今月の本   0903号 鹿鼎記〈2〉天地会の風雲児 金 庸(著) 岡崎由美・小島瑞紀 (訳)




今回ご紹介する作品は中国の武侠小説です。 なかなか中国の話は現代の感覚とあうものが少ない のですが、この本は比較的軽快に読むことが できましたので、ご紹介致します。

作者の武侠小説としては最後の作品だそうですが、 その分現代人の感覚に一番近いものになっており、 敵にも味方にもよい人も悪い人もいるという この作者独特な正邪感がうまく反映されていて 非常におもしろいテンポで読めます。

武侠小説とはなにかは、 以前にもおすすめしたスオーズマンという香港映画 がわかりやすいと思います。 忍法や剣士が縦横に活躍する立川文庫のようなものと いえばよいでしょうか。その映画もこの著者の代表作 を下地に大胆に構成したものです。

ただ、中国の娯楽もので一番困るのが正邪の感覚が 微妙に違うことです。 法律を学ぶときに問題となる正当防衛や緊急避難の 処置がどうも、中華世界の物語では割合ひろく認められている のです。つまり、自分が生き残るために 他人を犠牲にするようなことが割合認められてしまっています。 今回の本では、他の話よりはだいぶ少ないのですが、それでも 平気で第三者を犠牲にして自分が切り抜ける場面がでてきます。 (それでも内心詫びているのが少し現代的なところですが。) 結局、現代日本社会の倫理観と中華地区の倫理観が ずれているということのようです。 水滸伝では平気で人を陥れて味方を増やしています。 結局自分にとって最終的にうまくいけば、第三者に被害が でてもしょうがないという考え方がみてとれます。 これは、当然中華地域に相当期間含まれていた日本も 例外でなく、外人が一番感情移入できないのが TVのチャンバラシーンで、正義の味方が 単に役目上命令にしたがっている下っ端役人 (公務員といってもいいでしょう)を次々斬り殺します。 この感覚を修正しようとしたのが水戸黄門です。 もっともこの感覚は、最初からそうではなく、雄呂血のころは、 無実の人を切ることでさらに罪を重ねる辛さというものが、 きちんと描けていましたし、黒沢映画では、一味でない悪代官の 手下が切られるというようなシーンはほとんどなかったはずです。 だんだん、チャンバラの形式美が優先されて倫理観が 薄れて、普通にチャンバラシーンをみるようになってしまいました。 結局は中華世界的な倫理観が実態として日本にも受け継がれている からなのでしょう。

