今月の本   0107号

本の雑誌風雲録  目黒孝二 著

 この本は「本の雑誌」という雑誌を発行していた目黒さんが書いた本で、ど のようにして雑誌が生まれて、その後どのような苦労があったのかという、経 験談が書かれています。
 私が本の雑誌の存在を知ったのは、椎名誠さんの「さらば国分寺書店のおば ば」という本を読んだときでした。このようなおもしろいエッセイというもの があるのかと驚き、さらに斬新な言葉使いに驚き、どのような人物が書いてい るのかと著者の欄をみたところ本の雑誌の編集長という肩書きが書かれていた のです。そこで、この雑誌を探そうとしたのですが、都心の大きな書店のいく つかにはあるのですが、大きな本屋でもおいていないところもあり、どこの本 屋にあるのかまったく見当がつかず、読むのはあきらめた記憶があります。な ぜこのように入手が難しいのか不思議に思っていたのですが、この本を読んで 理由がわかりました。この雑誌は初期のころ(91年ごろまで)首都圏内の書 店には出版社の人が直に雑誌を納める直販の雑誌であったのです。しかもほと んど営業活動をせずに希望する本屋だけに届けていたのです。
 首都圏内の本屋に雑誌を配るというのは、想像しただけで大変そうですが、 実際大変だったようで、この本ではそれをいかに実現したかというおもしろい 話が述べられています。ですから、雑誌についての本というより小規模出版( あるいは運送業)に挑んで夢を実現していった企業の物語といってもいいと思 います。
 この本は上記のようにこの雑誌の運用面について出版社社長であり発行人で あった目黒氏が書いた本で、これだけでもおもしろいのですが、更に他の本の 雑誌の関係者の本と併せて読むとこの会社と雑誌のことが立体的に認識できて 、おもしろく読めます。雑誌の編集内容などについては、編集長の椎名誠さん 自身が「本の雑誌血風録」という別の本を書いています。そして、従業員の立 場から見た光景は、初期の本の雑誌社の唯一の社員であった群ようこさんが、 「別人「群ようこ」のできるまで」という本に書いています。いずれも一冊だ け読んでもおもしろい本ですが、これら三冊を併せて読むと本の雑誌社の当時 の雰囲気が3人の視点からみてよくわかります。社長と編集長と事務員がいず れも作家となった会社というのもめずらしく、そのひとがそれぞれの立場で本 を書いているので小さな企業がどのように動くのか、そしてどのように成長し ていくのかがよくわかります。ですから、出版界に興味のある方だけでなく、 これから小さな企業を始めようと考えている方にもいろいろ参考になると思い ます。さすがにいずれも本の雑誌関係者だけあってどの本もおもしろくまた読 みやすく書かれています。


では、また来月に。

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これらの本を読んだことの無い人は数字の順に読むとよりおもしろいと思います。

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----------------------本の雑誌社関連本----------------------

5.本の雑誌血風録

5.新宿熱風どかどか団 朝日文庫(本の雑誌血風録の続編)

6.別人「群ようこ」のできるまで文春文庫

----------------------目黒 考二 さんの本----------------------

北上 次郎 さん(目黒 考二 さんのペンネーム)の本

藤代 三郎さん(目黒 考二 さんのペンネーム)の本

----------------------椎名誠さんの本----------------------

1.さらば国分寺書店のオババ新潮文庫 

2.哀愁の町に霧が降るのだ (椎名さんの青年記。風雲録にでてくる木村弁護士や沢野さんとの交友録。)

3.怪しい探検隊 一冊目 (椎名さん流集団旅行の記録。このシリーズで目黒さんの存在を知りました。)

3.あやしい探検隊シリーズ 続刊 

----------------------群 ようこさんの本----------------------


 
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