今月の本    0706号 ヤバい経済学
スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー (著), 望月衛 (翻訳)


今回御紹介する本は、題名では経済の本となっていますが、 むしろ数学がいかに世の中に役に立つかを、述べた本です。 ただ、題材が少しスリリングなものを選んでいます。 たとえば、テロリストの銀行口座や、 全国学力試験のずるや相撲の八百長の見分けるのに どのような考え方を用いるかを示しています。

数学は、以前も述べたように適用範囲はそれほど大きくないのですが、 一度適用可能な領域に入ると恐ろしいまでの威力をもっています。 高層ビルが崩れないのも、行ったこともない星の様子がわかる のも数学のおかげです。経験則でやっていたら、 とてもそんなことはできません。数学を用いると ある数点の経験された現象から、 経験してない幅広い領域を予測できるのです。

その力を用いて現代社会が成り立っているのですが、 どうも日本では十分な認識がなく、その力を活用できて いないように思われます。そのようなことは数学だけにかぎりません。 まるで賽の河原か、バベルの塔か、という状況です。 もっと、専門家のひとは社会にたいして発言を行うべきでしょう。 たとえば、教育関連法案では、学力試験が適正に 行われるかが問題となっていました。しかし、この本 にかかれているような方法を用いれば、試験のための 勉強しかしない集団を見つけてのぞくことができます。 そのような議論はまったく聞かれませんでした。 そのような方法を取り入れて試験を実施するように 法律を構成することに官僚や議員の方々はもっと努力すべきでしょう。 同じことは、現在問題となっている年金問題 でもいえます。報道から推察すると与党も野党も行政も 数億個の情報を正確にあつかうことがどれだけ大変で、 それをいかに扱うべきかがわかっていないように 思われます。たとえば、最近わかってきた数字に 3千件調べたら三十数件の誤りがみつかったというものが あります。この数字自体はそれほど悪いものではありません。 普通の人は10行も書けばひとつぐらい間違えるものです。 実際、厚生年金との違いはもっと多い5%程度あるということですし、 問題の5000万件という件数はもとが約3億件あったそうなので もっと誤りが多くないとでてきません。しかし、その誤り率が正しいと しても、3億件にたいして一度調べただけでは300万件の誤りが あることになります。(報道されているように誤った人に接続される 間違いもあるので、検査は残りだけでなく全件にたいして行うべきなのです。) そして、もう一回調べてもまだ3万件存在します。さらにあと3回調べて ようやく3件にまで減ります。与党が表明しているように一件残らず誤りが ないようにするには、最低五回は3億件全件にたいして調べる必要があるのです。 それでも30%の確率で一件間違っている可能性がありますから、 実際には7、8回行って、一件間違っている確率は1%以下にしますというように 宣言すべきなのです。そのような作業精度と結果の精度についての議論が まったくされていません。本来は実務者が全て調べるということは そういうことだと翻訳すべきなのですが、どうやってやればいいのかわからない人 にそのようないい方をすると、一回調べただけで終わってしまいます。 ですから、今回のようなことになるのです。命令者自身がその程度の知識は 身につけておくべきなのです。こんなことは高度成長期に品質管理に携わった人々には常識のはずです。 上では数字で示したので わかりにくかったのですが、実際には一枚のグラフを書けばあと何回検査すれ ばいいかは簡単にわかります。 どうも最近のいろいろなできごとをみているとそのような知識が継承されていないように思われます。 よく日本人は器用だから日本製品は品質がいいといわれますが、おおきな誤りです。 昔は安くて悪いと外国にばかにされたのです。それを努力して品質管理の手法を 研いて、ついに日本製品は高品質という評価を得たのです。 そして、そのように品質を高めると、余計な経費を大いに削減できるので、 収益が大いに改善しさらに企業の競争力を高めました。たとえば、先ほどの年金の例では もし、精度を0.1%程度まで下げれれば、繰り返しの数は、4回程度で済みます。 そして、その分検査やクレーム対策や出荷試験を省くことができるようになるのです。 そのような品質管理の地道な努力が日本の高度成長を支えてきたのです。 しかし最近ではそのようなノウハウが失われてきているように思われます。 最近クレーム処理関連の本をみても、メーカーはある程度の不良品は仕方が ないという考え方がみうけられますし、家電もコンピューター化して、 ソフトのバグ程度は当り前という状況になっています。また、 大型システムの不調がよく聞かれますが、これもプログラムに上記のような 品質保証ノウハウが十分に適用されていないことによります。 このような、少々の不良は当り前という姿勢は問題で、日本の競争力を おおいに損なうことでしょう。たとえば、大型コンピュータは 昔は設置して実際に動かすまで調整がそうとうかかるのが当り前でした。 それを、富士通は、設置してそのまま動かすことを目指して、それを実行し、一気にシェアを 高めました。同様なことを他の国の企業が行えばいっきに日本企業を駆逐できる のです。逆に、日本がそのころのような絶対的な信頼度を目指せば、 いままったく力のないOS分野でも、逆に巻き返すことも可能になります。 このように品質管理の知識は日本にとって重要なのに、そういう方面からの 議論がまったくみられません。