今月の本   1305号 十五万両の代償 佐藤雅美

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)




今回ご紹介する本は、 徳川将軍のうちもっとも子供が多かったことで有名な 家斉の物語です。

私自身は一般的な将軍のイメージにあうのはこの人だと 思っていました。普通の方は 将軍ならさぞ豪華で自由な生活ができるだろうと お思いでしょうが、 実権が他の人が持っていたり 自分の生活を楽しむどころで なかったりする人がほとんどなのです。 実際家斉自身も実権を持つまで苦労した様子が この小説から伺えます。 ただ、この本を読んで分かることは 家斉自身もそんなに自由に行動できていないということです。 この本には書いてないのですが父親が長生きなので 相当親の力も強かったことが想像できます。 (実際この父親のために表題の問題もおきますし 下記の問題も直接指揮しているとしか思われないのです。) さらに優秀な家老がつけられましたから 初期にはむしろ怒られような生活だったようです。

一方で、前々から私が不思議であった 現象についてもこの小説ではっきり取り上げられて いるのが新鮮でした。 実は徳川一族の系図を調べると しょっちゅう途切れているのですが この時代は特にすごいのです。 この小説から推測するに 家斉の父親が自分の一族を他家に入れることに 熱心であったことが原因のようです。 そのためあと一歩で徳川一族すべて 家斉かその父の家系という状況になります。 そのようすも丁寧に描かれていて関心しました。 唯一残った水戸家に自分の血筋を入れることに失敗し、 唯一残ったのがあの幕末の話に必ずでてくる有名な斉昭です。 相当怒ったのか、その後今度は逆に将軍家(慶喜)を含む半分以上の家に 水戸家の血筋を入れることに成功します。 (今の大河ドラマででてきている慶喜も容保も実は勤皇思想の 水戸家の血筋なのです。 ということは、鳥羽伏見でも天皇家と示し合わせてわざと負けて 維新を演出した可能性すらあるのではないでしょうか。 そして、慶喜のあと宗家となった田安家は数少ない家斉側の家系なので、 徳川一門でも両家の争いは認識していたことがうかがえます。) いったいどうやったらそんなオセロゲームみたいなことが できるのか不思議なのですが、 吉宗が将軍になったときも似たような不思議な現象が おきているのでなにかテクニックがあったのかもしれません。 いまさら証拠はないでしょうから、 優秀な伝奇小説家の方が うまく話をつくったら一橋(家斉の実家)対水戸家のおもしろい歴史小説が できるのではないでしょうか。 (この本によると家斉はお庭番を自在にあつかっていた形跡があるので その要素も加えるとさらにおもしろいものができることでしょう。 吉川英治級の作者であれば鳴門秘帖並の傑作がつくれるのではないでしょうか。)

ただ、この小説で気になったことは 若干登場人物が感情的に動きすぎているように 描写されているところでしょうか。 実績からみるともっと感情に流されずに滅私公務を行っているように感じています。 (私なんかがお役について感情に流されて仕事をしたら 自分の利益になることとうさをはらすこと以外の実績はなにも 残さなかったことでしょう。)

その点には注意すべきですが、 その分登場人物に感情移入しやすくなっています。 江戸時代の歴史の受験で暗記する項目には なぜか必ず三大改革なるものが入ってきて 受験生を悩ますものです。 歴史ずきの私が調べても、調べるほど なにがどのように改革されてどこまで成功したのか だんだんわからなくなるものなので そんなに無理に覚える必要があるとも思えないのですが、 その改革のうち2つがこの小説にでてきます。ので、この小説は それらの改革にかかわった人物を体感しながら この時代を味わえるよい教材のように思います。 そして、なぜ幕末がああなったについて いろいろなヒントがありますので、 現在の大河ドラマのような幕末ものを読んだり 観たりする前に読むことをおすすめします。 より幕末を理解できるようになるものと 思われます。

