BLUE SKY COMPLEX



 トイレに入ってボーっとしてたらいきなり水をかけられた。
相手は「お前ウザイんだよ!」とか言ってた。こんなの慣れっこだ。
 どうやら私は世間で言うところのいじめられっ子らしい。女の子
独特の群れる習性が嫌で女の友達を作らずに男の友達とばかり仲良く
していたら『男に媚びる女』と言うレッテルを貼られた。そして今に至る。
 一人では何も出来ないモテない女たちの攻撃なんてちっとも効かない。
が、さすがに毎日は気が滅入る。もういつ頃からこれが続いてるのか何て
考えるのもめんどくさい。とりあえず帰るつもり(サボリ)でいたので
カバンを持ってトイレに入ったらこの有様だ。よく飽きないと思う。
 カバンは幸い濡れて無かったので出ようとしたらドアが開かない。
ガムテープでドアをくっ付けられたらしい。便器のふちに乗ってドアを
乗り越えてトイレを出た。もう授業は始まっているから誰もいない。
さすがにこんなカッコでは表に出られないから屋上で服を乾かす事に決めた。



 屋上はいい天気で気持ちがいい。風も日差しも。なるべく日当たりの良さそうな
場所に寝転ぼうとしたら先客がいた。先客は気持ち良さそうに眠っている。金色の
髪が綺麗だ。隣に何となく寝転ぶ。濡れたシャツが肌に張り付く嫌な感触がしたけど
無視した。空を見上げると青くて雲ひとつ無い。こう言う空を見てると世の中の事なんて
全てどうでも良くなってくる。いきなり隣の先客が目覚めた。
「うーん…。良く寝た。あれ、君だれ?」
「あ、おはよ。3年の。覚えなくても良いよ。」
 とりあえず挨拶だけしてカバンを枕にして目を閉じる。と、日差しが途切れた。
目を開けると先客が私の顔を覗き込んでる。目を開けると目が会った。
「…何?」
「俺、芥川慈郎。は何で服が濡れてんの?」
 …男の子だったのか。良く見たらズボンを穿いてる。気付けよ、私も。って言うか、
いきなり呼ばわりか、とか思ったけど別に嫌じゃなかったからスルーした。
「水、かけられたから。」
 それ以上芥川は干渉して来なかった。全てを察したらしい。
「芥川はサボリ?」
「眠かったから。あ、ジローでいいよ。」
 と言った瞬間にジローが降ってきた。持ち上げて見て見ると寝てた。人の上で寝るなよ
とか思いながら隣に転がしておいた。私も眠りについた。


 起きるとジローはいなくて一枚のメモが残っていた。メモには携帯の番号と『また明日。』
の一言だけが書いてあった。とりあえず服は乾いてたからその日は家に帰った。私達の奇妙な
縁はここから始まった。

 次の日から私達は二人で眠った。目覚めるとお互いの事を話し合ったりもした。ジローは
半寝のときはボケーっとしてるのに起きてると異様にテンションが高かった。授業に出ても
下らないイジメに会うだけなので私は一日中と言っても良いくらい屋上にいた。なぜかジローも
いた。絶対に私のほうが先だと思った日だってジローは先に寝てた。仲が良くなってくるに比例して
ジローは私の事(主にイジメ関係)を聞くようになった。ジローなりに気を使ってくれていたらしい。

「俺、考えたんだけど、これからは俺がを守るよ。」
 ある日唐突にジローがこんな事を言い出した。
「…気持ちは嬉しいけど、別にどうって事ないから。」
 言った後でさすがに可愛く無さ過ぎかと思った。が、ジローは気にも止めてない様子で
喋りだした。いつもの寝ぼけた感じでもなく、テンションが高くないジローをはじめて見た。
「俺、知ってるよ。ここで俺が寝てる時に声を押し殺して泣いてるの。本当は辛いくせに
無理してるが見てられなくなった。だから、俺が守るよ。」
 「大丈夫だよ。」って言って笑おうとして頬に生暖かい物が伝うのが分かった。それが私の涙
だと理解するのにしばらくかかった。
「無理しなくてもいいから。俺の前では感情を押し殺したりしなくてもいいよ。言いたい事も
何でも言って良いから。」
 にこりと笑うジローが眩しくて、私は思いっきり泣いた。

 三ヵ月後。
ー!一緒に帰ろう?」
「いいよ。掃除したら終わりだから、少し待ってて。」
 ジローは分かったと言って教室のドアの辺りの壁に寄りかかった。私は相変わらず女の子と
群れるのは嫌いだけど、和を乱さないようにして主犯格の女の子と力尽くで話し合いに持ち込んだら
とりあえずイジメは止んだ。最近は話し掛けてくれる女の子も増えた。これもジローのお陰だと思う。
 ジローの一言が私に気力を与えてくれた。と思う。私とジローは相変わらず良い友達だ。

 ふと帰り道でジローに聞いてみた。
「あのさ、何でジローは私にあの時ああいう風に言ってくれたの?」
「そんなの好きだからだよ。」
 はあ、そうですか。ってええ?!たぶん、今私は挙動不信だと思う。おろおろしてるとジローが
追い討ちをかけた。
「だから俺と付き合ってよ、。」
「えーと、はい…。」
 恥ずかしくて思わず俯くとジローに抱き締められた。抱き締められながらこうなる事を予測していたような
気がする私がいた。



後書き。なげえよ!って言うか、慈郎に見えないって。いや、慈郎のつもりで書いたけど。進研○ミの
勧誘マンガくらい都合がいいな。一つのことをきっかけに全ての事が上手く行きだすってパターン。
 えー、次回予告。満を持して音楽教師(43)の登場です!次回をお楽しみに!私、疲れてるのかも…。

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