「じゃあ、指きりしよう」
 「うん、しよう」
 男の子と女の子は、小さな小指を絡ませると、にっこり笑顔を浮かべあった。
 明日は月祭り。秋の収穫のあとに開かれる、盛大なお祭りの日。
 立ち並ぶ沢山の屋台。その店先に並べられる、ご馳走やお菓子の数々。そして、屋台の数に負けないくらいの、たくさんの祭り見物の人間で一日中賑わう、楽しいお祭りが、明日開かれる。
 二人とも、祭りに行くのは初めてだった。だからこそ、一緒に行こうと約束した。初めてのお祭りは、一番の友達と一緒にいきたいと、二人とも思っていたから。
 想いを小指に込めた、この指きりの約束は、きっと、ううん、絶対に破られない。
 太陽が山の陰に隠れていく。あたりの景色が、絵の具で染めたみたいに赤一色になっていく。
 今日は、もうお別れの時間。そろそろ家に帰らないと。
 「バイバイ」
 「また明日!」
 元から赤い髪の毛を、さらに真っ赤に染めて、女の子の姿が夕日の光の中に消えていく。それを見送りながら、男の子はズボンのポケットに手を入れた。
 祭りの夜には、たくさんの花火が上げられる。赤や黄色、青い火花が、夜空を真っ黒なキャンパスにして、きれいな炎の絵画を描く。
 その花火を一緒に見ようと、二人は約束していた。もちろん、本当は、夕方になったら帰らないといけない。でも、明日は特別な日。お父さんやお母さんに怒られるのは、覚悟の上だ。
 少年は知っていた。
 月祭りの花火の夜に、男から女へネックレスを送ると、その二人はずっと一緒にいられる。そんな言い伝えがあることを。
 この言い伝えを教えてくれた、お手伝いのおばさんは、坊ちゃんにはまだ早い話だ、と笑っていた。
 なんで早いのか、男の子にはよく分からなかった。ずっと仲良しでいたいって、子供が思っちゃダメなの?そう訊いてみたけれど、おばさんは笑って答えてくれなかった。
 だから。
 男の子は、ポケットにしまった安物の玩具のネックレスに指を触れると、力を込めて握り締めた。
 言い伝えは、子供がネックレスを渡してはいけない、とは言っていない。だったら、これを明日渡そう。そう思って、少ないお小遣いを使って買ったネックレス。
 そして、このネックレスを渡して、こう言おう。「ず〜〜っと仲良しでいようね」って。 女の子も、きっと笑顔で受け取ってくれるはず。
 男の子は、もう一度、女の子が帰っていった方向を見つめた。もう女の子の姿は見えない。夕暮れの赤い景色も薄くなりはじめ、そろそろ夜が近くなってきているのが分かる。
 男の子は、家の方向に・・・ちょうど、女の子とは逆の方向に駆けだした。
 楽しい明日を想像し、口元に無邪気な笑みを浮かべながら・・・。

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