『冬馬の棺桶』

嵐の後2

ふと蘭世の肩に目をやると服が少し裂けている。
今あった抗争で、男ともめあったときに破れたのだろう。
「ランゼ、着替えた方がいい。シャワーも使うといい」
そう言うとカルロは蘭世のそばをいちど離れた。
クローゼットの扉を開け、大きな箱をひとつ取り出した。
箱には勿論蘭世のワンピースなどの洋服一式が入っている。
「あ!」
蘭世もカルロの視線で自分の服が破れていることに気づいた。
蘭世はカルロに促されてひとりバスルームへ入った。

蘭世がシャワーを浴びている間にカルロも服を着替え、さらには
事後処理について部下に2,3指示を出していた。
髪の毛を乾かし、大きな箱に入っていたエレガントセットに
身を包んだ蘭世がバスルームから出てきたときには、
カルロはテーブルにティーセットを並べていた。
よく見ると、カルロは今日蘭世が贈った
ネクタイピンとカフスボタンをしている。
そして、テーブルの上には蘭世の持ってきた
手作りのケーキも置いてある。
カルロは蘭世が出てきたのを見て微笑んだ。
「すっかり食べるのが遅くなった。今からでも悪くない」
「私、ケーキ切るね!」
蘭世は駆け寄り、少し遅いティータイムの準備に加わった。

カルロの隣に座ると、いつもの香水の奥に、
蘭世が今さっき使ったのと同じシャンプーの香を感じた。
どうやらカルロも別室でシャワーを浴びてきていたらしい。
蘭世は自分と同じ香に、どこか恥ずかしいような
くすぐったいような気持ちを覚えた。

「カルロ様、お誕生日おめでとう!」
カルロの入れた紅茶は微かにブランデーの香りがした。
「おいしい・・・!」
「ランゼの作ったケーキもおいしい。」
カルロは実に優雅にケーキを食べる。
なんだかとても高級なデザートを口に運んでいるような錯覚を起こす。
その仕草に蘭世は見とれてしまった。

それからあれこれと話が弾む。
紅茶に入っていたブランデーのせいか蘭世の口が軽くなっている。
「・・・あのね、私だったらお買い得よ!
たたいても壊れないし殺しても死なない!」
カルロはぎょっとして蘭世を見た。
だが蘭世はいたって真剣な顔をしている。
「きっとあなたの役に立てるもの!
そしてあなたを置いて死んだりもしないわ」
カルロはくすくす笑った。
そして蘭世の頭にポンと手を置く。
「そうかそうか。それは頼もしいな。」
だが、蘭世の真剣な表情を見て笑うのをやめた。

いつもカルロは蘭世の表裏のないまっすぐな瞳に魅せられていた。
カルロは何かの企み、下心、媚びを売る目線に慣れきっていた。
こんな一途なまなざしを自分に向ける娘を他に見たことがなかった。
そして今も、蘭世がとても真剣だと言うことが判るのだ。
「ね、カルロ様。私がいつも一緒にいてあげる」
「ランゼ・・・」

いつだって。
荒野に咲いた一輪の白い花を見つけたような気がしている。
カルロは蘭世の肩を引き寄せ彼女の頭に頬を寄せた。
「そうだ。共にいて欲しい。」
指で長い黒髪をなでるように梳く。
蘭世はカルロの背中に腕を回し目を閉じた。

(ランゼ。ただそばにいてくれるだけでいいのだ・・・)
カルロの想いが蘭世に流れ込む。
それを聞き、私は役に立ちたいのだと反論しようと
顔をみあげた蘭世にカルロは口封じのキスをする。
初めは唇が触れ合っていただけだが
すこしずつ舌を絡めていく。
こんなキスは初めてだった。
「んっ・・・」
最初は戸惑いを隠せなかった蘭世だが
少しずつそれに応えるようになっていく。
深く愛し、愛されてる。
蘭世の心の中でそんな想いがどんどん強くなる。