ものづくりをたいせつにというわりに 議員の経歴にそのような生産現場を経験した人がいないことが原因の ように見受けられます。あまりに議会が均質化しているのではないでしょうか? 上記のようなことは、3、40年前生産現場で品質管理を担当していた方には当り前の議論のはずです。 もっと政治に参加すべきでしょう。そして、その他の人も自分のような経歴の人が 議員にいないと思ったら積極的に立候補すべきですし、選ぶ人も公約が似たような ものであれば変わった経歴の人を選ぶべきでしょう。 また、政府機関のなかには多様な専門家がいるのですから、もっと積極的に勧告する しくみをつくるべきです。現在は縦割り行政でまったく関心がないないように 思われます。 たとえば、勧告をしないで今回のようなことがおきたらその分対策可能な知識を持っていた部署の 予算を減らすとかの制度にするべきでしょう。勧告をしてあったら逆に 増やすのです。さらに勧告どおりの成果が得られた場合にも予算を増やすのです。 そうすれば、後から考えれば当り前のことをなぜできなかったのかという ような最近連続しておきているようなことを防げます。 今回は各大学や研究所の品質保証工学や統計学の専門家が なんらかの勧告をすべきでした。そういう制度がないので専門家といいつつ 必要な専門知識のない専門家が事業を推進することがよくみうけられます。 今回の年金の問題でも、5000万件のチェックが難しいという議論がありました が、その程度であれば、昔のスーパーコン以上の実力を持つ現在のパソコン一台 でできてしまいます。実際ハイビジョンで録画再生されているデータ量は 年金問題のデータよりはるかに多いいのです。データだけならHDDVD一枚に入ってしまう ことでしょう。問題は、比較を効率的に行うプログラムをいかにつくるかにあります。 そのようなデータ間の比較をするプログラムはデータ量は多いいのですが、プログラム自体は短いので、 厚生大臣も答弁されていましたが、個人のプログラマーの 技量にかかってきます。ですから、優秀な個人プログラマに任せるとうまくいくことでしょう。 さらに、人がどのように間違えるかのデータは 日本語変換プログラムや検索プログラムのジャストシステムやgoogleやyahoo などの企業が既にもっていて商品の利便性を上げるために利用しています。 そのようなデータを使って、上記のような優れたプログラマが プログラミングすれば、あっというまに効率的なプログラムができるはずです。 ですから、随意契約でなく、一般競争入札でやれば 費用もかからず、短期間で結果をだせることでしょう。 しかも一位と2位の業者に依託することにより、複数のやりかたで試せるので、 アルゴリズムの間違いなども簡単に見付けることができます。 現在の担当企業はデータ構造の変換と情報漏洩対策のような強い分野を担当 すれば、よりプログラムが短期間でできあがることでしょう。 ですから、方式さえちゃんと組み上げて本当の専門家が担当すれば一月程度で できることでしょう。ただ、どうも現在のままでは、専門知識が十分でない人が 一からプログラムをしそうで不安ですが。 (ひょっとすると請け負ったメーカーもそのような知識をもって いるのかもしれませんが、そのようなプログラミング実績をしりません。 あるのであれば発表して不安を取り除くべきでしょう。 また、大メーカにも優れたプログラマーがいるのですが、 数十人に一人程度なので、実力が平均化されるのが一般的です。 どのようにして優れたプログラムを作成する予定な のか、国民に発表すべきでしょう。) 厚生労働大臣も、官や民の力を活用したい答弁されていましたが、 具体的な方策がなかったので官僚的答弁のような気がして余計不安になります。 上記のように適材を適所に配置するしくみを取り入れる策を発表する方が より不安が減るのではないでしょうか。(その後、新聞の一面で、現在の対策と別に、 全部の紙をOCRで読み込みコンピュータ上のデータと一年以内に比較するという記事を 一度見たのですが、その後の後追い報道がありません。どうなっているのでしょう?) ちなみに、プログラミングは全部 国民に公開すべきです。なにも秘密である必要はありません。 公開することにより、多方面からのチェックをすることができ間違いも減らせます。 このような情報公開のメリットは当り前のことなので、 外交防衛上の秘密や個人情報以外の情報はすべて公開すべきです。 これだけ問題が指摘されて、しかもこれだけ注目されている案件なのに、随意契約とは問題と思います。 談合や天下りや随意契約の問題は当分改善しないという行政としての回答なのでしょうか?。 (こういう状況なので、せめて公務員法案くらいは通ってほしいものです。野党がいうように 穴だらけというのも事実なのですが、元官僚の方のコメントを見ているとそれでもいやがっている ようなので、少しは効果がることでしょう。野党のように廃案にというのでは論外です。 むしろ、修正案をだして少しでも穴をふさぐように活動してそれを参院選でアピールすべきでしょう。 わたしとしては、全ての関係団体に天下り規制をかけることと、 本人がいた組織と認可や契約関係があるところには何年たっても天下りは規制するということと、 公務員の定年を65才に伸ばすことぐらいはやってほしいです。 [政府は人件費が増えると反対しているようですが、天下りを維持するための 予算を全部カットすれば、むしろへると思います。] なにしろ議員が決断すれば、数時間で法案ができあがるという前例ができたのですから、 与野党で本国会でうまく修正して成立させるべきでしょう。議院立法をもっと活用すべきです。)

