…私、振られちゃった…」



追う側と追われる側



 昨日、親友のが私にこう言ったのが始まりで、曰く
「氷帝の忍足君に告白しに行ったんだけど、よく知らない人とは付き合えないって…」
らしい。
 忍足がどんな奴かは知らないが、を振るなんて信じられなかった。
 何しろは私と違って可愛いし、背も小柄だし、少しおっとりした喋り方も周囲を和ませる。
 さらにはもてるのだ。我が青学テニス部の中にも玉砕して人がいるくらいだ。名前は忘れたけど…
 とにかく!が振られるなんて絶対に嘘だ!今日にでも氷帝に行って何で振ったか聞いてみよう。



 今私は氷帝のまえにいる。
 ヤバイ…緊張してきた…ああ、冷静に考えるとかなり恥ずかしくないか?
 とにかく、あそこにいるおかっぱの少年に聞いてみよう…
「すいません、テニス部の忍足君はいらっしゃいますか?(猫被り)」
「あー…侑士ならテニスコートか教室じゃねえ?って言うか青学の子が何の用だよ?」
「ちょっと用があって…ありがとうございました。」
 よし!テンションもいい感じに上がってきた。待ってろよ、忍足侑士!…侑士って名前なのか…
教室ってどっちだ…?


 いた。忍足(呼捨て)は教室で読書をしていた。
「忍足君。」
「何やねん。って、自分誰なん?」
「私の名前は。青春学園3年、陸上部期待のエース。よろしく。」
「ご丁寧にどうも。んで、俺に何の用や?」
「昨日君に告白した女の子を覚えてる?可愛い系の。」
「あー…覚えとる。」
「何であの子を振ったの?」
「だから、あの子にも言うたけど、性格も知らんのに付き合えへん。」
「付き合ってみなきゃ分からないじゃない!」
「あのな、そんなんいちいち相手にしてたら体がいくつあっても足りへんやろ?」
「そんなの告白された事が無いから分かんないわよ!」
「埒あかん…逃げるわ。」
 忍足はカバンと本を掴むと…ダッシュで逃げた。


「待てコラアー!スピードのエースをなめんなよ!」
「待つわけ無いやん。って言うか、どっかで聞いた台詞やな…自分、パクリはあかんでー!」
「ウルサイ!止まらないとキックが炸裂するわよ!」
「何やねん、その脅し。」
 忍足は縦横無尽に校内を走ってる。学校の構造を知ってれば負けないのに…
 その時、私にチャンスが訪れた。
「何を騒いでいるんだ?」
 妙にきらびやかなおじ様が忍足の足を止めた。ナイス!おじ様!
「え…いや、校内一周して体力をつけようかと思いまして…監督こそ、どないしたんですか?」
「監督!?」
「忍足、部外者を校内に入れるのは感心しないが…?」
「はい。もう帰りますんで。」
「うむ。では、二人とも行ってよし!」
 私は忍足に無理矢理手を引っ張られて適当な教室に連れ込まれた。
「ねえ、アレが本当に監督?しかもテニス部の。」
「ほんまや。しかも音楽教師や。」
「嘘でしょ…」
「なあ、何で友達のために一生懸命になれるん?」
 忍足が私に問い掛けた。
「友達だからに決まってんでしょ!」
 忍足は声を殺して笑い出した。失礼だ。そしていきなり訳の分からない事を口にした。
「俺と追いかけっこせーへん?」
「はあ?あんたいきなり何いってんの?」
チャンが勝ったらその子に謝るなり何なりしたるわ。俺が勝ったら俺の言う事何でも聞いてや。」
「何で私がそんな賭け…」
「あ、もしかして、俺に負けるのが怖いんか?ほんならしゃーないな。スピードのエース言うても女やしな。」
「地形さえ分かればあんたなんかに負けないわよ!あと、その馬鹿にした呼び方やめて!」
「んじゃ、やるんやな?」
「やってやろうじゃない!負けないから!」
「じゃ、校内案内するから付いてき。」




 私は忍足に追いかけっこのルートを聞いた。
「ルールは簡単。チャンが俺から逃げ切って校庭まで出られたらチャンの勝ちや。
校庭に出るまでに俺がチャンを捕まえられたら俺の勝ちでええな?」
「いいわよ。合図はどうするの?」
「次のチャイムでええんとちゃう?」
「いいけど、鳴り始めがスタート?鳴り終わりがスタート?」
「鳴り始めにしとこか。」
 いい感じに緊張してきた。


