の瞳が中をさまよう。
俺の何かがまるでやつの回りにいるかのように。

「・・お・・お前のもの・・」

かすれた声で伝える言葉。
じっとルパンはそんな瞳を覗き込む。
思わず伏せた瞳。
無理矢理あごを掴まれる。

「・・・ごめんねぇ・・あんまりかまってあげなくって。だから寂しかったんだよね・・あんな親父と浮気するなんてさ」
「・・・・」

ぶるぶると体が震えている。
その体を抱きしめてやりたい衝動に駆られる。

「・・・・ル・・」
「ね、次元」

次元は目を閉じる。目じりから、また涙がこぼれた。

「・・・あ・・ぁ・・ぁ・・・ぁぁ」

俺から顔を背け、ルパンに手を伸ばす。
その体にしがみつき・・・

「・・・お・・俺が・・・お、お前以外の相手に・・・ほ・・本気になんて・・」

その言葉に、きりきりと胸が痛む。
それはきっと、俺を守るための言葉だとわかっていても・・・
俺には突き刺さる。

「そうだね・・・次元ちゃんを満足させられるのは、俺だけだよね」
「・・あ・・ぁ・・・ぁぁ」

その背にすがりつきながら、次元は幾度も頷いてた。

「・・だ・・だから」
「ん?」
「・・・・・あいつを・・・帰して・・・」

ゆっくりとルパンが俺を見つめる。
いたずらっぽい瞳は、それでも俺を威嚇する。

「・・・帰る?」

その問いかけに俺はゆっくりとくびを振る。

「か、帰れよ!帰れ!」

そう叫ぶ次元を無視し、俺はルパンに近づく。
そして、その手の中のグロテスクなものを銜える。
やつの唾液の絡みついたそれを、喉元深くまで、銜える。

「・・・ぜ・・」
「んふっ・・・ここにいたいよね」
「・・ああ・・・」

絶望のうめき声を上げる次元を優しく抱きすくめながら、ルパンはその耳元に囁く。

「銭さんは、いいペットになったよ。お前も躾け直しだね」




日曜日の夜だ。
ルパンは俺を解放した。

「明日っからまた、仕事だもんね」

そういって笑う。
ああ・・・俺はまた職場に戻る。
煩雑な日常に。
俺は服をのろのろと着替える。自分の体についたさまざまなルパンの証を確かめながら、服を身につけていく。
ぐったりと横たわっている次元はそんな俺をうつろな瞳で見上げている。
その汚れた唇や、縛り上げられた体は、俺にその場にとどまるようにいっていた。
だが俺は立ち上がる。
ゆっくりと扉を開ける。

「・・・ぜ・・・にさん・・・」

かすれた・・・小さな声。
でも、俺の耳には奇妙なほど、大きく聞こえる。
俺は思わず振り向いた。
わずかに、首を上げ、そしてほんの少しだけ笑みを浮かべる。

「・・・銭・・さん」
「・・・・ん」
「・・・・・本気になって・・・・ごめん・・・・」

それまで笑みを浮かべていた、ルパンの唇が奇妙な形にゆがむ。
ゆっくりと立ち上がり、動けずにいる次元の髪を掴む。

「・・・認めちゃうんだ・・・次元ちゃん」
「・・・ひ・っ・・」
「本気だったって・・・認めるんだ」

不自然なほどに反り返った首筋は、細く頼りなかった。

「・・・本気で躾直しが必要なんだね・・・」
「・・ひ・・・ぃ・・・・ぃ・・・っ」

俺はその悲鳴を聞きながら・・・・扉を閉めた。

・・・・中途半端です。
なんか、ばらばらとしててまとまりのない・・・
誘い受け話だったのに・・・最後はル銭になって・・・
何がやりたかったんだろう・・・

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