「…んん…ザックス…!あ、もぅ…ダメぇ!!」
一際高い声を上げて喘ぐクラウドに煽られザックスは更に腰の動きを速めた。
「ん!あ、あ!やああ、イク…っ!!」
「…っう」
収縮する内壁に堪らずザックスはクラウドの中で果てた。
* * *
「オレ風呂入ってくるわ」
「んー……」
寝室での情事を終え、ぐったりしているクラウドの頭に軽くキスをすると、ザックスはバスルームへ向かうべく部屋から出て行った。
先ほどの熱がまだ冷めきらないクラウドはモソモソとベッドの上で身体を動かす。
不意にベッドを彷徨っていた手が何かを掴んだ。何だろうと目の前まで引っ張って来ると、それはザックスが先ほどまで着てたソルジャー用のタートルネックシャツだった。
そう、ミッションを終えて帰宅したザックスを出迎えようとして、そのまま襲われたのだ。
ミッション後で気が昂ぶっている時はキッチンやリビング、玄関先でされることもある。本人曰くミッション後は人肌ならぬクラウドの肌が異常に恋しくなるとのことだが。
そんなことを考えながらシャツを鼻先に近付ける。汗の混じったザックスのにおいがした。それがさっきまでの情事を身体に思い起こさせ、消えかけていた熱が下腹部に戻って来る。
(…何考えてるんだ、オレ……)
やめろと頭で制止しても、もう抑えが利かない。
シャツを強く握り締めながらそこに顔を埋める。空いてる手で熱を帯び出した自身を握り込むと上下に擦り始めた。
「う…あぁ…ん」
つい今しがたされた行為をなぞる様に身体が反応し出す。
寝室に連れ込まれ、口づけを交わしながら押し倒された。そのまま首を吸われて…。
先ほど舐められた乳首を今度は指で弄りながら更にシャツに顔を擦りつけて妄想の中のザックスを克明に描き出す。
「あ!ザッ、ク…はぁ…はっ…」
後ろから獣の体勢で交わっていた時に走った快楽が全身を襲う。痙攣を起こしたようにピクピクと身体が震えだした。
「ん、やあっ!ザックス…ッ!」
愛しい人の名前を呼びながら絶頂に達すると、突然部屋の扉が開いた。
「!?」
入って来たのは当然ザックスで。
ザックスは寝室を出て行った時の上半身裸の格好のまま戻って来た。おそらく部屋の外で聞いていたのだろう。ベッドの上で一人乱れるクラウドの痴態を目にし、ザックスの瞳は一層熱を帯びた。
「…あ……あ…」
自慰を見られた恥ずかしさからまともに喋ることも出来ず、クラウドはうわ言のようにつぶやいた。
なんで、バスルームに行ったんじゃ…とザックスの手元を見るとミネラルウォーターの入ったペットボトルを持っていた。
「いや…喉渇いてると思ってさ…」
どうやらバスルームに行く前にキッチンで水分を補給していたらしい。だがそんなことは最早どうでもよかった。
ゆっくり近付いてくるザックスにクラウドの身体が硬直する。
ザックスはベッドに手を着くと、クラウドが縋るように握り締めているシャツに目を配らせながらそのまま視線をクラウドへ移す。
「…なに?オレのシャツ嗅ぎながら一人でしてたの?」
「や、ちがっ…そんなんじゃ…」
どう言い訳してもそうとしか見えなかった。実際それに興奮して始めてしまったから。
上に覆いかぶさろうとしてくるザックスにクラウドは羞恥から視線合わせないようにしながらベッドの反対側へと逃れる。
が、それが許されるわけもなく、ザックスに自慰をしていた手を捕らえられる。
「やだあ!見ないで!」
精液でべっとりと汚れた掌をしげしげと見つめられ、クラウドはザックスから顔を背けた。
「…っ!?」
突然手に走った生暖かい感触にクラウドは驚いてそちらを向いた。ザックスが掌のそれを舐め取っていたものだから、条件反射のように手を強く引いたが、引き返す力の方が強かった。
「あ、やめ、やめて!そんなの…」
掌、指の股、そして指の一本一本を口に含みながら丁寧に舐め取るザックスに懇願するが、行為に没頭するザックスの耳には入って来なかった。
「オレのこと"オカズ"にしてイったんだろ?全部舐めてやるよ」
「ひっ、あ…ぅ」
まるで別の生き物のように艶めかしく動く赤い舌が冷めたはずの熱がまたぶり返させた。
吐き出された欲を全てを口内に収めると、ザックスはクラウドの上に圧し掛かり、その耳元に口を寄せ耳朶を食んだ。更に中に舌を差し入れながら息を吹きかける。耳元で聞こえて来る息遣いは荒く、明らかに興奮しているのがわかった。
