メールマガジン　今月の本　0110号

今月の本 0110号

そういうふうにできている　さくらももこ　著

私は、悲劇よりも喜劇を書く方が難しいと考えていますので、おもしろい本を書ける才能を持った人を尊敬しています。なかでもさくらももこさんの本は、おもしろいものばかりです。つい声をだして笑ってしまうので電車の中のような人前では読めないほどです。

今回紹介する本は、そのさくらももこさんの出産体験記です。

さくらももこさんの漫画ちびまる子ちゃんを見てもわかりますが、彼女は恐ろしいほどの観察眼と記憶力をもっています。あの漫画にかかれているようなことを、大人になってからあそこまで詳細に思い出せる人は少ないのではないでしょうか。しかもできごとだけではなく子どもの心理をきちんと覚えている人はなお少ないと思います。そのうえでするどい分析を加えているので、あの漫画がおもしろいものになっていると思っています。

そのさくらさんの体験記ですので、読めば、男性であっても出産を疑似体験をすることができます。しかも楽しく笑いながらです。妊娠時にはホルモンの影響により、見た目だけでなく女性の精神も大きな変化があることがわかりますので、これから身近に出産をひかえている人がいる男性は一度よんでみることを薦めます。

また、さくらさんは、麻酔にかかった状態で冷静に脳や心の機能を持ち前の鋭い分析力でもって観察し、そこから脳と心と魂の関係をわかりやすく導いています。物理学者のファインマンさんも催眠状態でにたような考察をしていますが、もっと大雑把なものでした。脳の機能を実現しようとしているニューロンコンピュータ関連の専門家にも大いに参考になるように思われます。

また、この本を読んでわかるのは、現代医学においても患者は相当痛い思いをしなければ治療は受けられないということです。出産直後にさくらさんは、粉瘤（ふんりゅう）という病気になり、それを直すのにとんでもない痛さを体験しています。この病気はSF作家の新井素子さんもなり、やはりとんでもない痛さを体験しているのです。その体験はもとちゃんの痛い話という本にまとめられています。（この本もおもしろい本です。）私が本を読んで一番痛そうな場面だと思っていたのは三国志で毒矢を受けた関羽が麻酔をせずに手術をうける場面だったのですが、お二人の女性作家の治療体験もほとんどそれとかわらないように思われます。医療もサービス業なのですから、もっと患者の苦痛を減らす努力をもっとしてほしいものです。

では、また来月に。

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翼徳　
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----------------------さくらももこ　さんの本----------------------

----------------------新井素子　さんの本----------------------

もとちゃんの痛い話角川文庫

----------------------その他の人前で読むのを避けるべき本----------------------
これらの本を読むと声をだして笑う恐れがあります。

日曜日には宇宙人とお茶をハヤカワ文庫 JA 190 火浦功　著　SFの最高傑作だと思います。

スレイヤーズすぺしゃるシリーズ神坂一　著　相当な冊数があるのにレベルが落ちないのは驚きです。