著者による注★意★書
・瀬人イシです。
・既にそういう関係にあったようです。
・バトルシティ編数ヶ月後です。原作休載中だからこその無謀行為。
・ワハハハハな社長もしたたかな姉さんもいません。。。



「月」



「…イシズ?」
「お久しぶりです。瀬人」
その日、職場から自室に戻った瀬人を向かえたのは、静寂でも、弟でもなく、一人の女性だった。
そこに佇む姿は、無機質なその部屋に不似合いな輝きを備えていた。
身内以外の日本語を聞くことも久しぶりだ。頭を日本語に切り替える。
「なぜお前がここにいる。…いや、それよりなぜアメリカに…」
まったく予想だにしていなかった知人の訪問に、瀬人は動揺していた。
「貴方に会いたくて」
そう言って微笑む。瀬人は言葉を失った。
「冗談です」
「……貴様」
「メトロポリタンで古代エジプト展を行う計画があって、その打ち合わせに訪米したのです。
貴方がKC.AmericaNY本社にいると伺いましたので」
貴方に会うために、と付け加える。
どこまで本気なのか。
「どうやって俺の部屋を調べた」
ここは自宅ではなく、仕事用に借りた私室だ。
自宅に戻る暇のない時、ただ眠るだけのための、職場に近い一室。
所在を知る者は極僅かだ。
「貴方の会社を訪れたら、偶然モクバに会いました――少し背が伸びたようですね。
彼に訳を話すとここまで案内してくれましたよ」
嘆息する。弟の所業を彼に責められるはずも無い。
敏感な弟のことだ。薄々感づいていたのだろう。


「全く…相変わらずのようだな、お前は」
苦笑する。
この女くらいなのだ。瀬人の動きを絡め取ってしまえるのは。
そしてそれは、嫌ではない。むしろ不思議な心地良さがある。
「貴方は少し変わりましたね」
抱え続けていた憎しみは、昇華できたのだろうか。
かつて憎悪の炎が渦巻いていた青い瞳は、今は大洋のように落ち着いている。
「そうか?」
彼自身に自覚は無いのか、そう聞き返してくる。
変わらない彼らしさを見つけ、イシズはまた微笑んだ。
フン、と鼻を鳴らし、瀬人はジャケットをハンガーにかけ、ネクタイを外す。
「少し待っていろ」
イシズにソファに座るよう促し、部屋の奥へと消えた。
しばらくして水の音が聞こえる。
イシズは小さく笑う。
まるで。そう、まるで大人のようだ。
イシズの周りにもいる、仕事に追われる男たち。
もちろん彼が、雇う側であることは、追う側であることは知っている。
だが、彼は若いのに、あまりにも生き急いでいるのではないか。
彼はまだ17歳なのだ。
自分が命を賭して守ろうとした、そして守ろうとしている弟と一つしか変わらない。
その若さには、あまりにも不釣合いな地位。実力。才能。
自分のことは棚に上げて、イシズは思った。


軽装で戻ってきた瀬人の姿は、その年齢に相応のものだった。
濡れた髪が重く揺れている。手には冷やされたグラスが二つ。
「何がいい。大概の物は揃っている」
「貴方と同じもので結構です」
瀬人は向かいに腰掛け、無言で瓶のコルク栓を抜いた。
瑞々しい葡萄とアルコールの香りが広がる。
「瀬人、貴方はまだ…」
「固いことは言うな。再会の記念だ」
冗談とも本気ともつかない口調でそう言う。ワインがグラスに注がれる。
慣れた手付きだった。
イシズはグラスを受け取り、宙で止めた。
「では、再会の乾杯を」
フン、と笑って、グラスを差し出す。軽い透き通った音が響く。
イシズは酒には詳しくは無いが、上等なものだということは分かる。
空になったグラスをテーブルに置くと、瀬人が再びワインを注いだ。
「瀬人」
「それで、俺に何の用だ」
また何か謀か、と。
意地悪だ。イシズは思った。
会いたかったから。そしてまた時と空間を共有したかったから。
だから来たのに、幸せな時間と空間を先に作ってしまって、味わせてからそんなことを言う。
瀬人の顔を見ると、口の端で笑っている。
冷笑でも、嘲笑でもない。