そのような、東アジアではなかなか正義というもの、真の意味での 公にとっての義というものがないことは、 今後の東アジア地域の発展で非常に問題であると考えます。 (三国志や水滸伝によくでてくる個人間の義や幕府などの帰属組織に対する義 といったものはあるのですが。) 最近、中国の高官が中国で三権分立や複数政党制度をやらない と明言しました。 [http://sankei.jp.msn.com/world/china/090310/chn0903100034001-n1.htm] これは、大問題で、いわゆる共産党の一党独裁をこれからも つづけ、幹部同士の話し合いで人事や政策を決定するということのようです。 詳しい内実はしりませんが、私のような外部からみるものにとっては、 政治に興味がない皇帝がいる中国の王朝となんらかわらないシステム のように思われます。十八史略を読めば分かりますが、 中国王朝は何度も同じような歴史を繰り替えして滅びていきます。 今回の中華人民共和国も同じ轍を踏むことになると宣言したようなものです。 現在中国は世界の工場となっているのですから、また動乱がおきたら 世界にどれだけの影響を及ぼすかよく考えて欲しいものです。 そもそもサブプライム危機後でも5%以上の成長目標が掲げられる 国が複数政党制度をとったとしても、野党に政権が移るような ことがないのは日本の自民党をみればあきらかです。 そして、政権交代の緊張感がない組織がどれほど早く衰えていくのか は、日本の年金行政をみてもあきらかです。 まして、三権分立は国の方針を理想にちかずけて、 権力者にかってなことをされて滅ぼされないためのシステムです。 これを否定したらあっというまにヒトラーやスターリンのような 独裁者に国を乗っ取られてしまうことでしょう。 これを否定する以上は、どんなシステムで国のシステムを安定的に 活力をもって維持するつもりなのか、全世界にむけて説明すべきでしょう。 (どうも、数世代さきよりとりあえず現在がのりきれればいいという 中華世界的な判断があるようで恐ろしいです。 もっとも日本でも官僚の方が似たような考えを持っているような気がして 恐ろしいです。今回の検察の動きが正義からきているならあらゆる議員を 調べて、二度と天の声で公共事業がきまるようなことがないように すべきです。検察は当然国策捜査を否定しているようですが、特捜部が与党主流派に対してなにか調べたことはないように思います。必要な時にいつでも 非主流派を摘発できるようなシステムは政治の公平上問題であると思います。 といって捜査が封印されるのも困りますから 世論も政策でないことで辞任をせまらないようにして、 政策で政治家を選ぶような風潮を育てるべきでしょう。 おかしなことをしていたら、よっぽどでなければそれをみつけて すばやく修正させることで政治の浄化をめざすべきです。 今回は違いますが、近年多くの一世の政治家が ちょっとしたことで政権挑戦の機会を失っています。 しかし、人柄や家柄でなく能力で人を選ばないと どういうことになるかは幕末や戦前の日本の歴史が証明しています。)

最近アジア中心でという意見が散見されますが、 上記の状況をみるとまだまだのような気がします。最近、 ミャンマーの首脳は民主化には数百年かかるといいました [http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M27033%2027032009&g=G1&d=20090327]が、 そもそも数百年続く独裁制システムなどというものを作る方が はるかに困難なのです。そのうち組織が腐敗するか内紛でもおきて、 国民が塗炭の苦しみを味会うことになってしまうことでしょう。 前にも述べましたが、民主化することにより監視されるという 意識をもつことにより始めて統治機構が長続きするわけです。 取り合えず自分の代だけなんとかなればいいという、 中華世界的な判断で物事を処理するのは、結局自分の体制を 大きく損なうということを意識すべきでしょう。 (なにもいやがらせや弱体化させるために欧米の国々が 民主化を要求しているわけではないのです。安定化させるためなのです。) そのために、もっとギリシャ・ローマの法律やルネサンス以降の 価値観をきちんと学校で教えるようにすべきでしょう。 そういうものはアジア的でないと考えるかたも多いでしょうが、 そもそもヨーロッパの人々もギリシャ・ローマ文明を滅ぼした側 の蛮族の子孫であり、そのようなギリシャローマの思索の中から生まれた 人類の宝ともいうべき価値観はルネッサンス以降に勉強して身につけたも のです。別に現在の欧米人種特有の考え方というわけでもありません。 既に古事記の時代にギリシャ神話を受け入れているわが国の方が よっぽど受け継ぐ資格はあるのではないでしょうか。

そして、未来永劫あらゆる人々が平和で楽しく暮らせる世の中になるように 時の施政者は努力して欲しいものです。 (そのためにも、公務員の一種の方の給料は生活保護レベルの 最低レベルにする必要がある気がします。 優秀な方は専門家として2種でそれこそ超高給でやとえばいいのです。 一種の方は、私の履歴書などでみても、期待されているのは 坂の上の雲の大山元帥のようなだまって部下を見守る役のように思われます。 ゼネラリストとして、部下が間違った方向へ進まないように見ていることこそ が期待されているようです。実際年金問題でもトップが 実務がどのように行われているか知らなかったことが問題を大きくしています。 それには、生活が安定していなくて給与が高くなくては就職できないような 志の低い人ではなく、清貧でもいいから国をよりよくするために仕事を したいという人を配するべきでしょう。)

では、また来月に。

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特に人の上に立つ方は一度はご覧になるべきでしょう。




             
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