求めすぎてる?僕。



 先生なんか嫌い。とにかく嫌い。大嫌い。今日私は恋人の榊太郎先生と喧嘩をした。
小さな喧嘩ならよくするけど、今回は大きい喧嘩になった。先生は私に好きって言ってくれない。
先生は細かい事でよく怒る。お父さんみたい。先生は手を繋いだりしてくれない。
キス以上もしてくれない。私は先生が好きで好きでしょうがなくてテニス部の
マネージャーにもなった。跡部狙いとか言われて散々跡部ファンともめたけど。負けなかった。
 デートをしようと言ったら断られた。学校にバレルのが嫌な先生は何よりもデートを嫌がる。
思いつく限りの言葉で罵ったら言葉使いが悪いと怒られた。から、お父さんみたいって口に
出して言ったら「だったらお父さんと付き合え。」とか言われた。悔しいから手に持ってた
テニスのスコア表を投げつけて帰ってきた。私は悪くないと思う。どうして恋人同士が
こそこそしなきゃいけないんだろう。先生と生徒だから?歳が親子ぐらい離れてるから?
 先生がどんなに謝っても許してあげない。いつもは私が悪いけど、今回だけは悪くないと思う。
口だってしばらくきいてあげないんだから。



 次の日。私は先生を徹底的に無視した。とにかく無視だ。電話だって出ないし、メールも
返さない気でいた。部活もサボった。先生から何をされても許さない気でいたけど、先生は
何もしなかった。夕方に先生から何もフォローが無い事に気付いて悲しくなった。
 先生は私のことが好きじゃないのかも。若い女の子なら誰でもいいのかな?とか考えたら
また悲しくなった。お風呂に入りながら少しだけ泣いてご飯を食べずに寝た。



 次の日。相変わらず先生は何も言ってこない。私から折れるのも嫌だから徹底的に無視して
目も合わせなかった。音楽の授業は屋上で慈郎と一緒に寝てた。エスカレーターだから三年でも
わりかし余裕な生活をしてる。受験とかあったらサボるどころの話じゃないと思う。勉強は苦手だし。
 今日も部活をサボって帰って悲しくなって泣いた。胸がいっぱいでご飯なんか食べてる場合じゃない。
人間は一週間くらいなら水だけでも生きていけると聞いた事がある。当たり前だけど、今日のお昼と
朝もご飯を食べてない。いつもは三時間くらいで私が謝って終わるので、こんなに長い時間を先生
無しで過ごした事は無かった。先生が出張とかでも連絡は取り合ってたし。



 次の日。朝ごはんを食べずに登校。少しだけ目眩がする。ご飯を食べた方がいいかと思ったけど、
どう頑張っても喉を通らない気がするからやめた。お昼も食べなかった。
 五時間目くらいに気持ちが悪くなってきて、なんとか授業中は持ちこたえて掃除をサボって保健室に
行こうとしていきなり意識が途絶えた。



