今月の本   1402号 KAGAKU Dec. 2013 Vol.83 No.12
(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)




今回ご紹介する文書は、雑誌です。 以前もこの雑誌の記事をご紹介しましたが、 今回の号は今の日本人が読むべき記事がいくつか ありましたのでご紹介します。

私は正直今回の都知事選にはあきれました。

結果をみると 都民は原発問題は他の保育園などの諸問題と同値度だと 判断したようです。

私はその判断はまちがってると思いますが、 都民の多くが合理的に問題を把握して検討したのなら しょうがないと思います。 しかし、なにも情報を知らされずに 判断したように思われます。 先々月の文書をみただけでも 普通の人なら大問題がおきつつあると実感できるはずです。 かりにそうでなくても 福島からはるか遠い霞ヶ関で勤務している 政権の政治家や官僚の方々がつぎつぎ病気になっていることに 焦点をあてて考察したら、 再稼働や賠償打ち切りや除せん打ち切りや住民帰還など言える状況ではないことは わかるはずです。合理的思考の持ち主であれば、 原子力の被害について一般的に言われていることについて 再検討してみようと思うのが普通です。 (プルトニウムは肺に入ると大変ですが、なぜか食べてもそれほど問題ないと されています。しかし、そもそも核兵器工場の工員に舌癌が多発したことから 毒性が発覚した物質なのです。最近口に中のガンやのどから食道にかけてのガン の病名をニュースで度々耳にします。こんな頻度で目にすることは311以前にはありませんでした。 私にはプルトニウムなどのセシウム以外の放射性物質を、 ほとんど検査していない現状では当然と思いますが、 自分の身にも火の粉がふりかかっているのに、 大気中と海中に汚染物質を垂れ流し続けている現状を早急に修正すると同時に、 食品や土壌や大気などの検査品目や検査方法を増やす気がまったくみられないのは 不思議なことです。)

いったいなぜこういうことになっているかというと 推進派の安全だという報道ばかりが目につくように 報道されているからのように思われます。

そもそも推進派の方々がどのように 多数の100mSv以下でも影響あるとしている論文を否定しているのかが不思議でした。 それらの論文に対する具体的な反論を目にしたことがなかったためです。 (せめて推進派の方は、 武田教授のお母さんのための原発資料探訪(4) 1年1ミリと「正当化の原理」 [http://takedanet.com/2014/01/post_3f5a.html] のような定量的な主張をしていただきたいものです。 そうすれば、被害レベルの設定の妥当性や被害想定の妥当性など 主要な論点が浮かびあがり建設的な議論ができるのです。)

それが、この雑誌の 「100mSv以下の発がんに関する誤読集」 を読んで納得しました。 どうも官僚の方が自分に都合よく要約して訳しているようです。 これは以前ご紹介したBSE問題に関するプリオン報告書でも 感じたことです。 ご紹介した次の報告書ではでは、ご紹介した報告書で問題となっていた 数々の項目が削除されて、イギリスに端を発したBSEの流行は現時点で 95%の確率で抑え込んでいますと主張するだけのものになっていました。 前にも述べましたが、そもそも一年で日本だけで数千万頭が出荷されるのに そのような荒い判定基準はありえないことです。 そのうえあれだけ私が問題とした突発性のBSEや肉骨粉以外のルートによる再流行を どう抑えられるのかなどについてなにも答えていないものとなっていました。 それにもかかわらず、それでBSEの全頭検査の廃止が認められて いまや市販されているものでBSE検査されたものはほとんどなくなりました。 その病原体である特殊なプリオンは突発的にに発生することもあるうえに 自然界ではなかなか減らないので 本来は世界各国が検査して焼却なければ、BSEの蔓延は新型インフルエンザとどうように とまらないと思われます。 しかし、そのプリオン報告書の結論だけがひとりあるきして 世界中の国からつぎつぎとBSE検査していない肉の輸入を許可していて、 どんどん再流行の危険を増しています。 こうなったら、我々が肉を食べるのをやめて、残飯から野生動物でBSEが蔓延するのを 防ぐしかありません。私も肉が好きなだけに残念です。 (ただ、人口問題の解決にも貢献できますから、そんなに悪いことでもありません。 もっとも、不思議と肉をたべなくなって私個人は調子もよくなってきました。) 日本でももっとベジタリアンの運動を広める必要がでてきてしまっています。 (なぜ畜産業者は自主的に検査して品質をアピールしないのでしょうか 人口問題を解決するために業界全体としてフェードアウトしようとしているのでしょうか。) それもこれも、官僚の方がそのときの自分たちにとって好都合となるように結論だけを要約して、 細かい前提条件や結論を忘れさったかのように行動していることにあります。