と、きれいに終わろうと思ったのですが、 まるで江戸時代のような法案がでてくるので いくつかの問題点を述べたいと思います。

江戸時代並というかほとんど 秦の始皇帝並の焚書でもしようと しているように見えます。

しかも、法律の基本である 過去に遡及して罪にとわないという大原則を まったく無視しています。

そもそも児童ポルノ問題は 児童の誘拐を防ごうということから始まりました。 それが、児童の権利を阻害しないということに広がって それをまともにうけて法律をつくると こんな危ない法律がでてくるようになってしまいました。 通信の秘密は、結社の自由と同時に 民主主義にとってもっとも重要な概念で これがないと政権交代などほとんど不可能となります。 にもかかわらず、ウイルスの発見やこういったポルノを みつけるための検索がみとめられてしまっている国が あまりに多くなってしまいました。 日本でもそれを理由に開封される場合があるのです。 国家機関は関係ないにしてもしくみ的には インターネットや情報処理機器のいたるところに ウイルス検索をする機械がついています。 その機械を使っている企業がちゃんとその機械が正常に動いているか 常に確認しないと、情報を簡単に盗むことは可能な状況です。 実際中国はそういう機械をつかって 危険な文字を含む情報へアクセスを阻止しています。 現状は権力者がやろうとすれば どうでもできるところまできているので、 法律できちんと権力者に縛りをかけなければ ならないのですが、むしろ手段を与えようとしている 法案がつぎつぎとでてきています。 児童の権利も重要ですが それを国家機関が自由にできてしまう世界に することは、実質的に民主国家が地球上からなくなること を意味します。もっと情報を個人が保持できる権利を 大事にすべきです。 (と書いてまもなく本当に各国が上記のような情報収集活動を やってしまていることが発覚しました。 結局これらの動きは非民主主義国による 民主主義国に対する攻撃の一種なのでしょう。 こういう攻撃の特徴は 法体系のバランスに配慮することなく ひとつの問題だけをあげて とんでもない法案を通してしまうことにあります。 そういう意味では米国はインテリジェントの世界で 負けつづけているように思われます。 911以後テロに対しては なんでもありの状況になってしまって 十分な証拠もなく他国に攻め込んだり オバマさんも問題とした収容所問題 などが引き起こされました。 おかげでチェチェン問題やチベット問題についても テロだからということで 国際社会が咎めることがしにくくなりました。 おかげで本当の意味の民主化は ほとんどおきていません。 もしあくまでも法体系をまもりながら 罪を追求していたら、各国の虐げられている 人たちに理想の国として米国が君臨できて 自由で民主主義が機能する国々が増えていったと思います。 まさに非民主国家による攻撃が成功してしまっています。 そして、今回の米国機関によるデータ収集問題はさらに民主主義の大きな敗北で 非民主主義国による情報統制を咎めることが難しくなってしまいました。 その上、さらに米国の主要産業に対して致命的な 攻撃となっています。 オバマ氏はおそらく情報収集機関からの説明をうけて その機関をまもろうとして発言をしたと思いますが、 結果として自国の成長産業にとんでもない攻撃を与えたのも同じです。 情報を扱う企業にとってその情報保持の信頼性はもっとも大事なところです。 カナダの携帯会社が途上国政府の要請で 現地政府が通信内容にアクセスできるようにしたところ 業績は急降下してしまったのは記憶に新しいところです。 米国を代表する成長企業であるgoogle,aoole,twitter,facebook が同じようになっても不思議はありません。 なにしろ今までは中国の企業のサーバーを使うと 内容がつつぬけになりそうということで 米国企業のサービスを利用していた 企業や個人がどうせつつぬけなら 安い方にするかと顧客が流出しかねません。 こういう攻撃の特徴もテロだからというたった一つの危険をあおることで なんでもできる技術力や法律のバランスを考慮しない 法律が推されることです。この法律が認められたときの議論であった 令状をとる時間がないというのは、このIT時代においてありえません。 あきらかにこれは第三者が判断にはいらないようにすることが目的なのでしょう。 実際米国の現状ではこういう場合の裁判官には普通の裁判官ではなく 特別な裁判官があたっているそうです。 令状を発行するという意味は第三者が冷静に判断するというところに あるのでそういう体制では仲間意識がはたらく可能性があって危険です。 オバマ氏は与野党の監視下にあるから大丈夫と説明していましたが、 形式的な与野党では意味がありません。 すなわち、たとえば今回問題となった情報機関の予算を減らそうとしたとき その議員の弱みをさがす誘惑にその情報機関が耐えられるのか ということです。以前ご紹介したFBI長官の伝記によれば 米国の主要人物の弱みを書いたファイルがあってだれも 逆らえなかったそうです。そういうことは このような情報機関にはは簡単にできてしまうのです。 (今回は政府とIT企業と告発者の言い分が微妙にずれていて 本当のところがどこらへんかわからないのですが、 実際今回の告発者の最初の会見では 大統領を含めた個人のファイルにどんどんデータが収集されていて 自由にみれたというような言い方をしていました。) 一度そうなったら攻撃者にとってはあとはしあげでその組織を支配してしまえば 米国全体ひいては世界を支配できてしまうのです。 おそらくそういうシナリオで攻撃しているのでしょう。 ですから、911のあと米国の情報機関が情報も 組織上もひとつにまとめられたときも大変な危機感をもっていました。 ウィクリークスのときも今回も情報機関の情報共有があるので より広範囲の情報が漏れてしまっています。 漏らした当人の罪が米国でさかんに議論されているようですが、 そもそもこのような構造にした人物の方の罪の方がよっぽど大きいです。 おそらく同じようなことをして米国に害意のある国は情報をとっていると 思ったほうがいいでしょう。なにしろ二人ともそれほど中枢にいたわけではないのです。 そういう立場の人が結局ああいうことが可能ということは 情報をとっている機関はなんの監視もうけていないということなのでしょう。 ですから米国はあんなにいくつも情報機関があるのですから 互いに監視させて、大統領や議会や米国に逆らえないようにする しくみが必要でしょう。 そうしておけば米国がいきなりのっとられるということは なくなるはずです。当然その分テロ犯をとりのがす可能性は でてくるでしょうが、それよりいきなり本丸をとられる危険を 避けるべきでしょう。 プライバシーも同様で 大統領が100%の安全と100%のプライバシーは両立しないというような 意味のことをいっていましたが、 どうも文脈からするとだからプライバシーより安全が優先されるというような 意味のようですが、上記のようにむしろ 安全よりもプライバシーの方が民主国家では優先されます。 外形的に選挙しているのが民主国家なら 北朝鮮も民主国家になってしまうのです。 国民が自由に考えて行動できないと 民主国家とはいえないのです。 プライバシーはそれを保障するものであるので、 たとえ安全が少々損なわれても守らなければならないものなのです。 (しかもそれで本当に安全が阻害されるかも疑問です。 911のようなテロはコックピットの扉があかない 構造にしたという物理的な対処で対処できていますし、 そもそも911のときやビンラディン探索作戦の報道をみている限りは 傍受は役にたっているようには思われません。 そういう人たちはそれこそ傍受されることを前提にして動いているように みえます。ですから、むしろ一般の人の情報ばかりがあつまるシステムに なっているようにみえます。) テロなどの理不尽なことに関して ギリシャローマ時代から築き上げた人類の至宝である法律で対処するという 文明人としての対応をしないと ローマ帝国のようにあっというまに 原始時代に逆戻りしてしまいます。 そして、現在、ローマ帝国末期のような 危険な状況にまで文明国側が追い込まれて しまっているように思われます。 民主主義国家の国民ひとりひとりが 心して対処しないととりかえしのつかないことになるでしょう。) (ちなみに上記のことを書いたのは 歴史を調べるにつれて 人間は欲望にはよほどのことがないと勝てないという法則が あると認識するようになったので、 そういうことをする欲望に耐えられない組織や個人がでてくるだろうと いうことで書きました。そして、今そういう意味で心配なのは オバマ大統領がおそらくブリーフィングをうけて 発言しているのだと思いますが 国外しか調べていないという発言です。 報道によると英国連邦のいくつかの国と情報連携しているようなので もし他の国が米国を調べて米国がそれらの国を調べると、 論理的には合法的にすべての国のデータが集まってしまいます。 そうゆう誘惑にはまだまけないでいてほしいものですが、 念のため調べるべきでしょう。 とにかく、こういう危険を避けるためにも なるべくはやくオバマ大統領は。 イラクもアフガンも終結にむけて動いているので こういう諜報作戦もなくしていくときちんと明言して 米国内のIT産業や米国の自由のとりでとしての地位を 守るべきではないでしょうか。 そのほうが他国のそのような動きを見つけ出しやすくなりますから けっして米国の安全レベルは下がらないことでしょう。)

