今月の本   0907号 太閤の復活祭 中見利男 著






今回は、関ヶ原のころの伝奇小説です。

ただ、伝奇小説といってしまうには大変惜しい作品です。 なぜなら、暗号が大きな要素なのですが、 その素材はそのまま秀吉のものをつかっているので、 ある意味ドキュメントといってもいい部分が含まれて います。ただ、どこまでが真実かは書いた本人に しかわからないわけで、フィクションとして発表 されたのも正解でしょう。

この著者は、この著者の用語でいうところの 暗号師としての才能が抜群で、何十もの解を いくつも提出していまして、それだけでおどろきです。 すべてが、秀吉が考えたことかはわかりませんが、 その幾つかは本当に本人が辞世の句に入れ込んだのだと思います。 国語の授業では、俳句や短歌は文字数が少ないので 意味を二重にもたせるということ(懸詞)までは教えるのですが、 平安歌人達はそれだけでは満足せず、さらにそれを 進めてどうも暗号やパズルといっていいような世界に まで歌の世界を広げていたようです。有名なところでは 戦争を止めたといわれる古今伝授があります。 秀吉は近衛家の養子となりましたし、貴族や皇族と 親しく接していましたから、そういう知識を得たとしても 不思議はありません。もし、そうならわざと漢字をしら ないふりして手紙を書いた可能性があります。 いちど秀吉の他の手紙についても調べると いろいろな暗号がでてきて裏面史がわかるのではないでしょうか。

もちろん、ひらがなが二、三十文字も使われるのですから 数学的にいかなる文章も可能だという、聖書の暗号で言われた ような反論は可能なのですが、聖書と違い文字が少ない分 なかなか大変です。みなさんも挑戦してみてください。

最近の秀吉の描写は権力者の妄執や老醜の描写が多いのですが、 古今東西でも有数の天才であることは間違いありません。 もう少し天才面にも光をあててほしいものです。 現在の大河のような秀吉の態度を 人身掌握術に長けた秀吉がとるわけがありません。 あの、信長の心すら手玉にとっていますし、 数々の武将を単身で説得しています。 大抵の歴史上の人物は心に鎧をつけているので、 心情に直接ふれることはできないのですが、 秀吉はいろいろな文書で心情に触れることが できます。なにしろ、暗号がなくてもこの辞世の句は 実感が伝わってきて、私が辞世の句の中ではもっとも 気に入ったものになっています。 他の手紙も、秀吉のは心情が率直に伝わるもの になっていて、読んでいるだけでファンになります。 こういう人は歴史上あまりいません。他には、劉備の死に際の 孔明に対する言葉くらいでしょうか。 後世の人間ですらこうなのですから、当時の人間がどれだけ 魅力を感じたかは想像を絶します。実際、人質としてとった 養子のほとんどに好かれていて、それらの多くの人が 豊臣家を守ろうとしています。またそのような 人心掌握術だけでなく、発想力や実行力も豊かであり、 講談のなかでしかありえないような水攻めを何度も 成功させています。一夜城をつくれるマネージメント力と 技術力、そしてそれを小田原攻めのときのように 戦略的に一番効果的に使い、敵も味方も被害を ほとんど出さずに戦国一の名城を陥落させる発想力 にいたっては、実在の人物か疑いたくなるほどです。

これだけの、天才でしかも遊び心のある秀吉ですから、 なにか辞世の句にしかけをしたとしても不思議は ありません。病状はガンに近いようで 食事ができないというようなもののようなので、 考える時間はたっぷりとあったことでしょう。

ちなみに、関ヶ原前後に詳しくない方は、 まず、司馬さんの関ヶ原あたりを読んでから 読むとよりおもしろいと思います。

また、この著者の解読によれば、 秀吉はある人物に毒殺されたと考えていたということのようですが、 私は、より大きな枠の中でみると、他にも容疑者はいるように 思います。なにしろ、蜂須賀小六から始まって、 加糖清正まで、秀吉の人格を破壊する鶴松の死や本人の死 を含めて、秀吉方の人物が天下統一前後から 滅亡前まで次々と死んでいます。 ちょっと不自然なのではないかと思っています。 (小六の死によってスパイ網に不備が生じたのかもしれません。) 犯人が誰なのかを示す証拠はないのですが、 普通に考えれば、一番利益を得る家康という ことになります。もしそうなら、 東照宮の額のように後世には封印して、技術は 伝えなかったようです。なにしろ、その後、 徳川に敵対するものの不審な死はあまりみうけられません。 むしろ、徳川家宗家自身に逆に怪しい事件が相次ぐようになります。 はたして、真相はどうなのでしょうか?

では、また来月に。



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