hair is shampooed.
「ね・え。」
ずぃ、と犬みたいな目をあたしに近づける。
「な、何・・・?」
雑誌に目を落としていたあたしは、彼の顔が近すぎて少し赤くなりながら答えた。
少しぽてっとした口に思わず目がいってしまう。
「あ、今キスするかと思ったでしょ?やーらしー♪」
久々の二人重なったオフを、「ゆっくり部屋で過ごしたいな」と言ったのは彼。
年が明けて、やっとあたしにも彼にもにもゆっくりした時間がやってきた。
去年は彼の仕事がキツキツで、あんまり会えなかったから。
こうやって二人でゆっくりするなんてこと、すごく久々だった。 でもあたしは美容師の卵で、また明日から出勤だ。
明日から暫く、仕事から帰れば彼がいる。お帰りと言ってくれる。
それはどんなことより、仕事をがんばれるエネルギーだと思っていた。
東京だというのに、外ではちらほらと雪が降っている。 その外を寒さを強調するかのように、窓ガラスは曇って濡れている。
部屋の中はヒーターで十分暖かく、テーブルの上には温かいココア。
何故か閉じ込められたように感じる、彼と二人で。
「そ・・・んなことッ!」
あたしはずるりと膝に乗せた雑誌を落として後ずさる。 顔が熱くて、更に赤くなった(と思う)顔を手で隠す。
「・・・可愛いなぁ。」
床に直接座った細い身体。片膝を立ててそこに肘を乗せて頬杖。
・・・綺麗。
だなんて見ていて思っていたら元来の目的を思い出したらしく「じゃなくてさ」と頬杖を外した。
「髪、洗って??」 「・・・・・は?」
小さな窓があるバスルーム。 そこにケープをして空っぽのバスタブにちょこんと座っている彼。
あたしは洗い場。しゃわしゃわと泡だった髪。その間に指を滑らす。
「おかゆいところはございませんか?」
おちゃらけて聞く。彼はニコニコしながら「大丈夫」と答える。
「はい、じゃあ洗い流すよ。」 バスタブの縁に首を挟んだ状態で彼に上を向かせた。泡だった髪を洗い流してゆく。
「なんでいきなり髪洗ってなんて言ったの?」
上を向いた彼と立て膝で髪を洗い流す自分。ちょうど目があってあたしは聞く。
「ん、何かね、お客さんだけにこの手を独り占めさせてるの、何か嫌になった。」
あたしの手に触れてニコ、と微笑みながら、あー、でも幸せだぁなんて言っている彼を見て、どうしても愛しさがこみ上げてくる。
「好きよ、ヒロ。」
自分でもビックリするくらい素直に言葉が出た口に、ヒロが身体を少し起こしてキスしてくれた。
「きゃっ、ヒロ起きないで!!ジーパンが濡れちゃう!」
「いいじゃん、濡らしちゃおうよー」
そう言ってあたしの手からシャワーを取り上げる。
その後二人ともずぶ濡れになり、バスタブにお湯を溜めて風呂に入りなおしたことは言うまでもなかったり。
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最近増川君がかっこよく見えて仕方がありません。
2005/02/01 裕美