今月の本   1408号 巨大投資銀行 黒木亮 著
(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)




今月はバブルからそれが崩壊するまでを描いた経済の小説です。 文章がうまいので読む人はみなバブル期そしてそれが崩壊するころの 一流金融マンになった気になれるはずです。 若い人が過去のことを知ろうとして教科書のようなものを読んでも 当時の新聞を読んでさえもあまり実感はわかないものです。 しかし、こういう小説を読むと一気に体験できます。 ぜひバブルを知らない方や金融機関を知らない方は この本を読んで体験してみてください。

この本では金融が世界をふりまわしていたころの内実を 実感できるのであのころ不思議だったことの いくつかは納得できました。 (ぜひ、そういう内容はマスコミなどがもっとはやく報道 してほしいものです。) たとえば、バブル後の金融の混乱の原因として裁定取引の 争いがあったように見受けられました。 裁定取引は本来価格が同じになるものが値に差があるときに 高いものを売って安いものを買って値段が同じなるのを 待つ手法なので、普通は損をしない取引です。 ただそんなに差がつくことはないので、 資金が大量にないと儲からない手法です。 この本はこの手法に長けた企業の消滅の物語にもなっています。 だれか裁定取引をされては困ると考えたのかノウハウを得ようと したのでしょう。ノーベル賞学者がいるのに破綻したヘッジファンド も、実はその企業を退職した裁定取引のプロ集団が作ったそうです。 おそらくノーベル賞の式(ブラックーショールズ方程式)で評価して同じになるものを 裁定していたのでしょう。 (しかし私が調べた記憶では あの式のそもそもの前提の統計分布が実態と違うはずなので 単純な裁定取引ほどの確実性はないように思われます。 随分危険なことをしていたものです。) そして、予想外の出来事がおきて、破綻してしまったのです。 つまり一連の動きの中で、裁定取引を作り上げていた集団がほとんど 解体されてしまったようにみえます。 ただこの本の中では裁定取引は同じようなものを売ったり買ったりするので 市場に対して中立として説明していますが、 売る時期をちょっとずれるだけで大きく変動します。 しかも市場の値を変動するほどの量を裁定して解消すると 解消する人にとって得な方向に値が動くので 解消する人はわざとずらそうとするのではないでしょうか。 (仮にわざとではなくても流動性の違いはたいていあるので 結果としてずれることはよくあるのではないでしょうか。) そうすると大きく株価が変動することになります。 もっとも裁定取引がないとETFやETNなどいろいろな商品が正しい値を示さなくなって しまい、一般投資家が困ります。 つまり、そんな市場に対して巨大な取引ができる参加者がいる状況を 変えなければならないということなのです。 市場参加者の規模を小さくするしくみが必要でしょう。 たとえば、買う銘柄の当日の取引の数%までしか一社に売買を認めない などとすると、裁定取引をしても値段に影響はでないでしょう。 ただ、そして大量の売買ができないので 極端な量の裁定取引ができなくなるはずです。 どんどん早くなるプログラム取引でもそうですが、 市場関係者は制御理論を少し勉強するべきなのでは ないでしょうか。 電気回路で言えば抵抗の値をどんどん小さくして いるのでどんどん不安定になっています。 安定化するには適当なところに 抵抗や容量の負荷をつけることなのです。 それは市場でいえば売買のしずらさをつくるということです。 金融市場は企業にとっては地面のようなものなので そんな大きく振動されては困るのです。

また、金融の構造的な問題点も実感できました。 前にも述べましたが、M&Aで成功した例がないのに M&Aが盛んでしかももてはやされているのが不思議でした。 実は米国投資銀行の上級社員には半期ごとに とんでもないノルマが課せられているそうです。 そうなると手っ取り早く超巨大企業のM&Aをして 手数料を稼ごうとしてしまうのです。 おそらくもともとは下積みから徐々に種を巻いて 育てた案件がそれぐらいの地位までなったら その程度の収入はあるはずだという思想から 来ているものと思われます。 しかし、米国で転職が盛んになると 他の会社からいきなりその地位につくことに なります。そうなると半年や一年でとてつもない 収入を会社にもたらさねばなりません。 そうなると超大型M&Aをして手数料をというように なってしまうのです。 そんな何千万円や何億も年収がある優秀な人材(倫理的には問題だと思いますが)に、 企業のトップは説得されてしまったのでしょう。 (相手はその期に成果を挙げないとクビなので必死なのです。 優秀な人があらゆる手段を講じてきたらなかなか普通の人では 太刀打ちできないことでしょう。) その結果、世界中に巨大企業が発生することになってしまいました。 その象徴であるGMが倒産したように、M&Aしたからといって うまくいくことは稀なのです。むしろ伸びる会社は 最初から自前でやっている企業の方がはるかに 多いように感じています。 おかげで米国や西側経済は傾いてしまったと思います。 大きすぎて潰せない企業ばかりとなってしまいました。 そして寡占化が進み活気がなくなってしまっているのです。 米国も、M&Aの手数料はM&A後の利益の増分から配分すること などというように規制しないとさらに経済が歪んでしまうことでしょう。 なにしろM&A後の成長は割れ関せずという感じでM&Aを進めています。 これでは、企業も国もたまったものではありません。 できれば、無印良品のように元気な企業を独立させるのに 手助けする法制度や税制を整えて、生きのいい小さな会社が 競い合うようにしないと、経済は伸びませんし歪むはたまる一方でしょう。 しかも優秀な人材というのはあらゆる手を使いますから、 M&Aのときにかぎって対象となる企業の悪いところが 立て続けに報道されたりします。 おそらく悪い評判で株価を落として安く買おうとしているのでしょう。 事実を流すので株価操作にはなりませんが、倫理的にどうかと思ってしまいます。 そして、M&Aで企業業績と関係なく株価が大きく変動することに なるのです。ほとんど金融関係者のためのM&Aという気がしていましたが この本を読んでさらにその感を深めました。 前にも述べましたが、 本来金融機関はプロジェクト・ファイナンスで儲けるべきなのです。 そうなるとたとへばマクドナルドのような形態の事業を思いついたときに いきなり全国展開できます。つまり金融機関の上級社員はそういう 融資先の事業規模を大きくすることによって利益を確保ように するべきなのです。しかも事業が続く限り利益が入ってきますから、 入社してからいくつもそういう事業を発掘していけば 出世しても安泰です。半年ごとにM&A先を探さなくてもよいのです。 そして、事業が順調でないと、金融機関にも利益が入りませんから 最後まで面倒をみる必要があります。 その結果実経済も大きく成長することになるでしょう。

では、また来月に。

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