「できた」
ウィングは流れ出た汗を布を持ち上げて拭いた。
色もあってるこれで大丈夫だ。
問題はどうやって飲ませるかだ。
普通の飲ませかたはカイオスが怒りそうだ。
ウィングはとりあえず仕切りの布を取り払った。
「色も質も安心していい。あんたの苦労か知らないけど上出来だよ」
カイオスは少しほっとするようにしていたが隣で呻いている妹を見て焦っていた。
「僕が飲ませてもいいんだけど」
そういったとたんカイオスは目を細めた。
「わかっている。貸せ」
どうやらカイオスはあまり危機感がないようだ。
カイオスは試験管についているコルクを抜き一気にクスリを口に含め妹の口に流し込んだ。
「けっほっ」
横たわっていた少女は咳き込み胸に手を当てる。
そして、ゆっくりとまぶたが開いた。
「お兄ちゃん」
彼女の目はまだ視点があっていないようで、一生懸命兄を見つけようとしていた。
「気分はどう?」
横からそっと声をかけてやる。
本当は兄の方がいいんだろうけどこの兄にそんな甲斐性があるとは思えない。
「平気、少し身体が痺れるけど大丈夫よ。やだお兄ちゃんたらそんな心配そうな顔しないで」
少女の淡い笑みは病に犯され疲れているようにみえる。
これはしばらく安静が必要だな。
何せ倒れている間ほとんど物を口にしてないに等しいのだから。
カイオスは愛しそうに妹の髪を撫でた。
もう彼らは行ってしまうのか。
ふとそんなことが頭の中によぎる。
まぁ仕方ない人間を僕の都合で引き止めておくわけには行かない。
彼らには彼らの行く先がある。
どうせずっと一緒に生きてゆくことなんてできない。
だいたい僕が1つのところにいれるわけないもの。
自分の放浪癖を思い出し笑ってしまった。
この人たちには早く出て行ってもらおう、そろそろ住居を移したいし。
「カイオス、約束のお金」
自分の甘い考えを振り切るようにウィングは厳しい口調で問うた。
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