(しかも児童ポルノ規制法案の本来の目的がはたせるかも疑問です。 昔は児童が裸の映像は普通に ニュースでながれていました。 戦争写真で有名なものもいくつもあります。 そういう状況なら児童ポルノに興味をもつ人は よっぽど限られた人のはずなのですが、 それをいっさいみれないようにするということは 逆にみたいという欲望をかきたててしまい 児童ポルノに興味を持つ人を量産してしまい 逆効果としか思えません。 実際スエーデンなどでポルノの自由化が終わると 性犯罪は逆に増えているのです。

さらに問題なのは、名前が児童なので 児童のものだけが対象かというと 実際には高校生以下なので 児童青年ポルノ規制法案なのです。 ですから宮沢さんの写真集なども問題となります。 芸能人でみていると小学6年でさえ、20以上とみえる子さえいるのに どうやって判断するのでしょうか。 (逆に最近のアンチエイジング技術とお化粧技術の恩恵で 70代80代のはずの人がシワ一つない10代20代の姿でTVにでてくるのも おどろきですが。) ほとんどポルノ禁止法案となっています。 (まるでこの本にあるような江戸時代並の規制です。 そのうち絵も対象になるという報道なので その時代を生き抜いてきた貴重な浮世絵の文化遺産まで 現代で途絶えるということになっても不思議はありません。 (なにしろ当時の嫁入り年齢は18才以下が普通なのです。) ついでにいえば裸があたりまえの天使がでてくる 商標をつかっている会社は変更しなければならないでしょうし ギリシャローマ時代の彫刻や神話を描いた西洋絵画なども 破棄しなければならないことになります。 質を問わずに外形的に裸を禁止し単純保持を禁止するということは ナチスどころではない範囲の文化破壊が可能な 乱暴なものだということを認識すべきです。 当然対象者もめちゃめちゃ多くなります。 昔の美術の教科書をとっておいてもだめでしょう。 )

性犯罪が増えても 男子をもんもんとさせて少子化を なくそうという裏テーマがあるように みえますが、上記のような大問題点があるのですから そういうことは国民的論議をしてから きめるべきでしょう。 )

では、また来月に。

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