「(無題)」


「マリク?」
 イシズの目の前にいたのは、弟マリクであった。
 だが、目の色が違う。髪の色が違う。何よりも気配が違う。
 禍々しい、何か。
「ククク…姉上サマ…『始めまして』とでも言うのかな」
 イシズは自らの首元で鈍く光る千年タウクへとっさに手を伸ばした。
 だが、脳裏に見えるのは真っ黒な闇のみ。未来は見えない。
 闇のビジョンは、あながち間違いではない。
 だが、今のイシズには弟に何が起きたか理解できなかった。 
「クソ親父が死んだときにもお会いしましたが…あの時はつい気絶させてしまったからねぇ…クク」
 いやに耳につく含み笑いは、今まで聞いたことのないものであった。
生まれてから十数年、一度も耳にしたことのない。
 本能的に恐怖を感じたイシズは、マリクらしき人物から、じりじりと 身を離した。だがその倍の勢いで、
相手もこちらへと迫ってきている。
「無駄、無駄だよ…姉上サマ…逃げても、大声を出しても、この俺からは逃げられない…」
「マリクを…マリクを返しなさい!」
 やっとの思いで搾り出した声は、確実に震えていた。
「俺がマリクだよ…正確には、アイツの裏の人格…闇のマリクだ…姉上サマ…
あんたに見せてやろうか?表のマリクが持っていた、真っ黒な部分を…」
 そういうとマリクは、右手に持っていた千年ロッドを目の前にかざした。ロッドは怪しい光を放ち始める。
 その光を見た瞬間イシズの身体から力が抜け、がくりと床に膝をついた。
 振りかざしたロッドの鋭い部分が、イシズの簡素な衣を引き裂いた。
「!!」
「ほうら、こうやってマリクは、姉上サマの服を脱がしたかったんだ…」
 身体にまとわりついた服の切れ端を、マリクは乱暴に剥がした。
 褐色の肌が晒される。豊かな胸も、あらわになった。
「や…めなさい…マリク…」
 身体はもとより言葉に力も入らないので、イシズは抗うこともできない。
「ククク…やめねぇよ…折角俺が出てきてやったんだ。願いくらい叶えてやらないとなぁ」
 マリクの手が、何の躊躇もなくイシズの胸に伸びてきた。優しさのかけらもない手つきでもみしだく。
「くっ…」
「予想通り…いや、表のアイツが想像してた以上にやわらかいよ…」
 そう言うと、マリクはイシズの乳首を口に含み、舌で転がした。
「…お願い…マリク…いつものあなたにっ…ぁ」
「いつものマリクがやりたいことを、俺はただ実行しているだけさ。
… フン、いくら口では抵抗してても、身体は正直だぜ?姉上サマ」
 その言葉通り、イシズの乳首は既に硬くなり、ツンを上を向いている。
鬱血して敏感になったそこは、すこし歯が当たるだけでもイシズの身体に止めようのない戦慄を与えた。
 イシズの目には涙が浮かび、漏れそうな声を抑えるために歯を食いしばっている。そのさまをマリクは
実に楽しそうに、口の端を歪めながら見下ろしていた。
「フン、気丈なことで。…だが、いつまでそれも続くのかな…クク」
 マリクの手が、イシズの下腹部へと伸びていった。
 黒い茂みをかき分けて、イシズの秘部へと指を滑らせる。そこは既に湿り気を帯びていて、マリクの
指を潤わせた。
「おやおや姉上サマ、こんなところを濡らしてどうしたんだい?」
 マリクの指は徐々に奥へと進められていった。本能的に濡らす女の身体を憎みながらもなお、
イシズは歯を食いしばり声を抑えていた。
 だが。
「…あんた、処女じゃないのか」
 マリクの指は既に2本、根元まで飲み込まれていた。処女であれば、何かしら指先にその感触は
あるだろうし、出血があってもおかしくはない。
 一族の中で一番身分の高い女であるイシズに近づける男はそうそういない。
マリクの中で相手の候補があがっていく。
「…あのクソ親父か…それともまさか…」
 リシド。
 忠実なるリシド。
 マリクが思いついた人物がわかったのか、イシズの口元が、ふ、と緩んだ。
 マリクはそれを見逃さなかった。
「リシド…リシドなのか!?あんたの処女を奪ったのは…!!」
「ああっ!!」
 イシズの中に埋め込まれていた指を引き抜き、マリクは乱暴に己自身を突き入れた。
きついが、入る。一呼吸ごとに、ずぶずぶと沈んでいく。
 最奥をとらえて、ぎりぎりまで引き抜き、また奥へと入れる。
 浅く、深くイシズの膣内をかきまぜて、ざらついた壁にこすり付ける。
「嘘だ嘘だ嘘だ!あのリシドが、姉さんを…俺の姉さんを!!」
「あっ!!マ…リク…戻って…ひ…あ!」
 一心不乱に腰を打ち付けるマリクは、既に闇のマリクではなかった。


終。


2004年4月27日うp

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