深く熱いキスの中で少しずつ蘭世の身体が
ソファへと倒されていく。
蘭世がソファへ横になってしばらくすると
いちどカルロは唇を離し、蘭世の瞳をのぞき込んだ。
その綺麗な碧翠の瞳に射抜かれる。
蘭世はこれ以上見つめられると
どうにかなってしまいそうな気がして、
たまらなくなりカルロの首に抱きついた。

カルロはそのまま蘭世を抱きかかえ、立ち上がった。
「あっ・・・」
蘭世は抱きついていた腕を離し
行き場のない手をカルロの肩に置いた。
そして不安な表情でカルロを見る。
そんな蘭世をカルロは優しい目で見つめ返す。
「ランゼ。怖がらなくていい・・・」
そう言うと蘭世に軽く口づけてから歩き出した。
カルロの腕はしっかりと蘭世を抱えたままだ。
「どこへいくの・・・?」
広いプライベートルームの奥にひとつ扉があった。
蘭世が開けたことのないそのドアをカルロが開く。

(カルロ様の寝室・・・?)
広くゆったりした部屋。視界の隅に大きなベッドが映った。
カルロはベッドの端に蘭世を座らせ、彼女の靴を
そっと足から外した。
カルロは上着を脱ぐと蘭世の隣に座った。
蘭世は心細げにカルロの動作を見つめていた。
これからどうするんだろうという不安一杯の瞳である。
そんな蘭世の肩を抱きしめ、額の髪に口づけた。
「ランゼ。愛している・・・お前がもっと知りたい」
そう囁くと両手で蘭世の頬を包み再び唇を重ねる。
その深く熱い口づけに蘭世はまた夢中になった。
そして蘭世の身体はゆっくりと倒されていく。


瞼にそっと口づけるとカルロは蘭世に覆い被さり
背中に手を回す。
ファスナーを下ろすと蘭世の肌にカルロの手が
直に触れた。
「あっ・・」
触れたところから何かがしみこんでくるような気がして
蘭世はぎゅっと目をつぶり身じろぎをする。
今贈られたばかりのワンピースは、足下にはらりとおちた。
「ランゼ・・・」
カルロは蘭世に口づける。
カルロの手はピアノを弾くように蘭世の素肌に触れていく。
慈しむような、それでいて探るような指先。
「んっ。」
蘭世の声が漏れるたび、また背中に廻した手がびくっと震えるたび、
指はそこに留まりさらに蘭世の心を溶かしていく。
蘭世の肌はきめが細かく吸い付くようだった。
蘭世も夢中でカルロにしがみつく。
「ランゼ・・愛している・・・」
そう蘭世の耳元で囁くとカルロの吐息がかかる。
そしてそこへ口づけ、舌をはわせる。
「あっ!・・い、いやっ!!」
蘭世は思わず目を見開き叫んだ。
首筋に走る電流。
あまりの強い感覚に思わず身をよじり逃れようとするが
カルロの腕からは逃げられない。

蘭世は細く高く声を上げる。
自分からこんな声が出るなんて。
恥ずかしさで必死に口元を手の甲で押さえる。

唇は耳から首筋、胸元へとつたっていく。
蘭世の背中に廻されていたカルロの手が少し動くと
胸元を覆っていた布はあっというまに外される。
だが蘭世はたよりなくなった胸元に思わず
隠そうと横を向き両腕を重ねようとする。
「・・・。」
カルロは一瞬困惑したが耳まで真っ赤の蘭世に、
まだ少女であることをすぐ思い当たった。
「隠さなくていい・・・とても綺麗だ」 
そう囁くと、カルロはその腕はそのままにして
無防備になったうなじへ口づけた。
「!!」
長い黒髪をそっと横へやり、肩、背中、腰へと唇は降りていく。
「あぁ・・・っ あっ・・・」
蘭世の身体が弓なりになって乱れていく。
始めて知る感情に溺れ、もう頭の中は真っ白である。
カルロは力の抜けた両腕をやんわりほどき
仰向けにシーツの上へ押し戻した。
白く瑞々しい肌の胸は唇で愛撫され、赤い痕が残されていく。
蘭世はふたたび立ち上ってくる感覚に頭をなんども振った。

