メールマガジン　今月の本　1907号　北原進のモダニズム　

　今月の本　1907号　北原進のモダニズム　

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)

今月ご紹介するのは初めてかもしれません。建築デザイナーの写真集です。

本の楽しみ方の一つは文章ではなくそこにある写真をじっくり楽しむというものもあります。この本にはこの方が手がけられた美しいデザインがたくさん入っているので普通に若い方も楽しめることでしょう。しかし、年配の方はさらに古き良き時代の美しいデザインによって昔に時間旅行できると思います。

昔の高級な場所のデザインというのは宝石のような魅力をたたえてました。そのような場所に入るような身分でなくてもいつかはその場所にふさわしい人になりたいと思わせるなにかがありました。その魅力をこの本の写真はちゃんと捉えているのでぜひ若い発注者やデザイナーの方に見てほしいと思い選びました。

バブルのころから、目新しければよいという風潮がみられ、それは発注者に上記のようなものを見分ける目がないこともあいまって、宝石のような魅力を持つデザインというものが見受けられなくなりました。外人に一番人気というホテルに入ったら奇抜だけど猛烈な圧迫感を感じさせるデザインでよく宿泊施設でこんなデザインを使うものだと呆れた記憶があります。結局ホテル利用者のお金持ちもそういう審美眼をもっていないのでしょう。おかげでその後はそれを粗末にしたようなデザインばかりです。 (欧州だとちゃんと発注者が審美感を持って美しいものをつくっています。) 時を同じくしてCAD化が始まって、どうもデザイナーの方は直線定規とコンパスの使い方しかしらないと見受けられる設計ばかりとなりました。（でも、ちゃんと自由曲線というツールもあるはずです。おそらくは直線や円弧は誰でも引けますが曲線はセンスが問われるからだとはおもいます。万博の太陽の像復元ドキュメントで岡本太郎の造形物の曲面について何人もの専門家が長時間討論して造形をきめてました。そんなことはしてられないということなのでしょう。しかし利用者はそういうものを専門家に求めているのです。日本の建物も昔はお寺お城お風呂屋もみな美しい曲線を描いています。でも今の日本建築は平らな屋根ばかりです。こういうものは数寄屋造りと言って今の言葉でいえばオタク造りという特殊な立て方だったのです。）

ですからぜひ発注者やデザイナーや利用者の方にこの本を読んでいただき、宝石のような魅力を持ったデザインを日本に増やしていただきたいです。（この方はまったく存じ上げませんでしたが、私でも知っているところの数々のデザインをてがけられていて、まだ現役の上にご存命のようですのでこの方の事務所に発注してもよいのではないでしょうか。オリンピックもこの方に頼めばデザイン性でアテネを抜いてどんな王族富豪にも満足していただける高級感のあるものになったのではないでしょうか。）

では、また来月に。

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