さて、この本を読んでもうひとつ思ったことは、 検死を充実させるべきだということです。 この本でも述べられていることも含めて、日本では、歴史上はもちろんのこと、最近でも 毒殺が疑われる事象が見受けられます。環境運動に積極的な研究者が 若くして亡くなる率は高い気がしますし、昔証券所の複数の高官が ほぼ同時になくなられたりしています。最近でも家電安売り店の 創業者があいついでなくなられました。もちろん環境問題に積極的 ということは悪い空気を吸う機会が多かったのかもしれませんし、 なんらかの会合で病気に一度にかかったのかもしれませんし、 一番可能性あるのは、たまたまそうなったということなのでしょう。 しかし、日本では病死の場合司法解剖が行われないので、 そのような可能性を調べることがないそうなのです。このようなことは 最初はウエブで知ったのですが、最近になって読売新聞でもそのような問題について 報道されていました。このような状況でイギリスであったように放射性元素を 使ったような殺人が行われていたらはたして日本ではわかるのでしょうか? いまのままでは、悪意のある組織がいいように政策や企業活動に影響を及ぼせてしまいます。 そのような脅威に対応するためにまずは、公務員だけでも 定期検診ごとに血液を採取して保管したらどうでしょうか。 そして、死亡時にはそれらの一年ごとの血液と同時に 司法解剖して調べれば、相当詳しい死因がわかるのではないでしょうか。 未知の病気もわかる率が高まることでしょう。また、イギリスでおきたような 事件がおきたときにその場に居合わせた人の血液から犯行現場と時期を 特定できる可能性もあります。なにしろ田中さんの発明したような 優れた分析技術が現代ではあるのです。 同時に、それだけたくさんのデータがあれば、アスベストのような環境の影響を どの地域の人が受けているかがより早期にわかって、いちいち現地調査 する必要もなくなり、早期に安い費用で確実な対策を決定できます。 また、本人にとっても輸血時に自分の血を使うことができ、 輸血で他の病気にならないように備えることができます。 (ちなみに、昔輸血に関する宗教問題がおきたときは、なにを非科学的な主張をと 思っていましたが、最近のようにBSEやエイズのような検査できない 病気が増えてくると、ある程度そのような主張も合理性があるように 思うようになってきました。ただ、現在はナノ技術が進んでいるので 特定分子だけ抽出することが可能であるはずです。なのにまだそのように なっていないので反論できないというのは、むしろ医療技術者の怠慢ではないかと思います。 最近のニュースで知ったのですが、より高年齢の子供の場合は 強制的に輸血するように規則を変更するそうです。 その規制を変える前に学問的に輸血を完全に安全とするように技術開発を行うべきではないでしょうか。) また、BSE起因の病気かどうかは解剖してみないとわからないそうですが、 現在はアルツハイマーで亡くなられても、解剖されないようですから、 実際には、そうではないのにアルツハイマーとして処理されている方も多いいのではないでしょうか。 死因を探る制度がきちんとしていれば、健康を阻害する原因を早めに解明して除去できます。 (上記の例でも、どこのパーティーでだされたXXという食材に問題にあったというような ことまでわかり、遺族も安心するのではないでしょうか。) また、当然毒殺への抑止力となるので、安心して生活できます。さもないと武士の一分のように 毒見役が必要になる物騒な世の中になってしまいます。

では、また来月に。

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