それはふと思いついた疑問。
いつの頃からか自室によく出入りするようになったこのストイックすぎる少年が『そういうこと』に興味があるのか、ザックスは唐突に気になった。
「クラウドってオナニーしたことあんの?」
「は?」
頓狂な声で返すクラウドに「しまった」と遅すぎる後悔をした。頭で考えていただけなのに、なぜか口に出していた。
おまけに同年代の友人に何となく聞くようなノリで思わず聞いてしまった。ここで普通に付き合いのある連中なら「当たり前だろ」と軽く返すであろう質問だろうが、ことクラウドはそういうことに対してバカ真面目というか潔癖というか異常なまでに恥じらいを感じる性質らしく、食堂で隣の席の連中がこそこそと話していたAVの話にすら耳まで真っ赤に染めながら席を立ってしまったことがあった。
性格以外にも育った地域も関係あるのかもしれない。そういう意味で言うと故郷のゴンガガはどちらかというとオープンな傾向だと思う。
…と一人で色々考えていたが、黙ったままのクラウドをザックスはチラリと見やる。怒ってるだろうか、それとも軽蔑の視線を送っているだろうか。しかし、実際はそのどれでもなかった。
「…おなにーって何?」
「は?」
今度はザックスが頓狂な声を上げた。少年といえどももうすぐ15歳。自慰を知らないなどということはあるまい。
そうか、選んだ言葉が悪かったのかとザックスは改めて聞き直した。先ほどの後悔はすでにどこかへ消えていた。
「いやだからマスターベーション」
「……知らないけど」
バカな。じゃあ他になんて言えばわかるんだ?マ○かき?セン○リ?はたまた一人エッチ?
おそらくそのどれを出してもクラウドはわかるまい。
「ん…マジで知らないのか?」
「だから知らないって言ってるだろ!?」
バカにされてると思ったのだろう、クラウドは声を荒げた。
「まさか…あれもまだなのか?」
「だから!あれって何なんだよ?」
「いやほら、あそこがこう…朝目が覚めた時にあったろ?下半身がさ」
「…これクイズなの?」
鈍いだけなのか、まだなのか。キリがないのでザックスはもっと直接的な言葉で聞いた。
「朝立ちだよ」
「何それ」
…これは本気でまだのようだ。夢精すらないと見た。
性的知識がガキレベルようだが…一体彼の育ったニブルヘイムとはどんな秘境だというのか…。
どういう女に興味あんのかなとか、どういうのオカズにしてるのかなとかそういう次元の話ではなくなってしまった。そうなるとザックスのいたずら心がむくむくと頭をもたげて来る。
「そうか、クラウドまだなのか…」
「な…なんだよ…」
「大人の男なら当然あるんだけどな」
「え…」
「まあクラウドはまだ子供だからしょうがねーか」
「なっ!」
子供という言葉に異常反応するクラウドをわざと煽る。ちょっとやりすぎたかと思ったが、今更遅い。すでに売り言葉に買い言葉の応酬となっていた。
「…オレはもう子供じゃない。バカにするな!」
「そうか、そうだよな。じゃあ大人になろうぜ」
「え?どうやって…」
「オレが教えてやるよ」
* * *
ザックスは寝室のベッドの上にクラウドを座らせると、その横に座り華奢な身体を傍らに抱き寄せる。
「な、何すんだよ…」
「大人になりたいんだろ?」
そう言うとザックスは戸惑うクラウドの腰に腕を回す。そしてジーンズの金具を外し、チャックを下ろした。
「やっ!どこ触って…」
「黙ってろ」
そのまま前を寛げると萎えたままの幼い陰茎を取りだした。
「ひあっ…な、何でそんなの…」
怯えるクラウドを無視してザックスがそれを緩く扱くと、下腹部から突然走ってきたぞわぞわする何かに背をぴんと撓らせた。
「あっん。何これぇ…」
「気持ちいいだろ?」
「う…わかんな、い」
本人にはそれが快楽だという自覚はないだろうが、すでに硬くなり出しているそこがザックスの言葉を肯定していた。竿を扱きながら先端の鈴口をぐりぐりと弄ってやるとさらによがり出す。
「ん、ザ…クスぅ……あっ何か出る!出ちゃうからやめて!」
必死にザックスの手を剥がそうとするがそれは叶わなかった。
「いいよ。出しちまいな」
「ダメ!出ちゃ…」
吐精を促され、びゅっと白濁をザックスの手に吐き出す。
荒く息をつきながら初めての精通を終え、クラウドは力なくザックスによりかかった。
「あ、はぁ…」
「ほら。これ今お前が出したんだぜ」
そう言うとザックスは掌にこびり付いている乳白色の液体を見せつけた。
「はあ…はっ…何、これ…」
「気持ちよくなると出てくるんだよ。今の気持ちよかっただろ?」
「う……ぅん」
クラウドは躊躇いながらも消え入りそうな声でつぶやく。
(…こいつかわいいなあ)
素直な反応を返され、ザックスはクラウドの顔を引きよせ、ほんのり桜色に染まった頬に軽くキスした。
