『冬馬の棺桶』

鏡の間2


「ランゼ。」
カルロは至近距離にいる彼女の目をみつめながら囁いた。
蘭世はこの声に弱い。
もともと引き込まれるような素敵な声をしているのに、
そのうえその声で静かに名前を呼ばれるとクラっときてしまうのだ。
でも、今日は見つめるまなざしがいつもより鋭いような気がする。
なんだか自分が豹に狙われた小動物のような気がして
蘭世は1歩引き下がろうとする。野生のカン?
そんな蘭世の両肩をカルロは掴んで放さない。
その腕は、やんわりと、でも力強いものだった。

「ランゼ・・・」
カルロはまた、今度は蘭世の耳元で低く囁いた。
蘭世は首筋にゾクゾクした感覚を覚え思わず息をのみ目を閉じる。
そのままカルロは蘭世の耳たぶをそっと噛み、続いて
耳に口付ける。
「ああっ!」
思わず声を出してしまい、蘭世はあわてて手の甲で口を押さえる。
蘭世は耳が敏感だ。そしてカルロはそれを十分承知している。
「いや・・!。んっっ・・・。」
あまりの強い感覚にもうどうにかなってしまいそうである。
立っていられない蘭世の体をカルロはしっかりと腕で抱えている。
そして蘭世はその腕から逃れようとするが出来ない。
それがまた蘭世の心を妖しく溶かす。

いつのまにか蘭世は床に横たえられていた。
冷たい床にカルロは自分のコートを敷いてその上に蘭世を押し倒していた。
念力で実にスマートにコートを敷く作業をやってしまうので
蘭世はまるで気づかない。
カルロの方もスーツの上着や邪魔なカマーベルトは取り去っている。
そしてシャツの前をはだけていた。
レオタードの肩は引き下ろされ、白い胸が露わになっている。
カルロが蘭世の体に口づけるたびに肌と肌が触れる。
肩にも、首筋にも、キスの雨が降る。
そして以外と大きいその胸の谷間にカルロは強く口づけた。
「んんっ・・・」
もう蘭世は目を潤ませ、カルロの指と唇に酔いしれていた。

カルロはちらと横の一面の鏡に目をやる。
蘭世の姿は鏡に映っている。
だが、気づかれないようさらっと蘭世の例のリボンをほどいて向こうへ
やってみると。
瞬く間に蘭世の姿は鏡から無くなった。
蘭世は自分に押し寄せる快感の波に飲み込まれ、
あまりに夢中になっているためその姿が鏡から消えたのだ。

カルロは蘭世の耳元で呪文のように囁いてみた。
「蘭世。鏡を見てごらん」
「え・・・?」
蘭世はいちど我に返り、横の鏡を見た。
そこには上半身裸でカルロに組み伏されている自分の姿があった。
鏡に意識がいったので姿がまた映し出されたのだ。
(やった・・・)
予想通りでカルロは、つい顔がほころぶ。
「いやっ!」
あられもない自分の格好に耳まで真っ赤になり顔を背ける。
しかも。カルロは余裕で笑っているように見えたのだ。
ただ蘭世は自分が映ったり消えたりしていることには
全く気づいていないようだ。
「恥ずかしがることはない・・・」
そういいながら、蘭世の頬に軽く口づけ、さらに首筋へと降りていく。
そっと脚の間に手を入れてみる。太股に触れると蘭世は素足であった。
『やっ・・・。だ・・だめっ・・・。』
蘭世は恥ずかしくて震える声で言った。思わず日本語が出る。
それがとても色っぽく見えることに蘭世は気づかない。
『どうして駄目なのか?』
日本語で返すカルロ。
『だって、だって・・・鏡・・』
目をそらしながらつぶやく。
『私とお前以外に見る者はいない』
そういうとカルロは口づける。
チュチュの後ろに手をやりホックを緩めた。
ふと悪戯心が芽生えた。
さっきからの行為で蘭世はもう受け入れ態勢は万全なはず。
それ以上脱がせるのはやめ、一度蘭世に口づけ手を絡ませる。
少し蘭世に安堵の表情が戻った途端。
ずらされたことで多少余裕が出来たレオタードの横から
一気に蘭世の中に自身を押し入らせた。
「ひっ・・あーんっ」
びっくりして蘭世は目を見開いた。予想外の展開。
なんだかおかしな格好のまましているように思えて
恥ずかしさの余り気が変になりそうだ。
・・・何も着ていないときより刺激的に思えるのは何故なんだろう。

カルロの動きに合わせて蘭世も心乱されていく。
すると鏡の彼女はいなくなる。
それを見てカルロは耳元で囁く。
「蘭世、鏡に映っている。」
そう言うと蘭世は鏡に戻ってくる。
カルロははっきりとそれを楽しんでいた。
「いやいやいやいやいやっ!!」
蘭世は首を振って逃れようとする。
でもカルロの腕からは逃れられない。

全て脱がせて俯せにし、鏡の前で後ろから押し入る。
背中にも愛撫と口づけの雨は降る。
蘭世が鏡から消えるたびにまたカルロは呪文を唱える。
今までにないことで蘭世は今まで以上に
羞恥心と快感の間を行ったり来たりしていた。
まだ抱き合うことにマンネリになるほど歳月がたったわけではない。
自分の体にこみ上げる感覚についてつい最近知ったばかりだ。
なのに。なのに。
こんな風に私を組み敷くのは何故なのだろう。
一瞬蘭世にカナシイ・・という感情がやってくる。
それでも心とは裏腹に感じている感覚が津波のように押し寄せる。
「ああっ・・・あんっ」
必死に殺していた声が突き上げる快感でおもわず口から漏れていく。
カルロは後ろから蘭世に覆い被さるように抱きしめた。
蘭世の耳に彼の熱い息づかいが聞こえる。
「ランゼ・・・」
その熱い声に刺激されて蘭世の呼吸も速くなる。
もう何も考えられない。
カルロの腕の中で蘭世は昇りつめ、そのまま崩れ落ちていった。
鏡には、もう彼女は映っていなかった。

(・・・)
蘭世は鏡に映っていない。
あるのはカルロひとりばかりだ。
カルロは急に蘭世が間違って空から堕ちてきた天使のように思えた。
しっかり捕まえていないと空へ還ってしまうのではないだろうか。
そっと倒れ伏している背中に触れてみる。
熱く火照った身体は確かに存在している。
(・・・。)
カルロは蘭世の右手首にブレスレットのように
そっと例のリボンを結んでみた。
彼女が鏡に現れる。
(このリボン、つかえる・・・)
一体どんな鬼畜な事を考えついたのか。
とりあえず、後日の楽しみに取っておくことにした。





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