「貴方に、会いたくて」
再び、告げる。心から。
瀬人はグラスを置いた。その音に気をとられているうちに、瀬人の手が近づいていた。
頬にその指が触れる。
「――冗談か?」
「…いいえ」
その微笑に満足したのか、瀬人は薄く笑う。
その笑みに、イシズは心奪われるのだ。
どちらとも無く唇を寄せる。軽い口付け。
二人の間にあるテーブルが邪魔だ。瀬人はイシズの肩を抱いたまま、器用にその障害をすり抜ける。
再び唇が近づく。今度は深い口付けを。先に舌を差し出したのはイシズだった。
互いの口内を弄り合うように、舌が絡みつく。
微かに、葡萄の香りのするキス。
「は…」
呼吸をしようと、逃れたイシズの唇を、瀬人が追う。
空白の時を埋めるかのように、瀬人はイシズを求めた。
イシズの重みが、胸にかかる。膝の力が抜けたのか、ずるずると座り込んでしまった。
瀬人はその体を抱きとめ、長い髪に顔を埋める。
イシズの肩で、クク、と笑う。イシズは恥ずかしさで少し震えた。
瀬人は、イシズの背を撫で、その体を抱き上げた。


イシズを抱いたまま、瀬人は扉を開いた。
綺麗に整備されたベッドに、イシズの身体を横たえる。
灯りの着いていない寝室には、窓から月明かりが煌々と差し込んでいた。
満月に近いその月が、大きな窓から二人を見ているかのようで。
その明かりは、ベッドに横たわるイシズの肢体を映し出すのに十分だった。
「瀬人…カーテンを…」
「いらん」
短く切捨て、自らもイシズの傍に寄る。まだ少し湿った髪が、イシズの額に触れた。
再び、深い口付けが繰り返される。
瀬人はキスを続けながら、イシズの服を剥ぎ取っていく。
唇が離れた時には、イシズは一糸纏わぬ姿になっていた。
少し離れて、その体を眺める。
イシズが体を捩じらせて、隠そうとするのを、止める。
「――美しい…」
月に照らされたその体に、思わず声が漏れた。
その言葉に頬を染め、瞼を閉じ、身じろぐ。
一通り視線を移して満足すると、瀬人は自らの服を脱ぎ捨てた。
触れ合う互いの肌が、心地良い。
イシズが瀬人の首筋に頬を触れると、爽やかな石鹸の香りがした。
瀬人がイシズの耳を、唇でなぞると、切ない息が漏れる。
小さく笑って、そこに息を吹きかけてやると、イシズはくすぐったがって身を捩った。
上目使いで咎めるように睨む表情は、年齢より幼く見える。
首筋に、肩に、唇が舞う。手のひらは体を滑る。
すでに汗の滲む肌からは、男を誘う牝の匂いがした。
微かに残るアルコールの香りと相まって、瀬人の肺を満たしていく。
手のひらが両胸を捉えた。ゆっくりと、優しく乳房を揉みしだく。
どこまでも柔らかい乳房は、瀬人の指を飲み込むように形を変えた。
片方の乳房に、舌が降りた。転がすように舐めまわすと、イシズの表情が変わる。


「あ…」
小さく声が漏れる。
片手が乳房から離れて、イシズの繁みに向かった。
瀬人の指が、イシズを探り当てる。「あっ」
小さく、揺らすように優しく愛撫する。物足りなさが募る。
それに気づいてか、唇が指を追うように、脚を滑る。
瀬人は指を離し、そこに舌を落とした。
「ああっ…」
瀬人はイシズの腰を浮かせ、抱えた。舌でそこを舐め、弄ぶ。イシズの腰が震える。
イシズが瀬人を見ると、自分の秘所に舌を這わせる瀬人の顔が見える。
見ることで、瀬人に抱かれいるという実感が増し、更に体は感じた。
「あ…あ……ん…んん…っ…」
声を出すまいと、口を手のひらで覆うイシズを見て、その手を外した。
愛撫を止め、イシズの耳元で低く囁く。
「聞かせろ」
その声に、身体を震えさせる。
「やっ…」
再び瀬人が顔を埋めたとき、イシズは啼いた。
尖らせた舌が、イシズの中に入り込む。中でくるくると動く舌に、とろとろと蜜が絡んだ。
「あ、あぁっ…やぁっ…」
自分の声にすら、身体は応えていた。噎せ返るほどの牝の匂いに、
瀬人自身も大きく高揚する。
あれから一度も女を抱いていない。イシズを抱いてから、他の女を抱く気にはならなかった。
もともと、女など、性の捌け口としか思っていなかった。