それに引きずられるように、クラウドも耳から与えられる緩い愛撫に敏感に反応を返す。
「んん!ふぁっ…」
「するにしても…あんなの反則だろ…」
ザックスは独り言のようにつぶやくと、掴んでいる手を自身の方に引き寄せ無理やりそこを触らさせた。
「あ…」
「お前があんなことするから、またしたくなった」
ズボンの前を開き、クラウドに手淫を促す。
クラウドは猛り出した雄に指を絡め、先ほど自分自身にしたのと同じように愛撫を施す。昇り詰めつつも、もどかしいそれにザックスは一旦身体を起こし、膝立ちになった。
その様がまるで口淫を催促されているように思えて、クラウドはそこに顔を寄せるとそそり立つそれを口に含んだ。
「な…っ?」
「ふっう…んん…」
予想外のクラウドの行動にザックスの熱は急速に上がって行く。
「んっん…んむ」
頬を紅潮させながら恍惚とした表情で銜え込むクラウドに下半身の熱が増していく。軽い射精感を覚え、そこからクラウドの頭を無理やり剥がすと逆に非難の声が上がった。
「やっ…なんで」
「お前の中に入りたい。いいだろ?」
返事を聞く気など毛頭なく、そのまま仰向けにクラウドを押し倒す。先ほどの情交で解した後孔に硬く肥大した雄を押し当て、中へと一気に挿入した。
「ひあぁあ!うぅ…はぁ」
感じるポイントを擦られ、クラウドは嬌声を上げながら内側をきつく締める。快楽に眉根を寄せながらザックスは押し殺したような声で囁いた。
「なあ…一人でする時いつもあんな風にすんの?」
先ほどの行為を問われ、クラウドはビクッと身体を震わせた。
「…あっやだぁ」
「ちゃんと言えよ」
「いやあ!ザックス動いてえ…っ」
動きをぴたりと止められ、クラウドはザックスの腕を掴みながら哀願する。しかしザックスは一向に動く気配を見せず、言葉を急き立てる。
「だから言えって。どうやってんだよ」
「う…あ、ザックスのこと、考えて……」
「考えて?」
「…してくれたこと、思い出しながら……」
早く動いて欲しくて、クラウドは頬を熟れたりんごのように赤く染めながら必死に言葉を紡ぐ。
「ここ弄るんだろ?」
先走りを溢れさせているそこを軽く扱いてやると、それだけでクラウドは背中を仰け反らせた。
「ひっあ!」
「オレがいない時はいつもしてんだ?やらしいの」
ザックスが緩く腰の動きを再開すると、快楽に悶えながらクラウドは頭を左右に振る。
「あっ!ちがっ…!そ、んな…んん!してない…っ」
「だってさっきオレがちょっと目離した隙にしてただろ?」
「…そ、それは…」
返す言葉もなく、クラウドはそのまま黙ってしまった。
だが依然じれったいような、緩慢な動きのままのザックスに徐々に堪えられなくなり、無意識のうちに腰を動かし始めた。
「…んっあ、あ!」
不意打ちで向こうから動かれ、ザックスは荒っぽく息を吐いた。
「はっ…クラウド…今日すっげえやらしい…」
「だって、だってぇ…」
「かわいすぎ…」
涙を浮かべながら弁解するクラウドに口づけると慰めるように舌を絡めた。
ザックスもそろそろ余裕がなくなり、しかしそれでも後もう少し目の前の恋人を追い詰めたくて更に問い質した。
「オレとするのと一人でするのとどっちが気持ちいい?」
「え…あ…」
「どっち?」
ぐいぐいと腰を奥へと進めて答えるよう迫る。快楽の波に溺れた頭はすでに正常に機能しておらず、本能でザックスの望む言葉を叫んでいた。
「あんっ!あ!ざ、ざっくすと、する方が、いいのぉ!」
泣きながら訴えるクラウドに焚き付けられ、ザックスは抑えていたピストン運動を激しくする。
「はっあ、やん!も、らめええぇ!」
「んっ…!」
* * *
二度目の情事が終わった後、ザックスに散々あられもない言葉を口にさせられた気恥かしさから、クラウドはふとんに包まったまま拗ねてしまった。
「ザックスなんか大嫌いだ…」
「ちょ、さっきの今でそれはないだろ」
さっきまであんなに甘えて来たくせに…などと余計なことを口走ってしまったものだから、より一層クラウドの怒りを買うことになった。
「…っこのバカザックス!!もう近寄んな!」
哀れ、この後ザックスはしばらくクラウドに口を利いてもらえなかったとさ。
END