杖術師夢幻帳(富士見ファンタジア文庫) 昆 飛雄 (著)
新聞によれば、鹿島神宮の御船祭が9月2日に行われるそうです。 鹿島 神宮の祭神は、神話時代に出雲の大国主の尊に国ゆずりをせまった とい われる武甕槌大神です。その神様が出雲の残党勢力を諏訪においつめ、 さらに東に向かって鹿島の地についたとされています。 ですから、この 神社の由来は東国にある神社の中ではきわめて古いものです。 ホームペ ージには、崇神天皇のころにはすでにあったことが 紹介されています。 歴史に詳しくない方には実感がわかないでしょうが、 この天皇のころに 伊勢神宮や石上神宮などの有名な神社がいくつもつくられたとされていま す。ですから、それらより古いということは、いかに古い神社かがわ かります。
そして、御船祭は少なくとも5代後の応神天皇のころには行われていた お祭りで、 12年に一度に行われるこの神社にとってもっとも大切なお 祭りだそうです。 このような古い由緒を持つ神社の12年に一度の大祭 ですから、 古代史に興味ある方はぜひ一度御覧になるべきでしょう。 日 本の古代史を解明するヒントをみつけることができるかも しれません。
ただ、そういう私もこの祭りのことは、つい最近本を読んで知ったばか りでして今年がその祭りの年にあたるとはまったく知りませんでした。
今回はその本を紹介します。この本は、別に神社の本ではなく、剣術 (棒術)の娯楽小説です。
鹿島神宮は、上記のような古代史にも関連があるのですが、 剣術史にも 大きな関連があります。 有名な塚原卜伝は鹿島神宮の神官の家に生ま れてますし、 小説やドラマでよくでてくる柳生心陰流の元祖である上泉 伊勢守信綱も鹿島で修業をしています。
そのような剣術のメッカで、多様な流派を 自在に戦わせているのがこの 本です。 さらには、御船祭などの鹿島神宮の伝承などもうまくまぜられ ていましてなかなかおもしろい話になっています。 剣術家になじみがな い方は、吉川英治の宮本武蔵を 読んでから読むとより背景がわかって、 おもしろく読めると思います。
剣の戦いを文章にするのはなかなか難しいと思うのですが、 著者はとて も巧みに戦いを描写していまして、 みごとです。 ただ(剣の戦いの話な のでしょうがないのですが)個人的には 敵味方に死者が何人もでるのが ちょっと難でした。 この著者の文体自身や話の進め方は軽妙で、しかも 主人公は棒術の達人なので、 この主人公を用いただれも死なない もっと 軽めの剣術小説をこの著者には期待 したいです。
また、あとがきで、小説用に歪曲した事実を列記してあることにはとても 好感を持ちました。おもしろい時代小説ほど、 史実と創作がうまく組み 合わされているものです。 読み手としては、読んだだけでは区別がつか ないので 知識として記憶する場合には、いちいち確認しなければなりま せん。、この本のように書いてあれば、そのような手間がだいぶ省けます し、真実と虚構の境を知ることにより小説の構造をしることもできて、 読んだあとも楽しめます。
では、また来月に。
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