夢箱 出会いは唐突に2

出会いは唐突に2

少年は厳かに告げた。

「地に戻れ」
と相手の体はバラバラに砕けていくなか少年は、
いや美青年といった方が正しいだろうか。
そいつは笑っていた。これ以上楽しいことがないと言うくらいに。
その美青年を観察していた俺は思った。
支配者の顔だなと。
美青年が笑い終わって俺を見る。
俺は美青年の正体に気づいた。こいつはサタンだ。
奇妙な静寂お互い見つめ合ったまま動かない。
先に動いたのは驚いたことにサタンだった。
(バカな!) などと思いながら、俺は案外、冷静に武器を握ってたりする。
来たかと思ったとき、相手はまたもや不可解な行動をしたのだ。
倒れてしまった。俺の腕の中で、すやすやと。
いくらサタンでも眠ったら危ないだろうに。
だいたい力が全てであるここで、こんなに無防備でいたら殺されてしまうぞ。
俺は予定外の出来事に驚いていたが体はしっかりと動いていた。
サタンの体をゆっくりと抱きとめる。(俺が天界の者でよかったな。サタン。)
相手がサタンである見られたらとんでもないことになる。
顔を見えないよう布をかぶせ、足はしっかりとサタンの城がある
サージ・ハルへと向かっていたのだから。
 
俺は魔力を全開にしてサタンの城に向かった。
サタンは力こそ全てだから力には弱い。
もちろん。サタン城の門番さえもだ。
かといって最初から無理やり入れろというようなバカな真似はしない。
どちらかというと。俺は、慎重な方で、取り乱すことなんて今までなかった。
物事は穏便にというのは俺の持論だ。
だから門番に
「通りすがりの者だが連れの疲れが癒えるまで泊められないか?」
とある程度やんわりと聞いた。
門番は最初相手にしたくなさそうにしていたが
「連れが心配なのでどういった行動をとるか俺にも分からない」
とすごんで見せたら相手は顔をあげ、息をのんだ。
ようやく俺の力を直視して。ソクソクと門を開けた。
門番は、中の執事に俺のことを話すとまた門番をやりに戻った。
中の執事は俺を一別すると淡々とこういった。
「力がある方だ。貴方がいて我々は徳することも損をすることもないだろう。
まして、あの方は経費が二人分増えたところで気にはしない」
 
俺はサタン城の一番いい客室を使えるようになった。
内装は神の客室とそう変わらない高級品だが、こちらの方が妖艶だ。
神の客室はどちらかというと疲れを癒すことが目的である。
俺は客室に着くとサタンを肩からどっと落とす。
さすがの俺も、大の男一人を長時間背負って動くのはきつい。
俺は肩をならし少し肩を休めた。
そして、サタンの上着を脱がして、
自分の上着と一緒に壁に掛けた。
サタンを蒲団の中に押し込むと俺はサタンの寝顔をじっくりと観察した。
こんなことは滅多にできることではないはずだ。
サタンがあまりにも無防備すぎてなんだか笑える。
「とうさま・・・。か・・ぁさ・・ま」
と唇を薄く開いて呟いた。家族中はかなり良さそうだな。
悪魔にしては珍しいかもしれない。
俺の手は自然にサタンの頭を子供にするように撫でてしまった。
サタンは俺の体をすり寄って抱きつくと。
また寝言を言って安心した表情でいる。
今の俺達の状況を想像してみたら、ふと笑えてきた。
まぁ、たまにはこういうのも悪くないだろう。
俺はサタンの横で大人しく、寝ることにした。

 

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