「社長とイシズ姉さん」


決闘船。各決闘者に割り当てられた部屋は機械的な壁によって完全に区切られ、
音を、空気を逃さぬ完璧主義な箱として存在する。
「瀬人・・・リシドを保護していただき、有難うございました」
「フン。海馬コーポレーションの名で開かれているこの大会。
助けろと言われて、それが出来ないような体制は取っておらん」
 他の決闘者達が夢の中にいる真夜中、海馬瀬人は
弟・モクバ以外の誰を入れることも無かった自室にその女性が入ることを許していた。
「特に、貴様のような女の申し出を断れば後で何を言われるか
分かったものではないからな・・・・クク」
 そして、データの整理を終えたのか手元のパソコンの電源を落とすとゆっくり立ち上がり
いつものように足音を立て、女性・・・イシズの元へと歩み寄る。
 「一度闘っただけでそう言われるなんて、心外ですよ・・・瀬人」
 視線だけで立ち尽くす相手もいる程の海馬の高圧的な態度にも、イシズは怯むことは無い。
獲物を狙う獣のような貪欲さも、それ以外の何かを狙うような生々しさもそこにはなく、
ただ単に物理的な距離を縮めるだけの行動にすぎなかったはずなのに、シンとした夜、
衣擦れの音すらも聞こえないような静かな部屋で海馬とイシズの空間は確実に狭くなっていく。



 海馬から見える、頭一つ分低いところにあるイシズの美しく穏やかな笑顔。
 そこには先の試合で見せたしたたかさ、狡猾さは微塵も感じられない。
 あるのはただ、淡いクリーム色のライトに照らされた、月を連想させる一人の女性の姿である。
「・・・一度闘えば、貴様の根性の座り具合など嫌というほど思い知らされるわ」
 口元にいつもの他人を見下す笑みを浮かべつつ、しかし海馬は
自分とイシズの距離を狭めたこに後悔し始めているのだった。
 部屋の広さは変わらないのに、二人のいる空間は狭くなりそこにある空気の密度は濃くなっている。
間近でイシズが呼吸を繰り返すたびに、自分を包む空気が彼女によって侵食されているように感じられた。
「でも貴方は私に勝って未来を変えました」
「当然だ。俺は俺の敗北の未来など信じん」
 吸い込む空気にもイシズを感じる。
 それを振り払うかのように大きな呼吸を一つ落としてみたが、途端に、海馬の肺は彼女の香りで満たされてしまい、
それは瞬く間に彼の体の中に拡散していった。



「・・・・・・・!」
 片目を薄く閉じ眉を眉間に寄せ、唇をきつく閉じた海馬であったが時は既に遅い。
後悔する間もなく、指先にまで染み渡っていった内側からの感覚的なイシズの存在と、
「どうしたのです?・・・瀬人」
 下から伺うような声とともに綺麗に伸びた指先を彼の頬にそっと当ててくる現実のイシズの存在に
頭の中、理性をつかさどる部分は確実に麻痺していく。
 己の肌に触れてくる女の指先から何かが染み込んできて、
それは既に海馬の体内に行き渡っていたイシズの香りと混じりあい
静かに確実にある種の反応を起こすのだった。
「・・・・・貴様は・・・・・」
「?」
「何故・・・・戻らん」
「瀬人?」
「何故・・・ここにいるのだ・・・・」
「何故と言われても」
「俺に・・・・・抱かれるつもりなのか?」
 自分でも煩雑な事を言っているのはわかっている。
 イシズは何も言っていない・・・・ただ、リシドを救ってもらえた礼以外には。
 が、痺れて感覚を失った舌先は海馬の心の奥底に残っていた理性らしきものを無視して言葉を流しだす。
「抱かれ・・・・?」



 海馬が自分の頬に置かれた指先の動きが止まるのを感じたのと、
イシズの表情がひどく子供じみたものになるのは同時だった。
 目を丸くして、不思議そうに海馬を見上げるイシズ。
 そのイシズの口元が、海馬の目の前で滑らかに吊り上げられていき、
「抱かれるだなんて、貴方にしては随分と・・・・」
 寸前まで子供っぽく見えた瞳は
緩やかに年上の女性としての柔らかさを湛えたものへと入れかわる。
「凡百な考え方をしたものですね。リシドを助けて貰ったお礼に、私がそうするとでも?」
「・・・・・・・・」
 凡百といわれて気を損ねない海馬ではなかったが、
今の己の発言は確かに陳腐すぎるものであった。
 無言で言葉自体は凡百であることを肯定し、きつい視線でそれは自分の普段の発想ではないと否定する。
 が、不機嫌極まりないといった表情の海馬を見つめていたイシズは、
指先を耳元へと滑らせると今度は温かい掌全体で彼の頬を包みこんだ。
突如振り落ちてきた、人間の生々しい皮膚感覚に
海馬は自分でも気づかないうちに身体を強張らせる。
「あなたは望むのですか?私を」
 聞こえる声が鼓膜に振動を与えた。
 だが見える姿は先ほど同様、静かな月を思い出させるだけのもの。
 触覚と聴覚と視覚のズレに、汗が一筋こめかみを滑り落ちる。
「リシドの事は無関係に・・・私を抱きたいと思います?」
 香りと化して体内を満たしていた“イシズ”がざわざわと騒ぐ。
「わたしは」
 つい、と心持ち、顎を口付けをねだる風にも見える仕草がその場にとどまっていた空気を動かす。
「貴方が私を抱くと思う事を・・・嫌とは感じません」
「!?」
 穏やかな意志を秘めた声と動きによって流れた空気は、
海馬の心の奥に潜ませていた理性をボロボロと崩していった。



