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今月の本　　0602号子産宮城谷昌光著

今月紹介するのは、古代中国を舞台とした小説です。

近代化する前の日本人にとって、この時代のことがらは基礎教養でした。ですから、現在の日本のことばや風習に大きな影響を及ぼしています。

ですが、これまでなかなかこの時代のことを知るのは大変でした。昔の人のように中国の古典文書を読むにはそれなりの素養が必要ですし、たとえ読めても、中国の史書は特殊な構成で書かれていますので、自分の中で、十分消化しないと面白さがわからないのです。

そんなわけで、長い間この時代のことをおもしろい小説にして下さる小説家を待ち望んでいました。

そこに現れたのが宮城谷さんです。実に安定した実力の持ち主で、楽しめる小説をつぎつぎと出されています。おかげで、古代中国が一気に現代の日本人にみじかになりました。

こういう実力のある作家の方の本は、先を楽しみにして少しずつ読むことにしています。この本も5年以上前の本ですが、今回初めて読みました。そして予想通り楽しめました。

この時代は、いくつも小さな国に分かれて争っている時代です。そして、まだ孔子や法家とよばれる法律家が活躍していないころの話です。ですから、人間の本能のまま国家を運営するとどういうことになるかがよくわかります。現在の国家システムがなぜ必要なのかを知るには、この時代のことがらを知るのが一番です。この本を始めにして、宮城谷さんの本を読んでいけば、楽しみながらこの時代を体験できます。（私のおすすめは、孟夏の太陽、晏子です。この本と併せて３つの視点でこの時代を複眼的に見ることができます。）

そのような時代はなんでもありなので、読み易い話にするのは難しいのですが、宮城谷さんは、礼と徳という概念を軸にしてじつにすがすがしい話を創り出されています。徳がない人や家や国は長くもたないという考え方は、現代の自分や体制に対して深く考えさせます。常任理事国に立候補しても賛同してくれる国が少ない現状も日本の徳のなさを示しているように思われます。もっと、徳を増やす活動をするべきではないでしょうか。たとえば、核を拡散させない努力をもっとすべきでしょう。この時代に核があったらどれだけ危険であるかはすぐ洞察できます。そして、ここ数年でまさにそのような状況になりつつあります。非核国への核攻撃の禁止条約を決定するとともに、国際紛争解決のシステムを作成し、核を持つ利点を減らして核保持国を減らして、核の管理をやりやすくするように活動すべきでしょう。このままでは１００年に一回核戦争がおきても不思議ないように思われます。日本は太陽電池技術が進んでいるのですから、石油の代金や援助物資のかわりに太陽電池を送れば、どの国も資源国になれますから、核を持つ理由を減らす努力は一番できるはずです。ほかにも、国の経営に困っている国があったら、その問題を除いてその国を安定したようになる助けを積極的にすべきでしょう。（中国の民主化へ平和的に移行するのを、日本の経験を教えることで助けることができるように、思われます。中国が安定化することは世界経済にとってきわめて重要ですから、世界の安定化に大いに貢献できるのではないでしょうか？）他にも多神教のわが国は宗教対立を中立的な立場で仲介することができると思われます。このような、安定した世界を造る努力をしていけば、運動しなくとも１／３程度の国々が助けてくれるような、徳が備わるようになるのではないでしょうか。

では、また来月に。

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