家族は母親しかなく、父親は早くに亡くなった。故郷では恋人はおろか友達もろくにいなかったと語っていたのを思い出した。そういう知識を得ることなくここまで来てしまったのだろう。不憫だなと思いつつ、そのウブな反応に劣情を煽られる。
「よしよし。じゃあお兄ちゃんがもっと色々教えてやるからな」
「…ザックスなんか楽しんでない?」
はい。楽しんでます。
などと抜かしたら容赦なくブン殴られるだろう。
「ちがうって。クラウドが大人になりたがってるからその手助けしてやってんじゃん」
「ふーん…」
クラウドはありがとうとぽそっとお礼を言う。
どこまで純真なのか。人の言うことをコロっと信じるなとミッドガルに出て来たばかりで右も左もわからなかった頃に忠告してやったというのに、この仔チョコボは…。
自分だったからよかったものの、これが誰か他の男だったらと思うと…。
(…よかった。オレがクラウドの初めての男になれてよかった)
と、わけのわからない安堵をするザックスにクラウドは
「なあ…これで終わり、だろ?」
モゾモゾと恥ずかしげに身体を動かす。
「いや、まだだ」
「え?まだ?」
「さっきオレがしてやったんだから今度はクラウドの番な?」
「えっ」
「なんだよ。自分だけ気持ち良くなって終わりか?」
「う…わかったよ」
ザックスは自分のジーンズの前を寛げると半勃ちになっているそれを取り出した。
「あ…」
他人のは浴場などで見たことはあるが、こんな近くで拝んだことはさすがになかった。自分のと違うそれを眼前に晒され、クラウドは小さく声を上げた。色はグロテスクで大きい。本当に同じものなんだろうか…。
「じゃ、さっきオレがしたみたいにしてくれ」
「う、ん」
そっと掴むと、ザックスがしていたように上下に扱く。するとたちまち硬度と大きさが増した。
「っ!?」
驚いて手を引こうとするクラウドの手をつかみ、そのまま固定する。行為を躊躇するクラウドの耳元に口を寄せ、ザックスは低く囁いた。
「クラウドのだってさっきこうなってただろ?」
「お、オレのが…?」
自分のもこうなっていたのだろうか。形状がちがうからどうも実感が湧かない。どうすれば気持ちいいのか、自慰はおろか今日まで精通すら体験したことのなかったクラウドには未知の世界だった。
一方ザックスは慣れない手つきで己の逸物を一生懸命手淫するクラウドにかなり興奮していた。
「…ねえ。まだなの?」
「ん…もうちょい」
しばらくこのままでいいかと思っていたが、もどかしくなったザックスはクラウドの手の上から自分のそれを重ねて扱きだした。
「ちょ、やっ…」
「…んっ」
ザックスはわずかに身体を震わせると、どくどくとクラウドの手の中に精を吐露した。
ふーっと息を吐くと先ほどから目についていたクラウドの股間へ手を伸ばす。
「あうっ…」
突然それを掴まれ、クラウドはびくっと身体を震わす。そこは先ほど達したにも関わらず、再び兆しを見せ始めていた。
「んー?また硬くなってんじゃん」
「やめ…あっやぁっ」
やわやわと揉んでやると顔を真っ赤にして悶える。眉根にしわを寄せて快感に堪える表情がなんとも扇情的で。ザックスはクラウドの上体をベッドの上に倒した。
「うわ!?な、何…」
「ご褒美」
ザックスはクラウドの穿いているジーンズを下着ごと剥がすと勃ち上がりかけているそれを口に含んだ。
「いやあああ!?な、な…っ」
何の前触れもなく与えられた強烈な快楽にクラウドは女のような嬌声を上げた。予想外にいい反応を示すクラウドに気を良くしたザックスは顔を上下に動かし、手でも快楽を与える。
拒否の声を上げることもままならず、下腹部に顔をうずめるザックスの頭を掴み、与えられるそれにクラウドは必死に耐える。
「ぅ…あ!ひぃ…やああん!」
カリを強く吸われ、ビクビクと身体を痙攣させながらクラウドは二度目の精通を迎えた。
ザックスは口内に出された幼い精を飲み干すと、恍惚とした顔をしながら口からだらしなく涎を垂らすクラウドのそれをぺろりと舐め上げる。
「ひっう…」
するとそれすらも快楽と受け取ったクラウドがまたびくりと震わせた。
「クラウド?大丈夫か?」
まだおぼこい少年にするには少々刺激が強すぎたと勢いで突っ走ってしまったことを反省した。
「あ…何…今の…」
「あー…おめでとう。これでクラウドも立派な大人だな」
「こ、れで?」
「ああ、うん…」
何だかんだでザックスの言うことをまるっと信じてしまったクラウド。
ベッドに顔を埋めながら、クラウドはボーっと明後日の方を見やる。
(大人になるって……何だか…気持ちいい…)
クラウドが(間違った方向で)大人になるのはもうちょっと先…かもしれない。
END