観察日記


 初めまして。芥川君と同じクラスのと申します。皆さんはご存知かも
知れませんが、芥川君はよく寝ます。余りにも寝ているので芥川君の観察日記を
付けてみたいと思います。

某月某日
 本日も寝ています。1時間目から寝ています。6時間目まで寝て、
2年の樺地君が迎えに来ました。グラウンドを見ても芥川君はいないので、
多分どこかで寝ているのでしょう。

某月某日
 今日も寝てましたが、教室に来たのは3時間目からでした。
 多分どこかで寝ていたのでしょう。

某月某日
 珍しく起きていました。1時間だけだったけど。私の席は芥川君の隣なので、
ノートとシャープペンの芯を要求されました。快く差し出しました。芥川君は
『ありがとー!』と言って笑いました。可愛かったです。

某月某日
 芥川君がずっと起きていました。珍しかったです。色々な物を要求されました。
 リスト
 消しゴム
 カラーペン
 黒ボールペン
 芥川君が寝ていた間のノート
 全て快く貸し出しました。今日も可愛い笑顔でお礼を言ってくれました。

某月某日
 芥川君に初めて名前を呼ばれました。意外にも芥川君は私の名前を
覚えていてくれたらしいです。

某月某日
 芥川君に『俺の名前覚えてる?』と聞かれました。私が『芥川君だよね。』と
答えると、ジローでいいよと言って笑いました。やっぱり可愛かったです。

某月某日
 芥川君に教科書を見せて欲しいと頼まれました。快く貸し出すと、
いきなり『ちゃんって呼んでいい?』と聞かれました。
 ドキドキしながらOKを出したら、例の可愛い笑顔で『ちゃん。』と呼んでくれました。

某月某日
 芥川君が、『一緒に屋上でサボろう。』と誘ってくれました。サボった事が無い私が戸惑うと、
芥川君は私の手を引いて屋上まで連れて行ってくれました。
 『良かったら明日テニス部の練習見に来てよ、ちゃんが来てくれるなら頑張るから。』
と、言われました。もちろん行くと答えました。



 ここまで日記を書いて私はため息をついた。明日は芥川君と約束したので、練習を見に行く。
 最近、芥川君を見るとドキドキする。芥川君が傍にいると、どうしたらいいか分からなくなる。
 考えても仕方が無いので、寝る事にした。おやすみなさい。



 朝、芥川君が妙にご機嫌だった。でも相変わらず寝ていた。授業が終わるといつもの笑顔で
『ノート見せて。』と言った。

 放課後、いつ練習を見に行けばいいのか分からなかった。
「あ、ちゃん。俺これから練習だから行こ。」
 教室で悩んでいたら芥川君が迎えに来てくれた。芥川君の了解も得たと言うのに、
私は相変わらず芥川君と呼んでいた。
「うん、じゃあ、芥川君行こう。」
 芥川君は少しだけはにかみながら、歩き出した。

ちゃんっていつまで経っても俺の事を芥川君って呼ぶよね。」
 グラウンドに向かう途中で芥川君が拗ねたように言った。
「うん。ごめんね。私、男の子の下の名前呼ぶの慣れてないから…。」
 事実、私はほとんど男の子と話したことが無くて、下の名前で呼ぶなんてもっての他だった。



 グラウンドに着いた。芥川君がイスを用意してくれたから快適に練習を見ることが出来た。
 いつの間にか練習は実践練習に変わっていた。今は忍足君と2年の鳳君が試合をしている。
今日は榊先生が来ていないので、負けてもレギュラーを外される事が無く、気楽に試合を
したみたいだった。ちなみに、忍足君が勝った。
 芥川君の番が来た。相手は…。よりにもよって跡部君だ。芥川君には悪いけれど、
相手があの跡部君なら勝つのは難しいんじゃないだろうか。
ちゃん!」
 いきなり芥川君に名前を呼ばれた。びっくりして面食らってると、芥川君が話を続けた。
「俺が跡部に勝ったら、俺と付き合ってください!」
 ………。答えをどうしようかと思っているうちに試合が始まった。



 意外な事(失礼)に芥川君は跡部君に勝った。芥川君はゆっくりとこっちに近づいてきた。
ちゃん、俺と付き合ってください。それがダメなら、お友達でも良いからジローって呼んで。」
 そんなの、跡部君に勝っても勝たなくても答えは決まっている。
 はっきりと気付いたのは試合中だが、日記を付け始めた時から私は芥…ジロー君に恋を
していたのだ。
「えっと、私なんかで良ければOKです…。ジロー君。」
 真っ赤になりながら答えた。
「マジで!?うれCー!絶対にちゃんの事大事にするから。」


 私は今日から観察日記を付けるのをやめるだろう。
 これからは本物のジロー君が傍にいてくれるから…。

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