始めての感覚に戸惑う表情がこの上なく色っぽい。
そして感情をこらえきれなくなり快感に溺れていく蘭世の声は
カルロの心にも火をつける。

蘭世の身体を覆っていた最後の布もいつのまにか
先程ほどかれたワンピースの上へと落ちている。
カルロもあくまでエレガントに自らの服を脱いでいく。
ぼんやりした視界で蘭世はそれを見るが、
あまりの優雅さに見とれてしまう。
再びカルロが蘭世を腕にとらえる。
お互いの素肌がふれあう。
少しずつ違う体温に、
蘭世は何か不思議な、甘い気持ちを覚えた。

カルロはそっと蘭世の膝に手をやり、口づけた。
そしてその手は、太股へ、その上へと上がっていく。
「あっ・・いや・・・。あっ!」
蘭世は思わず脚を閉じる。
「・・・・。」
カルロは蘭世に口付ける。
そして閉じられた脚の、その先へ手をすっと滑り込ませる。
「んっ・・・。」
自分でも触れたことのない場所へカルロの指が忍んでいく。
それだけでもう痺れる想いがするのだ。
さらに敏感に反応するところを指は探り続けている。

蘭世は瞳を閉じ、じっとキスに応え続けた。
しかしだんだんと押し寄せる感覚に耐えきれず
ついに唇を逸らせる。
早くなっていく吐息。
「・・・!」
カルロの肩にしがみつく。
登り詰める強く甘い痺れが蘭世の全身を襲った。
初めての、思いがけない感覚だった。

蘭世の腕が力をなくしシーツの上へ倒れ込んだ。
広がる黒髪。上気した顔。
そして時折余波に震わせる身体。
投げ出された白百合の花束のように可憐で魅惑的だった。
カルロは蘭世の頬をそっと撫でる。
蘭世は目を開けるが視界はぼやけている。
それでも霞の奥のカルロを見つめ、彼の顔へ手を伸ばす。
「・・・・。」
カルロは蘭世の手をとり、そっと甲に口づけて指を絡める。
そして蘭世に覆い被さる。
ゆっくり、ゆっくりと蘭世とひとつになっていった。

「!」
鋭い痛みが蘭世を襲う。
「や・・やめ、てっ・・・。」
さっきまでの快感とは全然違う、息の詰まるような貫く痛み。
蘭世は痛みに必死で耐えているようで、
涙を目に一杯ため、唇を微かに震わせている。
そんな蘭世の頬にそっと触れる。
(・・・)
カルロは蘭世の肩を抱く。
ランゼの耳元にカルロのすこし乱れた吐息が聞こえる。
だが、カルロは動かない。
「ランゼ。愛している。愛している・・・」
蘭世の表情がまだ硬いのを見て、そう言いながら
ゆっくりと頬へ、額へ、瞼へ
キスを続ける。
少し痛みが遠のき、表情が緩んだのを見ると奥へとすこし進む。
「んっ・・!」
また走る激痛。
思わず目を閉じ涙が零れる。
その涙をカルロは唇ですくう。
だが、次第に痛みと痛みの間に、
不思議な気持ちが蘭世にわいてきた。
「・・・カルロ様・・・」
確かに、彼とひとつになれている。
蘭世は閉じていた目を開き、カルロを見つめ返す。
そしてカルロとつないでいた手を握り返した。
「ランゼ・・・」
カルロは蘭世の奥へと一気に進んだ。
弱く、強く蘭世を愛する。
いっこうに身体は痛みに慣れない。
蘭世はじっと耐える。
それでも、カルロの動きに連れ痛みとは違う感覚が蘭世に
湧き起こってきた。
彼の首に腕を廻し、その感覚に身を任せる。

二人の乱れた吐息が混じり合う。
愛する人を抱く快感はもう今までの経験とは比べ物にならない。
カルロは蘭世の肩を強く抱く。
再び漏れだした悩ましい声を耳元でもっと聞きたい・・・

二人は、お互いとしか来ることの出来ない
秘密の楽園への入り口へ、ついにたどり着いたのだった。




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