キーンコーンカーンコーン
 『キ』の音が鳴り終わる前に私は走った。
 絶対負けない!のためにも、陸上部のプライドにかけても!
「あーやっぱチャン、自分で言うだけあって速いわ。」
「五月蝿い!余裕こいてんじゃないわよ!」




 と、言って角を曲がろうとした、その時。
 ダンッ!
「いたたたたたた…」
「俺の勝ちやな♪」
 私は忍足にヘッドスライディングを喰らって転倒し、あっと言う間にまたしても空き教室に連れ込まれていた。
「なっ…!ズルイわよ!」
「ズルくあらへん。捕まえたら俺の勝ちって言うたやん♪」
「こんな手を使わないと勝てないの!?たかが女に!」
「多分勝てへんやろな。チャンやたらと速いしなあ…」
「で、言う事ってなによ!?奴隷になれとか!?(ヤケクソ)」
「俺と付き合うて貰えへん?まあ、拒否権なんか無いけどな。」
「…はぁ!?何いってんの?知らない人間とは付き合えないって言ったじゃない!」
「取り敢えず、チャンが友情に厚いって言うのは分かったで♪」
「あんた、友情に厚ければ誰でもいいの?!」
「あと、負けず嫌いなトコとか、単純なんも分かった。」
「そんな女の子、世の中にゴロゴロいるわよ!」
チャン、いい加減に自分の立場分かったほうがええで。自分は賭けで負けて、更にここは氷帝の空き教室や。
放課後って言うオイシイ時間帯の。」
 どうしよう…賭けに負けたのは私だけど、賭けの商品みたいな物で彼氏なんか欲しくない。
「ちょっと待って。」




 うーん…犯されるのは嫌だ…(話が飛躍しすぎ)でも、を裏切るのはもっと嫌だ。でも、私自身こいつに多分惹かれ
始めている。さて、どうしよう…?いっそ走って逃げようか…?って、アレ?
「時間切れ。タイムオーバーや。」
「な、何が?」
 いつの間にやら壁際に追い詰められている。しかも、両手は忍足に押さえつけられてしまっている。って、冷静に
状況を確認している場合か、私!!
「もしもチャンが俺をほんの少しでも好きなら、俺を受け入れてくれ。」
 そんな事を綺麗な顔を近づけて言わないで欲しい。あ、よく見るとこいつ綺麗な顔なんだ…
「無言は肯定と受け取るで。」
「えっ…ちょ、待ってよ!」
「言ったやろ?時間切れやって。」
 少しずつ忍足の顔が近づいてくる。
「好きや、。」
 こいつ私の名前、まともに呼んだ。…じゃなくって!
 もう遅かった。
「んっ…」
 ………キスされてる!?私のファーストキスが?!って言うか、舌が、舌が、しーたーがー!(パニック)
「はぁっ…」
「侑士て呼んでみ?」
「キモ足。」
「そんなこと言うんやったら、容赦せーへんで?」
「嫌。」
 わー!制服が脱がされかかってるー!
「何やってんだよ、お前等。アーン?」
「あ、跡部。ええとこなんやから、邪魔すんなや。」
 何か、これまたモテそうな男がいた。助かった。
「じゃっ!私はこれで!」
 私は一目散に走り出した。



