今日一日

ちょっと不自由だったけど

これはこれでいいかもしれない





コンタクトレンズ





  ばきっ





「あぁっ!」





なにやら不吉な音と共に

健一の声が響いた



「ちょ、ちょっとレオ。何してくれんだよ!」



健一はコンタクトレンズを落としたらしく

レオがそれを踏んづけてしまったらしい



「んな、落とした健一が悪い!」



レオは反省する気も無く反発していた



「んだと、レオ。これがなかったら仕事が出来ないんだよ!」



「へっ、眼鏡かけりゃいいじゃん。」



「今日、眼鏡忘れたんだよ!」



「えっ?」



珍しく眼鏡をかけていない健一

確かにこれでは仕事がはかどらない

しかし謝るに謝れないレオ



「よ、よーすけに借りればいいじゃん。」



「バーカ、なんで洋輔が2個も3個も眼鏡持って来るんだよ。」



確かに眼鏡なんて1個ありゃ十分だ



「あ〜ぁ、今日どうしよう...。」



健一の重い声

レオは益々責任感を感じていた





「...分かったよ。今日一日健一の目の代わりするから。」



「へっ?」



思ってもいなかったレオの発言

健一はキョトンとしている



「だから、今日一日健一に支障が出ないように目の代わりするから。」



「ったって、どうやって?」



「ん?まぁ、字を読んだりしたり楽譜読んだり...。」



確かに助かるが結構恥ずかしい事だ



まるで、お父さんと字の読めない子供みたいだからだ



「んな、もういいよ。」



「だって...健一、これ読める?」



そこには小さな文字

健一は目を細めるが読めない



「んじゃ...これは?」



さっきより字体は大きいが

やっぱり読めない

「ね、健一。最低これは読めないときついよ。」



確かに字が読めない楽譜が読めないは辛い



「ん、でも...やっぱいぃ。」



「健一、そこで強がったってなんもなんないんだよ。」



レオの言うとおりだ

仕方なくレオの言うとおりにすることにした











「んで、これがファソシレで...。」



「健一、何レオくんにおそわてんねん。」



はぁ、これで何度目だろう

同じ事何度も言われて

結構恥ずかしい



「だから、コンタクトこいつが割ったんだよ。」



何回目だろうこのセリフ

もう嫌になってくる



「まったく、なんでオレがこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。」



ついグチってしまった

それがレオに聞こえたらしい



「健一...。ホントにゴメンな。」



悲しそうなレオの目

一気に罪悪感が生まれてきた健一



「い、いや、もとはと言えばオレも悪かったんだし。」



ついレオをかばう真似をした健一

今度は恥ずかしさが生まれてきた



「(なんで、レオを庇ってんだろ?)」





こうして一日は終わった









「レオ、今日はアリガトな。」



「いや、僕の方こそコンタクト割ったりして。」



やっと素直になれた気がした2人





「なぁ、レオ。」



「ん?」



「今日色々言われたのはいやだったけど、

 一緒にいられたのはそんなに悪くなかった。」



「えっ。」



思いがけない健一の言葉

レオはてっきり今日のことで嫌われたと思っていた



「んじゃ、明日遅刻すんじゃねぇぞ。」



そう言って去っていった健一の顔は

心なしか少し赤らんでいた












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