G家日誌

某月某日
M…卿より来信。前後して荷一つ届けり。
西洋の食卓にて供されるバタと言ふ油脂であると
文にはみへり。
然しながら当家には西洋食の習慣なし。如何なる
了見にて送りしものか戸惑いを覚へる。
共につらつらと眺め居りし執事曰く、「膏薬の類
として送りしものか」と。
如何なる膏薬かとの吾が問いに返りし答えはただ
困惑の苦笑のみなり。
立ち上りし薫りにふと思いつき再び耳元にて問いを
発すれば赤き耳朶と共に答え返れり。
それならば当家に送りし事も合点が行く。
新しく雇い入れたる給仕達に夜の行儀を教えねば
ならぬ頃合である故に。

某月某日
先ず年長の給仕を躾けんとてSを書斎に呼べり。
春に当家に来たばかりの頃は無粋な丸坊主なりしが、
この頃は涼やかに髪も伸び、
外見だけを取らばひとかどの若者と見えり。
Sを先ず呼びしは年長であるだけが理由に非ず。
当家に来る前に心得を身に付けしが故也
◎
Sは目配せ一つで下穿き一枚の身となれり。
顔色は変らねど乳輪はやや膨らむと見えたり。
臍にバタを塗りこめるとやや眉をひそめしが
不快ではない様子。やがてバタの香り身より
立つ頃には眼潤みたる。
Sが手で臍から下へバタを塗りこめさせ、ただ
吾はじっと見れり。
若茎から雫垂れたるもなお見つめ居り、バタを
菊門に塗るよう命ず。
Sはバタを塗り込め始めた所で若茎を弾けさせ
たり。
然る後其の儘Sを寝かせ、Sの体臭とバタの薫りの
混ざりしものを堪能す。
俗にバタ臭いと言う卑語あり。それはこの秘め事の
薫りを知らざる故言われる事か。

某月某日
Sの乱れに心騒ぐものあり。我が身を持って享受せん
とてSに命じ、Sの掌で我が身一面にバタを塗らせる。
バタの器を持つ役割はSの年下の朋輩たるLに命ず。
S・L両名共に六尺を締めさせて事に当たらせたり。
一頻りバタを塗らせし後両名の舌で舐め取らせたり。
バタは滋養に良いと聞き及ぶ。人の身を介しても
その滋養は届くであろうか。
両名の六尺、溶けしバタと若茎の蜜で濡れ透けて
観へる。その絶景を見つつ我が身も蜜を滴らせたり。
身の外でこうである。身の内に塗り込めたれば
如何なる効用を齎すであろうか。
ふと閃きし思いつきあり。後程執事に命じ置く事と
する。

12月24日
バタから連想したのが聖祖祝日の前夜祭とは我ながら
短絡せしと思へど、些かの興を覚えたるも又事実なり。
R師がその昔購いし或る商家の記録によれば年稚き
奉公人を閨の遊びに供せし際その身を味わう手段と
して布団程のカステラにて其の身を挟み、隙間を硬く
泡立てし卵白で埋めたとあり。興そそられる光景
なれども其れでは肌の美しさを愛でる事出来ず。
年稚き者の柔肌を愛でてこその閨ではあるまいか。
上の飾りは余り要らぬ。バタを塗りこめるだけで
充分かと思へり。
なれどそれでは祝いの一皿としては味気無きもの。
バタをクリームに仕立て肌の飾りとすべきが良しか。
これならばバタの薫りと肌の薫りを愛でる事も出来
よう。
◎
S及びL、先日雇い入れたるP、Zを呼び寄せ、バタを
クリームに仕立てさせたり。
裏庭に一抱え程ある大理石の丸鉢を据え付け、バタが
完全に溶けぬ様に気遣いつつ只管に掻き混ぜ置く様に
命ず。
S、L両名はこの趣向の求める所を熟知し、衣服を極々
軽きものにして事に臨めり。P、Z両名は最初は着込みて
臨みしが、作業の途中より熱さに耐えかね徐々に
肌蹴たり。S、Lは彼等を上手く導きて一枚一枚と
服を剥ぎ取り、仕舞いには下穿きのみの姿に為したり。
P、Zの両名漁師町の育ちにて肌の色些か黒し。汗にて
透けいたる下穿きの下の肌も色は変らぬと見える。
真に絶景なり。
掻き混ぜ方が終わり料理人にバタの調整を命ず。
その間給仕達には湯浴みさせたり。S、L両名には
湯浴みの間の手筈を予め耳打ちせり。
◎
湯浴みから戻りし給仕達の肌上気せり。殊にP、Z
両名は耳朶まで赤くし、眼夢見たる如きなり。S及び
Lの手解き故にか。
眼差しにて促せば給仕達全てを脱ぎ捨てバタを掌にて
掬い取り、互いの体に塗りこめたり。立ち込めたる
バタの薫り、その中に徐々に混じり行く年稚き性の匂い。
祝いの一皿としては佳品であるかと。
クリームに仕立てられたるバタは窄まりを埋め、
飾りとなる。後腔菊門から微かに薫るものもあるが
それもまた一興か。晩餐の後に供する頃には程好く
馴染む事であろう。
まもなく客人の来る時刻なれば一旦筆を擱く。
次に筆を執るのは聖祖祝日の翌朝であろう。

(以下頁欠落)



           06.11.11脱稿/2006.12.1UP  
             葡萄瓜XQO
 
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