今月の本   1308号 天明の密偵 中津文彦 著

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)


今回は田沼時代前後の文化人の一生を描いた歴史小説です。 芭蕉のような文化人が隠密だったというのは、 最初聞いたときはどうなんだろうと思ったものですが、 こういう小説を読むとたしかに 自然だなあと思いました。 自然に各地にいけますし、 自分としては隠密としてというより 文化人としての活動をしたいという 願望もあるので作品もよいものがのこりやすいのでしょう。

この作品に感心したのは 浅間山噴火などでの混乱などが 市井目線で描かれていることです。 主人公が長期間足止めになるほどです。 日本が火山国家であることが よくわかります。 現在でもやはりおなじようになるでしょう。 普賢岳の噴火のときも 長期間なにもできませんでしたから。 関東大震災の前には上高地の焼岳が 噴火して大正池ができました。 最近桜島が噴火しましたが、 311や中国の大震災のわりに 火山の活動が小さいように思われます。 インドネシアや北朝鮮の火山の中には東アジアどころが 人類が滅亡しかねない火山があります。 いまのところ前兆はないそうですが、 前兆がみられてから噴火までの 時間的余裕はあまりありません。 東アジアに原発のような危険なものを つくることは自殺行為です。 (なのに東アジアにばかり原発開発計画があります。 人類を滅亡させたいのでしょうか。 311のときもそうですが 地学で過去におきたことがわかっていることがおこっても 想定外などということをいっていたら あっというまに人類は滅んでしまいます。 施政者や民主主義国では主権者が長期的視点を持って 行動しないと人類の未来はありません。)

一方で蝦夷問題が副テーマとなっていて そこもうまく描かれていて感心しました。 当時の蝦夷地がどのようになっていて なぜ幕府の直轄になって またもどったのかもよくわかりました。 そしてその中で下級官僚の方が命がけの探険を していたのに封印されてしまっていたことにも おどろきました。 日本の役所ではすぐに なかったことになってしまい 過去の経験がいかされていないことは、 昔も今も同じようです。 (結局公文書を保存して活用することが唯一の解決策です。 しかしまだ日本では役所の都合で廃棄させられてしまっています。 それでは都合の悪いものほど廃棄されてしまうことでしょう。 廃棄するものはすべて公文書館に送って 公文書観が判断してしかも廃棄する前には 一定期間公表するようにしないと 過去の過ちの検証などできませんから なんどでも過ちをおかしますし、 周囲や過去からの視線が歯止めにならないので 利己的な組織へとどんどん変貌してしまいます。 権力や利権がある組織ほどしっかり歯止めを かけないととんでもないことになります。 前にも紹介しましたが、なんどもできる皇帝になって きちんと自分を律しきれた方はほんのわずかです。 組織でも同じで急速に劣化していって存在目的と違うことを始めるものです。 そこで国の体制を長続きさせようと思ったら、 前にも述べましたが統治される一番下の国民が 一番上の権力者を選ぶという監視の環の構造を持つ 民主主義の形をとるのが一番なのです。 そういう目で昨今の米国NSCの騒ぎをみていると 報道をみているかぎりでは ほとんど制限がかけられなく自由に データを収集できていたようにみえます。 そしてそういう作業に従事できる人が 数十万人いたと報道されていました。 それでは各国や各企業などのスパイが 入って自分たちのためのデータを 取り放題だったのではないでしょうか。 すべての作業ログとその端末作業風景は記録して すくなくとも米国民は自由にみれるように公表すべきでしょう。 そしてなによりも内部告発者保護法の方が 諜報活動よりも優先されるという構造になっていないのが問題です。 おかげで上記のような問題点が長期間かくれてしまいました。 それだけゆるければ自分たちの都合による検索も 行われたのではないでしょうか。 いわゆる政争相手の弱点をなんでも探せというような 検索が行われても告発ができない構造となっています。 したがって、そのシステムにアクセスできるものが莫大な 権力をにぎることができます。 存在もさだかでないNSAですがおそらく予算削減がされたことは ないのではないでしょうか。 予算削減をしようとした議員や活動家のデータを調べて 弱点を調べるなどということをしてたら永久に減ることはありません。 ですから民主主義国家ではそんなことは絶対にゆるしてはならないのですが その歯止めがないように思われます。 公的通報が優先されていたらスノーデン氏も出国することもなかったでしょうし そもそもその前にそういう問題点は修正されていて 通報する必要もなかったことでしょう。 (日本でもNSCをつくるというはなしがありましたが、 歯止めがなさすぎます。 なにしろ米国では軍事費でさえ大きく削減することがあるのに 日本の役所の予算はほとんど変化していないのです。 (公共事業も減らしてきたようにみえていますが 補正予算でたいてい増えているので最近は一定です。) 国民や国会議員が管理できていないことは このことからもあきらかです。 その上にさらに米国でさえコントロールできていないようにみえる 強力な力を官僚機構に与えることになります。 もっと国会議員や国民の監視ができる形とすべきです。 まず上記のように、秘密保存法よりも公益通報法の方が優先できるように することです。 さらに、政治家に報告されるのは数段上になっています。 すくなくとも各担当大臣は自分の領域の日本版NSC全員のアクセスログや 監視カメラ映像に常にアクセスできるようにして 業務外の利用やデータをかくされることを抑止すべきでしょう。 そして、収集した情報は100年後でもいいですからすべて公開するということを 前提として後世の人々による抑止もかけておくべきです。 ) よく後世の歴史家に判断を仰ぐといういいかたを しますが、それには米国のようにすべての 資料を一定期間ののちに公開して 歴史家が判断できるようにしなければ なりません。 )

では、また来月に。

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