今月の本   0509号 裏帳簿のススメ 岡本 吏郎 著


今回紹介する本は、会計の本です。私がこの本を読もうと思ったのは、なにも裏帳簿をつ くろうと思ったわけでは、ありません。最近でも裏帳簿をつけていた企業の記事が載って いましたが、ひとつだけでもややこしいのに、どうやって2つの帳簿の整合性をとってい るのか、前々から疑問だったためです。というのも、通常の帳簿では経営の実態がわかり にくいので、経営の実態がわかりやすい帳簿を前々からつくりたかったのですが、2つの 帳簿の整合性を維持する手間を考えただけで、やる気が失せていました。この本になにか 、2つの帳簿を作成する簡単な方法があるのではないか、と思って読んでみたわけです。

読んで驚いたのですが、題名は過激なのですが、実際は真面目な会計方法の本でした。正確に は第二帳簿のススメとも題すべき本です。見落としがちな会計の本質について述べられて いますから、会計や経営の初心者にお勧めです。

この本に詳しく書かれていますが、一般的に会計について説明されている本の大部分は税 務会計について説明しています。つまり、税務署にだす会計はどのように行なうかについ て書かれているのです。しかし、会計書類は、銀行から金を借りるときの審査や、経営判 断や、株を買うときの判断など、いろいろな用途に利用されます。ですから厳密にはそれ ぞれについて別の書類が必要になるわけです。しかし、ひとつの帳簿を扱うだけでも大変 なのにそれぞれについて書類をつくるとなると、とても不可能です。そこで、なるべく税 務会計と経営用会計が同じになるようにして、それらの書類を他の用途にも転用している というのが実態です。ですから、実際には、用途別にそれらの書類の見方が変わってくる ということを知っておかなければならないのですが、そのようなことを書いてある本は、 この本以外にはまだ巡り合えていません。たとえば、バブル崩壊のもとになったのは、銀 行の自己資本に株を含めたことにありました。日本の株は下がらないからという理由で金 融業界の規則で認められたのですが、もし当時の銀行経営者の中で、価格が変動するかも しれないから自己資本には含めないで経営用の会計書類を別につくろう、という経営をし ている経営者が半分もいたら、景気回復はもっと早かったことでしょう。

そのように、現在の一般的な会計規則は主に税務会計によっていますから、細かい規則が あって、普通の会社と少し違う経営をしようとすると、とたんに面倒なことになります。 たとえば、社員が仕事に励めるように、会社では飲み食いをただにしようと経営者が考え ると、税務上認められるのは一部だけで、あとは形を替えた給与になりますから、経営上 の書類では、全額福利厚生費として管理するとしても、税務署に対しては、一部を福利厚 生費にして、のこりを本来の社員の給与に税金分も含めて足して、社員の所得税として税 金を払う必要がでてきます。ですから、会社の分だけでなく社員一人一人の給与について も二つの帳簿が必要になってきます。とてもやる気にならない複雑な作業が必要になるこ とがおわかりでしょう。(ちなみに、そのような細かい規制を理解するこつは、脱税者と 税務当局の競いあいを想像することです。上の例では、おそらく会社から金銭以外のサー ビスを増やして給料をなるべく少なくして税金を減らそうとした人がいたのでしょう。そ のような行為を禁止するためにそういう規則をつくったと考えると納得しやすいです。そ のような細かい規則は山のようにあって、脱税者と争う税務署の苦労には頭が下がります 。しかし脱税者のようなひねくれた解釈をする人を相手にする規則なので、ふつう人が思 わぬ規則にひっかかることがあります。日経の私の履歴書によれば、インスタントラーメ ンを発明した日清の創業者の方も上の規則に引っかかってつかまったことがあるそうです 。この本の著者の方によれば専門家でもすべてを把握するのは難しいそうですから、もっ とわかりやすい方法を研究してほしいものです。)

しかし、そのような経営上の工夫が会社の業績の差をもたらしますから、どうしてもやら なきゃならないと経営者が決心したら、どんなに面倒なことでもやる必要がでてきます。 ですから大抵の会社で、帳簿をいくつもつくらなきゃならないことになるはずなのです。 そして、ふたつの帳簿にどのような違いを設けるかを考えることこそが、経営方針をきめ ることにほからならいのです。(もっともふつうは償却資産の扱いだとおもいます。それ については本書に詳しいです。)経営者の方にはこの本を読んで、どのような帳簿をつく るべきか考えて頂きたいものです。

ちなみに、この本を読んだ当初の目的であった楽に二つの帳簿を扱う方法は、この本には 、ありませんでした。この本の著者の考えでは、経営用の帳簿だけをつくって、税務用の は会計事務所に頼むという方法ですが、経営用の帳簿をつくるにも税金の額が必要ですか ら、結局二つ帳簿をつくらないとうまくいかないようです。最近は会計ソフトが発展して いるのですが、そのような税務用と経営用の二つの決算書をだせるものは見たことがあり ません。ぜひ、そのような機能もつけてほしいものです。ただ、ついでにさらなる希望を 言えば、これだけオンライン金融が発展しているのですから、ある口座からお金を出し入 れすると、自動的に決算書ができて税が支払われるような仕組みにしてもらいたいもので す。そうなれば経営用の帳簿のみ作成すればよいので、より経営にリソースを振り向けら れますし、日次決算なども可能になってより機動的な経営が可能になります。税務署にと っても景気の動向に連動して税収入が得られるのでより、景気動向や税収の動向の予測が しやすくなるのではないでしょうか。また、景気はお金の量と動くスピードの積で定義さ れています。もし、そのような日次決算の社会になれば、よりお金が回転して、景気を上 向けることができるようになるのではないでしょうか。

では、また来月に。


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