今回御紹介する本は、現代社会のリスクについてまとめられた本です。 若干専門的なのですが、教科書としてつくられたためか、 これまで読んできた本の中で一番読みやすくまとめられています。
現代社会は、なぜか非常に大きなリスクが山ほど存在しています。 この本には、それらの主なものについて、うまくまとめられています。 全部読み通すのは大変かもしれませんが、昨今のように 原子炉の耐震性や遺伝子組み替え作物やBSEや地球温暖化などの話題がでるたびに 該当箇所を読むだけでその問題の全容が把握できますので、 どのような行動が必要かわかることでしょう。 現代社会はそのようなリスクが存在するにもかかわらず、 なぜかリスクは自己責任ということになっていますから、 本来この本は義務教育の中で読むべきものです。 自己責任というからには、どのような問題があるかは教えるべきだと 思うのですが、そうなっていないのが問題です。 結局知っているひとが、知らないひとに知らないことをいいことに売りつけている という感じです。前にも書きましたがたいていリスクが少ないものほど 市場価格が高くなっています。しかし、安いものを買うひとが、なぜ 安くてどういうリスクがあるのかを知った上で買っているように思えません。
このような問題では大抵議論がわかれていて、 リスク評価がうまくできていません。 そういう場合には、報道も慎重になるので一般人はなかなか 知ることができません。 この状態を解決するには、研究者が純粋な研究者の立場だけで 発言できるようにする必要があります。 大抵もめているもののほとんどは、 大きな資金を持つ企業や団体がかかわっているものです。 資金力で議論の決着をおくらせることができるのでしょう。 もうひとつ日本で問題なのが政府の立場が強すぎることです。 現在のように、政府が研究費をきめる形ですと、 やはり政府の方針にさからった意見は表明しにくいことになります。 (競馬予想をみてもわかるように、だれも予想もしない大穴になることは ちょくちょくあることなのです。) ですから、あやうく地震によって日本が壊滅するところでした。 万が一、チェルノブイリのようなことになっていたら、軽く 東日本に人が住めなくなるところでした。(ぜひチェルノブイリ のときの避難地域を日本に重ねてみてください。) もちろん、技術的な余裕のおかげで、それほどの大事に ならなかったのですが、それで問題ないということにはなりません。 ようやく、マージンをもって修復するようですが、日本の 半分が人質になることからするとまだ足りないように思われます。 地震は確率現象なので理科年表をみればわかるように 頻度と大きさの関係は簡単な式で表されます。 地球の寿命で一度も会うことがない大きさの 地震にたいしてマージンをとって設計すべきでしょう。 ちょっと計算するととてつもない頑丈さ(柔軟さ?)が要求されることがわかりますが、 それでも宇宙エレベータよりは作るのは楽なのではないでしょうか。 ですから、当初の経済的なハードルが高いからリスク許容度を下げるのではなく、 技術を、そういうものが経済的に可能になるように、推進していくように科学者は議論を推めるべきなのです。 そうなれば、仮に、大隕石が命中しても被害を防げるようになることでしょう。 現在は、もし万が一ツングース大爆発のような現象が 原発のそばでおきたら、地球上に放射線源がばらまかれてしまうので、きわめて危険です、 ですから、このような巨大なリスクをもつ人工物に対しては、もっと慎重に設計すべきでしょう。 起きる確率が小さいように見えても地球の歴史で考えるとおきるのは確実なのですから。 (わたしも、まさか生きているときにM9クラスの地震を目撃するとは思いませんでした。) そういうことを、経済的、政治的、圧力を受けずに議論できる場というものを 日本もそろそろつくるべきではないでしょうか。
では、また来月に。
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