だが、イシズは違っていた。イシズを抱きたかった。他の女は要らなかった。
その空白が、一層イシズを求めた。
望んでいた場所への愛撫に満足しながら、乳房への刺激を失ってしまったイシズは、自らの指で弄び始めた。
瀬人が与えたよりも、強い力で、乳房を揉みしだく。
そのイシズの姿を見て、瀬人は一層愛撫を強めていく。
「あ、あ、瀬人…っ…!」
名を呼んで、イシズの力が抜けた。抱える腰の重みが増す。
舌だけで果ててしまったらしい。
瀬人を求めていたのは、イシズも同じだった。幾度瀬人を想って自分を慰めたことか。
潤んだ瞳で、瀬人を見る。抱き上げていた腰をそっと下ろし、瀬人はイシズに顔を寄せた。
その涙に指で触れる。イシズは瀬人の背に腕を回し、弱々しく抱擁した。
瀬人は抱擁を返した。イシズは呼吸を整えて、瀬人にゆっくりと唇を落とす。
頬に、瞼に、首筋に、腕に。瀬人はイシズのするがままにさせた。
そして瀬人自身に行き着く。そこはすでに十分に充血していた。
イシズの舌が、それに触れると、瀬人が小さく身じろいだ。
部屋に淫猥な音が響く。
イシズの唇が、舌が、指が、瀬人を撫で回した。
長い黒髪がさらさらと流れ、瀬人の脚に広がった。
先端からじわじわと漏れ出る液を、イシズは丹念に舐め取った。
「ふ…ぅっ…」
瀬人は甘い息を吐いた。イシズを引き寄せる。
イシズの顔を見ると、頬を染め、視線を逸らした。それでもすぐに再び視線を絡ませ、小さくうなずいた。
瀬人はイシズの上になって、彼女の中にゆっくりと自身を捻りこませる。
それは本来そこにあるべきものであるかのように、迎え入れられた。


「ああっ…!瀬……!」
「くっ…イシズ…っ…」
思わず瀬人を締め付けると、中の熱を更に感じ、快楽の波はとどまることが無い。
瀬人も、イシズの全てを味わうために、中を掻き乱した。
イシズの両腕が、瀬人の背に回る。行き場のない力が、イシズの指から瀬人の背に伝わった。
その軽い痛みさえも、快楽となる。
瀬人はイシズの唇や頬に口付けながら、その快楽に酔いしれた。
「ああ、…瀬人、瀬人、…」
己の名を繰り返し呼ぶ腕の中の女を、どうしてこれほどに愛しく思うのか。
未知の感情に翻弄されながら、瀬人はイシズを求めた。
体を捩りながら、体位を変える。向かい合ったまま、イシズを上にした。
頬に触れる黒髪の感触。手のひらの中の柔らかい乳房。そして彼女の中で熱く溶ける彼自身。
「んっ……ぁあっ…瀬人っ…」
イシズの顎が仰け反り、腰が瀬人を求めて揺れ動いた。
その息が背を撫でるかのように、異なる快感が体を巡った。
終わりが近い。いつまでもこうしていたいのと、早くそこにたどり着きたいのと、
両極の感情に戸惑いながら、瀬人は、イシズは互いの名を呼んだ。
「ああ…ぁん…っ…あ…ああっ…!」
「く…ッ…」
ほぼ、同時だった。
イシズが殊更に締め付けるのと同時に、そこに瀬人の精が放たれた。
体が、それを全て飲みほしていく。
イシズが瀬人の胸に倒れこむ。


荒い呼吸のまま、瀬人はイシズから抜け出そうとした。
イシズは力の入らない体を動かして、それを止めた。
「もう…少し、このままで…いてください…」
その哀願を断れる男が、世界にいるだろうか。
瀬人とて例外ではなかった。自分の胸にぐったりと圧し掛かる体に腕をまわした。
ひとつになったままで。
イシズの髪、肌、呼吸が、胸を擽るのを感じた。
その感触が、瀬人の牡を刺激する。
イシズは瀬人の腕の中で、幸せを感じていた。
ふと、瀬人のイシズを抱く腕に力が入る。
イシズの中で、瀬人自身が再び脈動を始めた。
「瀬人…?あ…んっ…!」
繋がったまま、体をずらし、イシズの太腿を持ち上げる。
「瀬人…!…ああっ…」
再びゆっくりと腰を動かしだした瀬人を、咎めるように名を呼ぶ。
だが、それには構っていられなかった。本能が、イシズを求め続けていた。
忘れようとしていた、己の欲望に、火がついたのを感じた。
イシズも、応えるように、動き出した。瀬人を求めているのは、イシズも同じなのだ。
いつ終わるとも知れず繰り返される行為に、二人は時を忘れた。
ゆっくりと巡る月。いつか来る朝。そして訪れる別れまで。
二人は求め続けた。満たされることなど無い。



――了


2004年5月8日うp

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