 目覚めたらそこは保健室で、起き上がろうとしたら気持ち悪さと目眩で起き上がれなかった。
「あ、起きた?ったく、成長期なんだからご飯は食べなさい。ダイエット?」
 保健の先生がやってきて一応体温を測れと体温計を渡してくれた。意味無いと分かってながら
測りはじめる。保健の先生は大体の症状を見ただけで何だか分かるからすごいと思う。
「違います。ちょっと色々あって…。」
 何かまた泣きそうになってきた。仰向けで泣くと涙が左右に流れてえらい事になるので頑張って
泣かないようにした。
「そう言えば、にお客さん来てるよ。ちょっと待ってね。」
 先生が部屋に戻っていった。友達がカバンでも持って来てくれたのかと思ったら違った。
そこには会いたくてしかたなかった先生がいた。先生に背を向けて無視したら保健の先生が私に囁いた。
「私これから出張だから、出てく時に鍵かけて帰ってね。いちゃつくのは構わないけど、保健室は
SEX禁止だから。」
 ビックリして保健の先生を見たら口ぱくでしっかりやんなと言っていた。ご丁寧に保健の先生は
電気を消して表のドアに『出張に行ってます。』というプレートをかけて行ったらしい。
「まだ怒っているのか?」
「分からないよ。怒ってる気もするけど、先生が構ってくれなかったのが嫌だった。」
 先生に背を向けて喋っていると先生の顔を見たい衝動に駆られる。でも先生の顔を見たらきっと
私は泣いてしまうからグッと堪えた。
「とにかく、食事は取れ。成長期の体を壊す気か?」
「私が体調を壊そうが壊すまいが関係ないじゃん。私が壊れたら他の子捜せば言いだけなんだから。」
 何となく先生が怒ってる気配がして驚いたけど後ろは振り向かなかった。
「ならお前は私がここでお前を捨ててもいいんだな?」
 一番聞きたくなかった言葉を聞いて横になりながら思わず先生の方を見てしまった。怒ってると
思っていたけど意外にも先生の顔は優しかった。
「っ…。そんなの嫌だ。先生がいなかったらきっと死んじゃうよ。今回がいい例じゃん!」
 泣きながらだから言葉が上手く出なかったけど何とか最後まで喋れた。
「なら可愛くない事は言うな。お前は本当に好きなのは自分だけだと思っているのか?」
「だって先生好きって言ってくれないし、歳だって離れすぎてるし。」
 先生が少しだけ微笑んで頭を撫でてくれた。
「私くらいの歳になると愛を伝えるのが恥ずかしいんだ。そこは我慢しろ。」
 はっきりとは言ってくれなかったけど今の言葉が先生なりの「好き。」何だと思うと嬉しくなった。
「ごめんね、先生。私がワガママだった。先生に求めすぎました。」
 謝罪の言葉を伝えるとコンビニの袋を差し出された。中を見てみると栄養補給ゼリーやらバランス
食品やらが入っていた。その中からゼリーを取って食べたら少し気持ち悪いのが楽になった。
 先生の優しさが嬉しくて私はニコリと微笑んだ。



後書き。だから長いって。完璧な自己満足小説。楽しかったけれども。このお話には裏話が存在します。
それはこの話のここ後日談&おまけを参照ください。





































求めすぎてる?僕。その直後&おまけ



「デートはできないが、今度の日曜に私の家に来るか?」
「うん!」
 そんな話をしながら先生に甘えていたらいつの間にやら8時を過ぎていて慌てて学校から帰るはめに
なった。今度の日曜は三日分、思いっきり先生に甘えようと思う。今から楽しみだ。



おまけ。次の日。
「おい、監督とできるだけもめるなよ。」
「何で跡部にそんな事言われなきゃならないの?余計なお世話だよ。」
「おまえともめると必ず監督が不機嫌になるんだよ。こっちの身にもなれ。」
「あー…それはごめん。でもどうしようもないから頑張ってね。
「なっ…!」



後書き。えー、榊を書くにあたって、弱みを握られてる系にしようかワガママで子供っぽい子の話に
しようかかなり考えたんですよ。きっかけは夏コミ帰りの雪と行ったカラオケでした。タイトルと
おなじ題名の及川光博を聞いた瞬間に一気にネタが出ました。そして雪に宣言しました。
雫「決めた!こんな感じで私榊書く!!」
雪「ええーっ!それは勘弁してもらえませんか?」
雫「じゃあ、百歩譲って表にする。」
雪「って言うか、榊の年齢じゃ純愛とか不自然だって!」
雫「なら君はいきなり43の男にヤられたいのかね?初の榊夢が裏はキツイって。近日中に書き上げるから
覚悟しといてね。」
 雪にリクエストして『求めすぎてる?僕。』を歌わせといてこの有様です。って言うか、MDで歌詞カード
なかったから歌詞を初めて知ったよ。常に私達の会話はこんなんです。別にこれも本編に入れても良かった
んだけど、いくら何でも長すぎだろと思ったので分けました。が、短いよね、これ。



そんな事言ってねーよー!…言ったっけ?いやでもニュアンス違うよ!…た、多分…(雪)

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