そして、そういう問題を大きくしているのは、 マスコミや第三者の方々がほとんどその誤謬を正そうとしないことです。

たとえば、この雑誌の 「3.11以後の科学リテラシー no.14」 は必読です。

きわめて簡単な統計上の操作と文言の工夫で 土壌汚染と米の汚染度に相関がないとしてしまっています。 この結論を普通の人が読んだら高い汚染のところでも 出荷してよいと思ってしまっています。 (実際そのように政策が動いているようです。) しかし実際には記事にあるように 相関はありますから、汚染度が高いところほど 念入りに検査しなければならないのです。 (汚染が本当になければ 汚染はみられなかったというように表記されるはずなのです。)

問題はこの記事中で指摘しているようなことは 基礎的な統計の技法しかつかっていないので、 中学入試を受ける優秀な小学生でも 理解できる問題だということです。 つまり、共通一次や公務員試験を通った 官僚の方や研究者の方やマスコミの方がわからないはずが ないということです。 ところが、報道機関やほかの省庁や研究所が その誤謬を指摘したという話も聞きません。 おそらく批判するととばっちりをうけるとして 見ないふりをしているのでしょう。 (これだけでも原発のような 科学的知識の積み上げではじめて安全性を確保できる危険な装置を 扱う資格が日本人にはないことがわかります。)

ですから、そのようなミスリードをする部署はもちろんのこと 誤りを傍観している他の部署も厳しく罰する法律をつくるべきです。 お役所にとって予算が命ですから、予算を減額すればよいのではないでしょうか。 そして、その減った予算を問題点を指摘した部門にまわせるようにしたら、 争って誤りを指摘しあって、誤った方に国民がミスリードされる確率が減ることでしょう。

そしてさらに驚いたのが 都知事選の時期の報道です。 ほとんど政策論争がありませんでした。 おかげで上記のような問題点や論点は ほとんどの都民に知られることなく 選挙が終わってしまいました。 投票率が低いのも当たり前です。 報道によるとNHKは原発関連の報道を 選挙期間中にするなと命令したそうです。 まったく逆ではないでしょうか。 消費税が論点の選挙では 消費税の論点について詳しく説明することで 国民はどちらに投票するかを決めることができるのです。 原発問題も同様です。 報道しなかったのですから、十分原発問題について知ることなく投票しているのですから あのような結果になったのは当然です。 (もっとも民放も同じようなものでした。唯一報道ステーションが インターネットに対抗して討論会をしたぐらいでしょうか。 それでも時間が短くてほとんど論争になっていませんでした。 民放の場合はスポンサーが圧力をかけているのでしょうか。 法律で報道番組をかならず何割か流すこととして、 他の時間の広告料を割増して、 その時間はスポンサーをつけないで放送するように義務づけるべきです。 民主主義国家にとって報道はマスコミの重要な任務なのですから、 法律で公平性と正確性を担保すべきです。 そしてやはり独立した放送委員会をつくって 知っているのに報道をしないという報道をおさえる行為は 刑事罰として罰するようにすべきでしょう。 なにしろ公共資源である電波を占有しているのですから。) 選挙に影響がでるからと報道しないのは 選挙制度の否定です。間違った判断がくだされないように せめてこの雑誌レベルの論点は示してむしろ詳しく報道すべきです。 そうすることで第三者である国民に実態がみえてきます。 (候補者がでれないのであればその賛同者でもよいですし、 ある論点について賛成か反対かを議論するだけでも十分なのです。 賛同者であればその陣営のデータ処理能力の高さを知ることができますし、 本人の場合は候補者のリーダーとしての適正などもみえてきます。)

戦時中の大本営発表は負け戦を勝ち戦とミスリードするものでしたが 現在の大本営発表は、全国民が対放射線の戦いの最前線にいるようなものなのに 戦いそのものをないことにしてしまうというさらに恐ろしいものになっています。

民主主義では国民が王様の地位にあって国の方針をきめるわけですが、 王様に正しい情報をつたえなかったらどういうことが起きるかは 歴史的にあきらかです。(十八史略でも読んでみてください。) マスコミは日本を非民主国にしようとしているのでしょうか 恐ろしいことです。(もっともこれは世界的なことです。 親会社が買収されたCNNは以前のような元気はありませんし、 調査報道をしていた米国の新聞は総崩れになっています。 英国のBBCも報道とはまったく関係のないスキャンダルがおきて なぜか報道部門を含む番組経費が削られ、さらに調査報道と言う意味では 報道よりも大切なノンフィクション部門は人員削減まで行われました。 NHKはなぜか寡占批判をうけて BSのチャンネルがひとつ減ってそのあおりをうけて 質の高い報道をしていたBSの報道番組が減ってスポーツばかりとなっています。 世界的に反民主主義の攻撃をどこかの国がしかけているのでしょうか。 何度も述べていますが民主主義体制は本来統治を受ける国民が統治者を 監視するという輪の構造となって長期間国を維持できる優れたものです。 この制度を面倒だからといってやめたら あっというまに十八史略の時代にもどってしまいます。原発や原爆がある 現代にそんなことになったら人類滅亡です。)

では、また来月に。

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