メールマガジン　今月の本　0301号

今月の本 0301号銀河鉄道スペースジャック

銀河鉄道スペースジャック　相河万里(著)

素直で読了感のさわやかな青春小説は少ないものです。昔はアニメやＴＶでも普通の学園生活が描かれたものがあったように思いますが最近はほとんど見かけません。七人のナナが比較的雰囲気がでていた程度でしょうか。

その点、この本はストーリもよくて、また青春の情景がよく描かれています。まさに素直な青春小説を読みたい人にお勧めです。

この本は、高校を舞台とした学園小説です。最初は普通の学園ものかなと思って読み始めたのですが、それに素人がいかに文化祭で演劇を演じるかという話が組合わさってよりおもしろくなっています。

青春が何十年も前に過ぎ去ってしまった私にとって現在の高校生がどのような青春を送っているかはまったくわからないのですが、ぜひ現在の高校生もこの本のような元気な青春を送っていて欲しいものだと思いました。青春の頃を思い返したい人にもいいのではないでしょうか。

また、演劇をやるうえでの基礎的なことも書かれているのでこれから演劇をやってみたいという人にも入門書として適しているかもしれません。

私はあまり演劇はみないし興味もあまりなく、映画の方がいいのではないかと長い間思っていたのですが、ＭＸＴＶで放映されている演劇集団キャラメルボックスの舞台をみてすっかり考えが変わり、演劇にも映画と同様に興味を持つようになりました。おしゃれな音楽に計算されたシナリオ、そして俳優や客席の活気など映画にない魅力に圧倒されました。その観客を引きつける力は普通のＴＶ番組にはないものです。一度チャンネルをあわせると思わず最後までみてしまいます。この本の話も舞台の脚本にぴったりなので、キャラメルボックスのような劇団が演じるとさらにおもしろくなることでしょう。

ちなみに、演劇について素人の私にはいつも見始めたときにある種の違和感を抱いていました。具体的には舞台の会話は普通の会話とちがうように思われるということです。いったいどこがちがうのかなかなかわからなかったのですが、この本をみてわかりました。この本では俳優候補の基礎の発声訓練の様子がえがかれていて、はっきり発音するように徹底的に訓練されています。ふつうの会話はもっとぼそぼそしたもので聞き取りにくいものです。それがはっきりと聞こえるのでなにか違うと思ったのでしょう。このことがわかるとぼそぼそ言う劇もあるとおもしろいかもしれないと思いました。たしか爆笑問題の太田さんもデビュー当時はもっとぼそぼそ話していたと思います。それでも十分おもしろかったのですから。

では、また来月に。

では、また来月に。

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