 …こけた。
「あーあー…大丈夫か?チャン。」
「おい、俺は帰るぞ。お前等も早く帰れ。」
「分かったわ。邪魔だからさっさと帰れや。」
 いいから誰か突っ込むとかしてほしい…余計恥ずかしい…
「ほら、俺の手に掴まり。」
 私は忍足の手を借りずに起き上がった。
「無視かい。」
 そう言うと忍足は私の制服の乱れを直してくれた。
「ありがと。」
「あんまイジワルして嫌われた無いしな。」
 忍足がにこりと笑った。その笑顔を見たら急に心拍数が上がった。気がする…
「あれっ?」
「何や、どないしたん?」
「………私、忍足が好きになっちゃったかも…?」
「…えっ!?」
「だって何か、ドキドキするし、顔が熱いし、動悸が激しいし。」
「熱とかじゃあらへんよなあ?」
 忍足は私のおでこに手をあてた。
「忍足、手熱いね。」
「「………」」
 先に沈黙を破ったのは忍足だった。
「じゃあ、大人しく俺の物になり。」
「嫌。は裏切れないから。」
「俺と友達、どっちが大事なん?」
。」
「友達かい。じゃあ…」
 またしても忍足は制服を脱がし始めた。とか言ってる場合じゃない!
「やだっ!何で脱がすの!?」
チャンに欲情してもうたから。」
「付き合ってもいないのに、何で!」
「心が俺の物にならへんなら、せめて体だけでも…」
 忍足は明らかに嘘と分かる嘘泣きのような動作をした。しっかり服を脱がせつつ。
「やだやだやだ!どうしたら止めてくれる?」
 私は気持ち悪いぐらいの猫なで声を出した。
チャンが俺の物になってくれるなら止めたってもええで。」
 何故か忍足はニコニコしてる。ム、ムカツク…
「…分かった。えっと…」
「何やねん。」
「忍足君、私と付き合って下さい。」
 私はペコリと頭を下げた。ら、忍足が笑った。
「それは嬉しいんやけど、服着たほうがええんとちゃう?」
「あっ!!…ちょっと向こう向いてて。」
「嫌や。せっかくやから、チャンのストリップ見せてや。」
「えっ…何で私がそんな事しなきゃならないの?!」
「俺の趣味。」
「変態。キモ足。エロ足。」
「名前、侑士って呼ぶならあっち向いたる。」
 何かムカツクな。でも、見られるのも…
「侑士、お願いだから、あっち向いて?」 
 猫なで声パート2!
「よっしゃ!好きなだけ着替えてええわ。」
 馬鹿で助かった…



「いいよ?こっち向いて。」
「早かったやん。」
「ちょっと待って。」
 私は携帯を取り出した。
「今からに謝るから、聞いててね。」
「やっと本格的に俺の物になる決心したか。」
 忍足は機嫌良さ気に言った。
 プルルルル!プルルルル!
 いきなり私の携帯が鳴った。
「うわっ!?…だ…」
「丁度ええやん。」
「も、もしもし?」
『もしもし??』
「はい、何でしょうか?」
『(何で敬語なんだろう…)あのね、今日忍足君の所に行くって言ってたでしょう?』
「え、うん。」
 私は覚悟を決めた。
『「ごめん(ね)!」』
「は?」
『今日、が行っちゃったあと、やっぱり止めれば良かったかな、とか考えてたら、テニス部の越前君が
悩みを聞いてくれて、告白されて、付き合うことになったの…』
「はあ…」
はどうして謝るの?』
「え…えっと、今日忍足に会って賭けをして、負けて、付き合うことになったから。」
(侑士て呼べ言うてるのに…)
『「………おめでとう!!」』
『あ、良かったら今度ダブルデートしようね!』
「うん!バイバイ、またね♪」



「な、訳で、がダブルデートでもしようって。」
「…まあ、良かったやん」
「うん。」
「じゃあ、キスでもしよか。」
「何で!?」
「誓いのキス?」
「いらない!しかも何で疑問系なの!?」
「嫌言うてもするんやけどな。」
 気付くとまたしても押さえつけられていた。しかし、こいつが素早いのか、私が鈍いのか…
「好きやで、。」
 こいつはする前に好きって言わなきゃできないのか…?
「うん、私も好きだよ。」
 言ってみたら不思議と胸の奥が暖かくなった。やっぱり私は忍足が好きなんだ…
認めたら少し楽になった。と、考えてたらもう忍足の顔が近づいていた。
「っ…」
 本日2回目のキスは優しくて、気持ちよかった。他の人としたことがないから分からないけど、
絶対に忍足はキスが上手いと思う。
 ふいに唇が離れた。
「もう抵抗せーへんの?」
「分からない…だって気持ちいいし…」
「抵抗されるんも燃えるけど、素直なも可愛えわ。これからよろしくな♪」
「まあ、よろしくしてあげるよ、侑士。」
 最初は嫌いだったのに、一気に私を恋に落とした侑士が傍にいてくれる事を嬉しく思うよ。
ずっと一緒にいてね。



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