今月の本   0108号

原子炉お節介学入門  柴田俊一 著


 著者は、京大の研究用原子炉を一から設計して運用し、原子炉実験所長を経 て定年後は近畿大学の原子力研究所長をされている方です。

 著者の考え方は、物凄い力のある原子力が本来安全であるわけはない、一所 懸命努力して安全を保っている、というものです。この本にはどのような努 力をしてきたかという経験談が書かれています。文体はファインマンさんのエッ セイに近いものがあり、専門用語を知らなくてもおもしろく読めます。また、 原子炉といっても大部分は巨大プラントとでもいうべきもので量子力学とはあ まり関係なくむしろコンクリートのうちかたとかスイッチのならべかたや回路 の組み方などに重要なノウハウがあるようです。だから、他の分野の技術者に とっても多いに参考になることが書かれています。

 少なくとも原子炉のイメージが具体的になりますので、原子力に賛成の人も 反対の人も関心のない人も一度は読んでみるべき本だと思います。原子力につ いてあまり知らない人(ほとんどの人がそうだと思います)にとって、原子炉 というと漫然とした不安があるものです。この本では失敗も含めて率直に書か れているので、原子炉ではどういう問題があってどのように対処しているのか がこれを読めばわかります。ですから、これを読めば少なくともこれだけ一所 懸命努力をしている著者がかかわった原子炉なら安心だという印象が得られま す。もし、日本中の原子炉についてもこのような記録が発表されれば、だいぶ 原子力に対する不安感が減るのではないでしょうか。また、なにか問題があれ ば他の分野の人から指摘されるのでより原子力はより安全になると思います。

 巨大システムにおいては、設計から運用段階まで、技術から法律まで多様な 問題が発生するものです。最近の原子力をふくめた日本の技術力の後退を示唆 するような一連のできごとは、このようなノウハウの継承がうまくいっていな いのではないかと感じます。ですから、技術の継承という意味からでもこのよ うな本をシリーズ化して、他のシステムに関わる人にもこのような記録を残し て欲しいと感じました。たとえば、情報処理システムであっても多様な問題の 解決にせまられるわけで、そのような問題にいかに立ち向かったかを公に明ら かにしておくことで、その後のシステム開発において同じ過ちに陥るのを防ぐ ことができるのではないでしょうか。



では、また来月に。

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