 イシズは海馬の返事を待たずに、自ら清楚な衣装に手をかけると静かに脱ぎ始めた。
 静かな衣擦れの音と共に布は胸のラインを滑らかに滑り落ち、そのまま
なんの抵抗も受けずに彼女の足元まで落ちて行く。
豊かで形のいいバスト、そのバストとつりあいの取れたウエスト、女性らしさを表すヒップ、
肉感的でありながら余分なものは無い太もも。
 白い色が下へ下へと落ちていくのにつられ、露になったイシズの肢体を
上から下へとなぞるようにして海馬の視線が走っていく。
「・・・・・・・・・」
 ある程度予想できたとはいえ、目の前にあるイシズは海馬が今まで見てきた
どの女の裸とも違っていた。
 身体的なバランスだけなら同じレベルの女はいる。
 しかし、イシズの美しさは肉体的な部分以外からもあるような、そんな気にさせられるのだ。
 一方のイシズは、普段は落ち着いているとはいえ流石に男の視線に晒されているのは恥ずかしいのか
瞼を伏せると右腕で胸を、左腕で下着をつけていない部分を隠そうとする。
 何故かその行為に苛立ちを感じた海馬はそれを許さじとばかりに
イシズの腰へと右腕を回し無言で諌めた。



「瀬人・・・!」
「気にくわんな。貴様は俺に抱かれるのを嫌だとは思わんのだろう?」
「ええ」
「なら、隠すような真似をする必要は無い」
「それとこれとは」
「・・・・五月蝿い」
 崩れ去った理性の跡に現れたのは、驚くほどにいつもの彼らしい自信であった。
 憮然としたままやりとりする自分の声に先ほど感じた霞も麻痺も払拭されていき、
代わりに開き直りとも取れるような力がそこに在るのを海馬は感じていた。
 ・・・・・それは本能とも言い替えられる力ではあるのだが。
 腰に片腕を回されたイシズは抵抗する事をあきらめたのか、腕の導くままに身体を預け
ベッドの上へと軽く放り出される。
 横向きに倒れた上半身を起こすため手に力をこめようとした瞬間、
彼女の裸体に暗い影が落ちる。
「起きる必要は無かろう」
 海馬はそういうとイシズ右肩を抑えてシーツの上に押し付けた。
 不意打ちに出された強い力に反応出来なかったのかイシズの身体は簡単に海馬によって組み敷かれ
両手を広げた無防備な体勢を眼下に晒す事となる。
 ベッドのわきにあるライトにいつの間にか光が灯されていたのも、
イシズの身体がくっきりと浮かび上がる原因となっていた。
「・・・・強引な人ですね」
 諦めたのか呆れたのか。



「昼間に闘っておきながら、それが判らん貴様でもあるまい」
 肩を抑えていた手を下ろすと海馬はその腕で己の身体を支え、右掌で乳房を鷲づかみにする。
「・・・・・・・・・!」
 イシズは与えられた強い力に痛みを覚えたらしく一瞬だけ眉をしかめたが
それでも口元から笑みは消えなかった。
「確かに。・・・・どうやらデュエル同様、ベッドでの戦術も力で押し切るだけのようですね・・・・・」
「!!貴様・・・・・・」
 男としての尊厳を傷つける物言いに、手の中にある果実をもう一握りしてやろうかと海馬が思った瞬間、
イシズの指先が自分の唇に触れてきた。
 行動の意味に戸惑う海馬をよそに、右から左へ左から右へ・・・何度かくすぐるように唇を滑った後、
顎へと落ちた指先はくすぐったさを途切れらせる事なくラインを滑って首筋から首元へと移り、
そのまま海馬の肩口にまで回された。
「イシズ」
「せめて、私が貴方を抱きしめる事は咎めないで欲しい・・・」
 イシズの細い両腕が海馬の背に回され、力ない抱擁が海馬の身体を包む。
 何を思ってイシズが己を抱きしめるのか海馬に知る事は出来ない。
 しかし、身体に感じる自分以外の体温は怒りを収め、右手の力も緩めさせる。
 海馬は我知らず笑みを浮かべ、
「咎めはせん。・・・・そうだな・・・・これなら文句は無いだろう」
「え?」
 イシズの抱擁を解くとおもむろに唇を重ねるのだった。



 海馬は呼吸ができる程度の隙間で唇を離し、しかしそれ以上距離をとることなく
今度は舌を滑り込ませた。
瞬間はとまどったイシズだが、すぐに相手の呼吸に合わせて絡め返す。
それは明らかに生き物の生々しさを感じさせるぬめりと動きで、
海馬にイシズが生身の人間だという事を改めて思い知らせた。
「フン。貴様も女であり人間であったわけか」
「・・・・私を何だと思っていたのですか」
「したたかな化け物だ・・・・クク・・・・」
「貴方・・・・・、ぁ・・・・!」
 一度は加減無しに掴んだ乳房を、今度は同じ手で優しく強弱を付けて揉みしだいた。
形良い丸みを撫で下から掬うように上げ、親指と人差し指で乳首をつまむように弄る。
海馬の手が動くたびに実った果実は柔らかく形を変え心地よい重みを掌に伝えてきた。
「あ、せ・・・と・・・・」
「どうした。貴様らしくないぞ」
 乱れ始めた呼吸を吐きながら小さく顔を背けたイシズの耳元で殊更声を落として囁いてやれば、
「・・・! 、ぅ・・・、」
 かみ締める声が海馬の耳を潤す。
「いつまでもその強がりが続くはずは無い・・・・」
 首筋から軽い吸い付きを繰り返した後、柔らかさを堪能しているのとは違う方の乳房に舌を這わせる。



=打ち切り=


2004年4月29日うp

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